頸管展退度の測り方と評価のポイント

頸管展退度の測り方と評価

📋 頸管展退度評価の3つのポイント
👆

内診による測定

子宮頸管の短縮度を触診で確認し、パーセンテージで評価します

📊

ビショップスコアでの採点

0~3点で評価し、分娩進行の予測に活用します

📏

超音波との併用

頸管長の測定により客観的な評価が可能になります

頸管展退度とは何か

頸管展退度は、子宮頸管が短縮した程度をパーセンテージで表した指標です。妊娠中の子宮頸管は通常約3cmの長さがありますが、分娩が近づくと頸管の熟化が進み、徐々に短くなっていきます。この変化を数値化したものが展退度であり、分娩進行を予測する重要な因子となっています。

参考)Bishopスコア(ビショップスコア)


展退度の評価は、内診時に子宮頸管がどれだけ短縮し薄くなっているかを測定します。子宮体部の筋層と頸管部の境界である内子宮口の位置変化を確認し、頸管の短縮率を算出します。妊娠末期には胎児副腎から分泌されるホルモンやプロスタグランジンの作用により、コラーゲン分解酵素が活性化して頸管組織が変化します。

参考)分娩期の子宮頚管の熟化


この生理的プロセスを正確に評価することで、分娩誘発の適応判断や自然分娩の可能性を予測できます。

参考)子宮頸管の熟化と子宮収縮の評価(参考)|プロウペス®腟用剤1…

頸管展退度の内診での測り方

頸管展退度の測定は、内診による触診で行われます。医療従事者は滅菌手袋を装着した指を腟内に挿入し、子宮頸部の状態を評価します。具体的には、頸管の長さがどの程度短縮しているかを触診で確認し、元の長さに対する短縮率をパーセンテージで表現します。

参考)ビショップスコアの計算方法と活用法|助産師・学生が押さえてお…


測定時の評価基準は以下の通りです。​

  • 0~30%:ほとんど短縮していない状態で0点
  • 40~50%:中等度の短縮で1点
  • 60~70%:かなり短縮が進んだ状態で2点
  • 80%以上:ほぼ完全に短縮した状態で3点

内診では、内子宮口の位置を確認しながら頸管の厚みを評価します。初産婦では内子宮口が早期に開大し展退が先行する傾向がありますが、経産婦では分娩直前まで展退が進みにくい特徴があります。測定者間の評価のばらつきを減らすため、後述する超音波での頸管長測定と照らし合わせることが推奨されています。

参考)ビショップスコア href=”https://nishijima-clinic.or.jp/blog/2025/08/11/%E3%83%93%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%83%E3%83%97%E3%82%B9%E3%82%B3%E3%82%A2/” target=”_blank”>https://nishijima-clinic.or.jp/blog/2025/08/11/%E3%83%93%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%83%E3%83%97%E3%82%B9%E3%82%B3%E3%82%A2/amp;#8211; にしじまクリニックブログ

頸管展退度のビショップスコアでの評価基準

ビショップスコアは、子宮頸管の成熟度を客観的に評価するための採点システムです。このスコアは頸管展退度、子宮口開大度、児頭下降度、頸管硬度、子宮口位置の5項目から構成され、各項目を0~3点で評価して合計13点満点で採点します。​
頸管展退度の評価基準は以下の表の通りです。​

展退度 点数
0~30% 0点
40~50% 1点
60~70% 2点
80%以上 3点

ビショップスコアの合計点によって頸管熟化の状態を判定します。合計9点以上は頸管が十分に熟化した状態とされ、分娩誘発の成功率も自然陣痛による分娩と同程度になります。一方、6点以下は頸管熟化不良と判断され、頸管熟化薬の使用や器械的頸管拡張の検討が必要になります。3点以下の場合は子宮収縮薬の使用は原則として避けるべきとされています。​

頸管展退度と頸管長の関連性

頸管展退度の評価精度を高めるために、超音波検査による頸管長測定との照合が有用です。内診による展退度評価は主観的な要素を含むため、測定者間でばらつきが生じることがあります。これを補う方法として、超音波で実測した頸管長を参考にすることで、より客観的な評価が可能になります。​
頸管長と展退度の対応関係の目安は以下の通りです。​

  • 頸管長2~4cm:展退度40~50%に相当
  • 頸管長が短いほど展退度は高くなる
  • 完全展退(80%以上)では頸管長は非常に短い

臨床現場では、内診所見と超音波所見を組み合わせることで、より正確な頸管成熟度の評価が実現します。特に分娩誘発を計画する際には、両方の評価を総合して判断することで、誘発の成功率を予測しやすくなります。超音波検査は非侵襲的で再現性が高いため、経時的な変化を追跡する際にも適しています。​
頸管熟化の促進には薬剤の使用や機械的方法がありますが、これらの適応判断にも正確な展退度評価が不可欠です。

参考)https://www.pmda.go.jp/RMP/www/670666/722f7db2-4dce-4243-9819-685b7fdda227/670666_24997A2H1020_01_003RMPm.pdf

頸管展退度測定時の注意点と臨床的意義

頸管展退度の測定には、いくつかの重要な注意点があります。まず、内診は医療行為であり、適切な感染予防対策のもとで実施する必要があります。前期破水や出血がある場合には、内診の頻度を最小限にとどめることが推奨されます。

参考)内診の実際


測定時に留意すべきポイントは以下の通りです。​

  • 初産婦と経産婦で展退の進行パターンが異なる
  • 測定者の経験により評価にばらつきが生じる可能性がある
  • 子宮収縮時と弛緩時で頸管の状態が変化する
  • 超音波所見と照合して評価の妥当性を確認する

頸管展退度の臨床的意義は、分娩進行の予測と管理方針の決定にあります。展退度が低い場合、分娩誘発の成功率が低下するため、頸管熟化促進の処置を先行させる必要があります。逆に展退度が高い場合、分娩が順調に進行する可能性が高いと判断できます。

参考)「ビショップスコア」10点以上で24時間以内に陣痛が発来する…


また、頸管熟化には妊娠後期の内分泌環境の変化やコラーゲン分解酵素の活性化が関与しており、これらの生理学的メカニズムの理解も重要です。妊娠35週頃から始まる頸管軟化は、Braxton-Hicks収縮の活発化と連動して進行します。早期の頸管展退は頸管無力症のリスクとなり流早産の原因になるため、妊娠中の適切な時期での展退進行が望まれます。

参考)http://www.marianna-u.ac.jp/dbps_data/_material_/st_marianna/20120514.pdf


分娩誘発や陣痛促進を行う際には、ビショップスコアを含めた総合的な評価が必須であり、頸管展退度はその中核をなす指標です。​
ビショップスコアの詳細な評価方法と臨床応用について解説している医療従事者向けの資料
子宮頸管熟化の評価方法と分娩管理における活用法についての専門的な情報