滑液どこで作られる?滑膜の役割と関節液の仕組み

滑液どこで作られる

この記事のポイント
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滑液の産生場所

滑液は関節包の内側にある滑膜という薄い膜の組織から分泌されます

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滑液の重要な役割

関節の潤滑作用と軟骨への栄養供給という2つの大きな機能があります

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産生と吸収のバランス

滑膜は滑液を作るだけでなく吸収も行い、常に一定量を保っています

滑液を産生する滑膜の構造と場所

滑液は関節包の内側に存在する滑膜という組織で作られています。関節包は関節全体を包む袋状の構造で、外側は線維膜、内側は滑膜という二層構造になっています。滑膜は厚さ約25μmの薄い膜で、線維芽細胞様の滑膜細胞とマクロファージが存在しています。

参考)滑液 – Wikipedia


滑膜には血管やリンパ管、神経が豊富に分布しており、滑液を作りやすい栄養条件が整っています。滑膜細胞は関節包に分布する血管やリンパ管から関節液の成分を濾過し、ムチン様成分であるヒアルロン酸を分泌することで滑液を産生します。正常な関節では、滑膜から分泌される滑液の量は1~3mL程度に保たれています。

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滑膜は関節運動を滑らかにするためにひだを形成しており、このひだ構造により関節の可動性が高まります。また、滑膜組織の特徴として毛細血管に富む滑膜絨毛の存在があり、これにより物質交換が活発に行われています。関節の運動によって滑膜中の血流が増加し、逆に関節の固定や不動により血管網の減少や血流の低下が起こります。

参考)滑膜 – Wikipedia

関節包と滑膜の関係

関節包は骨と骨の連結部を覆う線維性の組織で構成される膜です。この関節包の構造は、外側を覆う丈夫な線維膜と、内側を覆う滑膜の二層から成り立っています。線維膜は関節の動きを可能にするほど柔軟でありながら、関節全体を一つにまとめられるほどの強度を持っています。

参考)「関節液」は骨や軟骨を守る!働きのポイントは潤滑・分散・栄養…


滑膜は関節包の内側に張りめぐらされており、関節の内腔を満たす滑液を産生・吸収する役割を担っています。滑膜の内壁は線維芽細胞様の細胞で構成され、外側は線維膜で覆われています。この構造により、滑膜は血管から栄養を受け取りやすく、効率的に滑液を分泌できる環境が整っています。

参考)関節の障害(膝関節を中心に)


関節包は関節を密閉された空間として保つため、滑膜から分泌された滑液は関節内に留まり、関節軟骨や関節の動きを保護します。関節包の内部では、滑膜による滑液の分泌と吸収が常に行われており、この代謝バランスにより関節内は常に新しい滑液で満たされています。

参考)関節に溜まる水の正体をお伝えします。

滑液の成分と産生メカニズム

滑液は淡黄色透明の粘り気のある液体で、ヒアルロン酸と糖タンパク質を豊富に含んでいます。滑膜細胞は血管から血漿成分を濾過して取り込み、さらにヒアルロン酸などのムチン様成分を分泌することで滑液を作り出します。血漿中のタンパク質は関節運動などによる受動的拡散により毛細管から関節液中に移行します。

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika1913/83/11/83_11_1871/_pdf


滑膜には二種類の細胞群が存在しており、一つは滑液を作る細胞群、もう一つは老廃物処理を行う食細胞群です。この二つの細胞群の機能により、関節内は絶えず新しい滑液に入れ替わり、良好な潤滑状態が保たれています。滑膜には血管とリンパ管が豊富に分布しているため、滑液の産生に必要な栄養素や水分を効率的に供給できる仕組みになっています。​
滑液に含まれるヒアルロン酸は、関節の潤滑性を高めるだけでなく、衝撃吸収の役割も果たしています。ヒアルロン酸は突然の力に対して即時の弾性応答を提供し、運動方向の変化時に衝撃吸収体として作用します。また、滑液の粘性により、関節軟骨表面の摩擦係数は0.001~0.0057と極めて低く、ボールベアリングと同等の潤滑性を実現しています。

参考)関節のお話 その2 関節液の役割(潤滑と栄養) href=”https://www.wakitaseikeigeka.com/diagnosis/?p=543amp;rut=4a15d203b91cad287ec994d0cb181db8bc2c2bbf3e0e5f4144f002c4fd1db906″ target=”_blank”>https://www.wakitaseikeigeka.com/diagnosis/?p=543amp;rut=4a15d203b91cad287ec994d0cb181db8bc2c2bbf3e0e5f4144f002c4fd1db906amp;#8211…

滑液の産生量と吸収のバランス

健康な関節では、滑膜による滑液の産生と吸収のバランスが保たれており、関節内の滑液量は一定に維持されています。正常な膝関節では1~3mL程度の滑液が存在していますが、炎症などが起こると滑液の産生量が増え、吸収量を上回ることで関節内に水が溜まる現象が起こります。

参考)膝の水を抜くと癖になるってホント? -膝の水の正体は?-


滑膜は滑液を分泌する一方で、滑液を吸収する働きも持っています。関節腔内から滑膜への物質移行は、一部の低分子タンパクが滑膜細静脈から、その他の物質はリンパ管より排出されます。このように、滑膜は双方向の物質移動を調節することで、関節内環境を最適な状態に保っています。

参考)東温市医師会


炎症が起きると、この産生と吸収のバランスが崩れてしまいます。関節軟骨や半月板が損傷すると、削り取られた組織の破片が関節液中を漂い、滑膜を刺激して炎症を引き起こします。その結果、滑膜からの滑液産生量が増加し、20~30mLにまで増えることがあります。炎症が改善されれば、関節液の分泌と吸収のバランスが正常に戻り、溜まった水は自然になくなります。

参考)膝に水がたまったらどれぐらいで自然に治る? 【期間と対処法】…

滑液包における滑液産生の特徴

関節以外にも、筋肉や腱が動く部分には滑液包という組織が存在し、ここでも滑液が産生されています。滑液包は滑液を含んだ嚢状の組織で、筋肉や腱などの組織が滑走する際の摩擦を減少させる役割を持っています。滑液包の内壁も滑膜で覆われており、この滑膜が滑液を分泌します。​
滑液包の滑膜にも、血管、リンパ管、神経が豊富に分布しており、滑液を産生しやすい条件が整っています。滑液包は圧迫や衝撃から組織を守る役割もしており、自身が摩擦のクッションとなるだけでなく、滑液を周囲に浸潤させて摩擦を軽減させています。滑液包は関節周囲や腱がこすれる部分に多く存在しています。​
関節内の滑液と滑液包内の滑液は、呼び方は異なりますが、ほぼ同じ成分と性質を持っています。どちらもヒアルロン酸やタンパク質を含み、潤滑作用と栄養供給の機能を果たしています。滑液包の滑膜も、関節の滑膜と同様に、滑液の産生と吸収のバランスを調節する機能を持っています。​

滑液産生と関節軟骨の栄養供給

滑膜から産生される滑液は、関節軟骨への栄養供給という重要な役割を担っています。成人の関節軟骨には血管やリンパ管がほとんどなく、滑液から酸素や栄養素を補給しています。関節軟骨は血液による栄養供給を受けられないため、滑液が軟骨細胞に浸み込むことで栄養を得ています。​
滑液には、ヒアルロン酸やタンパク質など、関節軟骨の再生に必要な栄養成分が含まれています。これらの栄養成分が軟骨細胞に浸透するためには、関節の運動が必要とされています。関節を全く動かさずにいると、滑液が軟骨細胞に浸み込まなくなり、軟骨細胞は栄養不足となって減少していくと考えられています。​
わきた整形外科:関節液の役割について潤滑と栄養の詳しい解説
滑膜から分泌される滑液の量と質は、関節の健康状態を測る指標となります。滑膜が健康に機能していれば、適切な量と成分の滑液が産生され、軟骨への栄養供給が十分に行われます。しかし、加齢や関節の酷使により滑液中のヒアルロン酸が減少すると、関節の動きが悪くなり、軟骨が摩耗しやすくなります。このため、滑膜の健康を維持することが、関節の長期的な健康につながります。

参考)ヒアルロン酸とは?膝の軟骨に効果があるの?


関節運動により滑膜の血流が増加すると、滑液の産生も促進されます。適度な運動は滑膜の機能を維持し、質の良い滑液を産生するために重要です。滑膜と軟骨の関係は相互依存的であり、滑膜が健康な滑液を産生することで軟骨が保護され、軟骨が健康であることで滑膜への刺激も最小限に抑えられます。​