経口避妊薬一覧と世代別特徴
経口避妊薬第一世代の特徴と処方適応
第一世代経口避妊薬は、ノルエチンドロンを黄体ホルモン成分とする製剤群です。現在日本で処方可能な製剤には以下があります。
自費診療対象製剤:
- シンフェーズT28錠(三相性製剤)
保険適応製剤:
- ルナベルLD/ULD
- フリウェルLD/ULD(ルナベルのジェネリック医薬品)
第一世代ピルの最大の特徴は、出血量減少効果の高さです。月経困難症のコントロールに優れ、子宮内膜症の治療効果も高いことから、これらの疾患を合併する患者には第一選択となることが多いです。
一相性のオーソMは月経前症候群(PMS)の軽減効果も期待できましたが、平成29年1月をもって製造・販売が中止されています。
注意点として、他の世代と比較して不正出血の頻度がやや高い傾向があります。初回処方時には3シート程度の試用期間を設け、不正出血の程度を評価することが重要です。
経口避妊薬第二世代の効果と安定性
第二世代経口避妊薬は、レボノルゲストレルを黄体ホルモン成分とする製剤群で、日本で最も処方頻度の高いカテゴリーです。
主要製剤一覧:
- トリキュラー21/28錠(三相性)
- アンジュ21/28錠(三相性)
- ラベルフィーユ21/28錠(三相性、トリキュラーのジェネリック)
第二世代ピルの最大の利点は、不正出血の起こりにくさと安定した月経周期の確立です。三相性製剤として設計されており、自然な月経周期に近いホルモン変動パターンを再現しています。
避妊効果は99%以上と高く、初回処方時の副作用も比較的少ないため、経口避妊薬の導入には適しています。特に、規則正しい月経周期を希望する患者や、不正出血を避けたい患者には第一選択となります。
三相性製剤の服用順序は厳密に守る必要があり、患者への服薬指導時には色分けされた錠剤の順序について詳しく説明することが重要です。
経口避妊薬第三世代の男性ホルモン作用
第三世代経口避妊薬は、デソゲストレルを黄体ホルモン成分とする一相性製剤です。
主要製剤:
- マーベロン21/28錠
- ファボワール21/28錠(マーベロンのジェネリック医薬品)
第三世代ピルの最大の特徴は、男性ホルモン(アンドロゲン)作用抑制効果の高さです。この特性により、以下の症状改善が期待できます。
- 大人にきびの治療効果
- 多毛症の改善
- 皮脂分泌の抑制
一相性製剤であるため服薬管理が簡便で、患者のコンプライアンス向上にも寄与します。特に、アンドロゲン関連症状(にきび、多毛)を合併する若年女性には積極的に検討すべき選択肢です。
ただし、長期投与時の注意点として、抑うつ症状や性欲低下を訴える患者がいることが報告されています。定期的な精神症状の評価と、必要に応じた製剤変更の検討が重要です。
経口避妊薬保険適応製剤の選択基準
保険適応経口避妊薬は、月経困難症および子宮内膜症の治療目的で処方可能です。
超低用量製剤(エチニルエストラジオール20μg):
- ルナベルULD/フリウェルULD(第一世代)
- ヤーズ(第四世代、ドロスピレノン含有)
低用量製剤(エチニルエストラジオール30μg):
- ルナベルLD/フリウェルLD(第一世代)
特殊製剤:
- ヤーズフレックス(連続服用可能な国内初のLEP製剤)
ヤーズは第四世代ピルとも呼ばれ、DRSP(ドロスピレノン)という新しいタイプの黄体ホルモンを含有しています。利尿作用を持ち、むくみにくいという特徴があり、体重増加を懸念する患者には有用です。
ヤーズフレックスは連続服用により休薬期間のホルモン関連症状(骨盤痛、頭痛、腹部膨満感、乳房痛など)の減少が期待でき、月経コントロールの自由度も高いという利点があります。
処方時は患者の主訴、合併症、副作用の既往を総合的に評価し、最適な製剤を選択することが重要です。
経口避妊薬処方時の独自評価システム
効果的な経口避妊薬処方には、従来の世代分類だけでなく、患者個別の総合評価システムが重要です。
症状別優先度マトリックス:
主訴/症状 | 第一世代 | 第二世代 | 第三世代 | 第四世代 |
---|---|---|---|---|
月経過多 | ★★★ | ★★ | ★ | ★★ |
不正出血回避 | ★ | ★★★ | ★★ | ★★ |
ニキビ治療 | ★ | ★ | ★★★ | ★★ |
むくみ回避 | ★ | ★ | ★ | ★★★ |
年齢・ライフステージ別推奨:
- 10代後半~20代前半:第二世代(安定性重視)
- 20代後半~30代:第三世代(美容効果も考慮)
- 月経困難症合併:第一世代保険適応製剤
- 多嚢胞性卵巣症候群:第四世代(抗アンドロゲン効果)
継続率向上のポイント:
初回処方時は必ず3シート程度の評価期間を設定し、副作用発現パターンを詳細に記録します。特に開始後2週間以内の軽微な副作用(悪心、頭痛、乳房緊満感)は多くが自然軽快するため、継続の重要性を十分説明することが継続率向上につながります。
また、製剤変更時は同世代内での変更よりも、異なる世代への変更の方が症状改善効果が高いことも臨床現場での重要な知見です。