家族性ドルーゼン
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家族性ドルーゼンの遺伝とEFEMP1
家族性ドルーゼンは、臨床的には「Malattia leventinese(ML)/Doyne honeycomb retinal dystrophy(DHRD)」や「autosomal dominant drusen(優性遺伝性ドルーゼン)」として扱われる領域で、常染色体優性遺伝を背景に後極部へ多数のドルーゼンが生じる黄斑ジストロフィの一型として理解すると整理しやすいです。
原因遺伝子として最も重要なのがEFEMP1で、1999年に単一変異がMLとDHRDの両方に関与するとされ、現在も代表的病因として位置づけられています。
日本人家系の報告でもEFEMP1のp.R345W(c.1033C>T)が同定され、同一家系内でも「無症状で微細なドルーゼン中心の表現型」と「中心窩下脈絡膜新生血管(CNV)まで進行する表現型」が併存しうる、いわゆる表現型の多様性(variable expressivity)が示されています。
この“同じ変異でも重症度が揺れる”点は、医療者側が「軽症そうに見える患者を、フォロー不要と誤解しない」ための重要な臨床メッセージになります。
またKEGGでも本疾患(Doyne蜂巣状網膜ジストロフィー/家族性ドルーゼン)は、RPE下にドルーゼンが蓄積する常染色体優性疾患としてまとめられ、病因遺伝子にEFEMP1が挙げられています。
家族性ドルーゼンの網膜色素上皮とドルーゼン
病態の中心は「網膜色素上皮(RPE)とBruch膜周辺に関連した沈着物(ドルーゼン)」で、臨床的にも後極部に無数のドルーゼンとRPE変化(色素変化や萎縮など)が重なって見えるのが特徴です。
KEGGの説明でも、黄白色沈着物(ドルーゼン)がRPEの下に蓄積する疾患として整理され、MLでは放射状パターン、DHRDでは蜂巣状パターンなど表現型の幅がある一方、単一のEFEMP1変異が両者に関与する点が強調されています。
臨床経過としては、成人早期から所見が出現し、40〜50歳代に中心視力低下や暗点が問題化し得ること、進行期には地図状萎縮やCNVが視機能を規定し得ることが示されています。
重要なのは「ドルーゼンが多い=すぐ失明」ではなく、眼底所見の派手さに比して視力が保たれる時期があり、しかし一部でCNVが起きると急に視機能が落ち得る、という“ギャップ”を説明できることです。
したがって患者説明では、RPE変化の進行(萎縮・色素変化)とCNVの兆候(変視・急な視力低下)を分けて伝えると、理解と受診行動が安定しやすくなります。
家族性ドルーゼンのOCT
OCTは、家族性ドルーゼンの“構造の主戦場”であるRPE-Bruch膜複合体を非侵襲で追えるため、診断・重症度評価・フォローに直結します。
日本人家系報告では、OCTでRPE-Bruch膜複合体に不整な高反射性隆起が並ぶ所見(“saw-toothed pattern”)が、黄斑部ドルーゼンと対応して記載されています。
さらに同報告では、片眼で中心窩下CNVが生じたケースが示され、OCT上で嚢胞様黄斑浮腫やRPE帯の挙上など、滲出性変化を示唆する所見が視機能低下と関連していました。
このためフォローの実務では、(1)RPE隆起のパターン、(2)外網膜(特に中心窩周辺)の連続性、(3)網膜内/網膜下液の有無、の3点をルーチン化してチェックすると見落としを減らせます。
また視機能評価として、Humphrey視野やmfERGが長期予後の評価に役立ちうる点も報告されており、「視力が良いから進行していない」とは限らないことをチーム内で共有しておくと安全です。
家族性ドルーゼンの鑑別と加齢黄斑変性
家族性ドルーゼンは、眼底に多数のドルーゼンが見えるため加齢黄斑変性(AMD)と混同されやすく、特に“若年〜中年でドルーゼン優位”の症例では鑑別の意識が重要です。
家族性ドルーゼン側のヒントとしては、家族歴、成人早期からの所見、後極部に無数のドルーゼン(放射状/蜂巣状などのパターン)、そしてEFEMP1関連疾患としての位置づけが挙げられます。
一方AMD側では、ドルーゼンやRPE異常が前駆病変として重要であること、診断基準が整備されていることが示されており、年齢・片眼/両眼の経過・所見の分布といった臨床情報を丁寧に統合する必要があります。
鑑別の実際では「どちらか一方に決め打ち」よりも、まず“遺伝性黄斑ジストロフィの可能性があるAMD様病変”として扱い、家族歴聴取と画像・機能検査を組み合わせて診断精度を上げる方が、見逃しも過剰診断も減らせます。
医療従事者向けの注意点として、CNVはML/DHRDでは“典型所見ではないが起こり得る重篤合併症”とされ、頻度は高くない可能性が述べられているため、「起こりにくい=起こらない」ではない、という態度で経過を見ます。
家族性ドルーゼンの独自視点:家族歴と遺伝カウンセリング
家族性ドルーゼンは“眼底がそれっぽい”だけでは患者・家族の不安が増えやすく、医療者側が「家族歴をどこまで、どう聞くか」「遺伝の説明をどう言語化するか」で診療の質が大きく変わります。
日本人家系報告では、同じEFEMP1変異でも無症状の家族が存在しうることが示されており、これを踏まえると、家族に対して“発症=即重症”と短絡しない説明が必要になります。
一方で、重症化側のシナリオとしてCNVが起これば視力障害が急激に進み得るため、家族内で「変視・急な視力低下があれば早期受診」という行動指針を共有しておくことが、実務的な予防策になります。
遺伝の説明では、病名(家族性ドルーゼン/ML/DHRD)と、病因遺伝子(EFEMP1)と、起こり得る合併症(萎縮やCNV)を“3点セット”で短く提示し、詳細は患者の理解度に合わせて段階的に補うと誤解が減ります。
独自視点として強調したいのは、眼科単科で完結させず、必要に応じて遺伝医療(遺伝カウンセリング、検査前後の説明、家族への情報共有の支援)へ接続できる院内導線を整えることが、結果的に医療者の説明負担も患者の不確実性も下げる、という点です。
家族性ドルーゼン(Doyne蜂巣状網膜ジストロフィー/家族性ドルーゼン)の位置づけ、EFEMP1、遺伝形式の整理。
日本人家系でのEFEMP1 p.R345W、OCT所見(saw-toothed pattern)、CNV合併、視野・mfERGフォローの考え方。
AMDの分類・診断基準(ドルーゼン・RPE異常が前駆病変として重要)。