肩関節脱臼 整復 ゼロポジション
肩関節脱臼の整復でゼロポジションの適応
肩関節脱臼の多くは前方脱臼で、救急外来・当直帯でも遭遇頻度が高く、徒手整復の可否判断が初動の質を決めます。前方脱臼は受傷機転として「外転・外旋位の強制」が典型で、現場の問診だけでも疑いをかなり絞れます。
ゼロポジション挙上法は、牽引・挙上を中心に「筋緊張が抜けた条件を作って自然に戻す」発想で、侵襲性が低い方法として紹介されることがあります。
一方で、整復前に“骨折・神経血管障害を除外する”という原則は絶対で、特に上腕骨頚部骨折などを伴う症例は閉鎖整復の禁忌になり得るため、基本は画像での確認が前提です。
ここでいう「適応」は、単に前方脱臼かどうかではなく、(1)骨折を疑う所見が乏しい、(2)整復操作で合併損傷を増悪させにくい条件が揃う、(3)患者が体位保持できる、という“実務上の適応”を含みます。整復で転位が拡大し得る例が報告されている以上、痛みが強すぎる・腫脹が高度・高齢で骨粗鬆が疑わしい等では慎重さが必要です。
また、既に整復困難例で複数回の粗雑なトライが入っていると、筋スパズム増強や不安増大で、むしろゼロポジション系の「ゆっくり誘導」の良さが出にくい状況になります。整復は回数勝負にせず、最初の1回を丁寧に設計する方が結果的に安全です。
肩関節脱臼の整復でゼロポジション挙上法の手技
臨床現場で解説されるゼロポジション挙上法は、仰臥位で患者を落ち着かせ、患肢を遠位軸方向へ牽引しながら徐々に外転してゼロポジションへ誘導する、という流れで説明されます。
ゼロポジションが「約140°挙上」と表現されることもあり、イメージとしては“タクシーを呼ぶときに手を挙げる”ような位置づけで理解されます。
ただし、現場で再現性を上げる鍵は角度そのものではなく、「牽引の方向が軸に沿っているか」「患者の防御収縮を増やさないスピードか」「肩甲帯が一緒にすくんでいないか」という操作の質です。ゆっくり外転させる過程で患者が肩をすくめると、僧帽筋・三角筋が入りやすくなり、整復に不利な張力が乗ることがあります。
実務的なコツとしては、患者の呼吸に合わせて“吐くタイミングで数度だけ進める”と、恐怖心と筋緊張が下がりやすいです(手技というよりコミュニケーション技術です)。また、痛みが増える局面では一旦停止し、牽引方向の再調整と再脱力を待つ方が、強引に押し切るより成功率が上がります。
整復の瞬間はクリック感がある場合もありますが、必ずしも音や感触が明瞭とは限らないため、肩の輪郭・自動運動の変化・疼痛の軽減など複数の指標で総合判断します。整復確認と合併損傷確認のため、整復前後の神経学的所見の比較は最低限の安全策です。
肩関節脱臼の整復で痛みと鎮静
「整復はテクニック」という印象が強い一方で、実際は痛みコントロールの出来が整復成功率と合併損傷リスクに直結します。ゼロポジション挙上法の解説でも“整復のコツは痛みをとりリラックスさせること”が強調されています。
鎮静の要否は施設体制と症例で変わりますが、少なくとも「非鎮静でも可能な方法がある」ことと「鎮静なしで無理をしてよい」は別問題です。レビュー論文では複数の整復手技が整理され、患者の体位や筋緊張、術者の好みで手技が選択される一方、骨折合併(例:上腕骨頚部骨折)は閉鎖整復の禁忌になり得るため、画像での除外が重要と述べられています。
痛みが強いのに鎮静なしで強引な牽引を続けると、筋スパズムを増やし、整復困難化→操作回数増→組織損傷リスク増、という悪循環に入りがちです。むしろ「一旦止める」判断ができるかが医療安全の分岐点になります。
意外に見落とされがちなのは、患者の恐怖心そのものが筋緊張のドライバーになっている点です。声かけの言葉選び(「痛かったらすぐ止めます」など)や、体位の安定化(枕やタオルで頚部・体幹を安心させる)だけで、追加薬剤なしでも抵抗がスッと抜けることがあります。
肩関節脱臼の整復で合併損傷
肩関節脱臼では合併損傷の評価が必須で、特に整復前後に神経血管所見(腋窩神経領域の感覚、末梢循環など)を確認することが推奨されます。整復前評価が重要なのは、整復後に所見が悪化した場合に“整復操作によるものか、元からか”が判別できるからです。
また、外傷のエネルギーが強い症例では骨性損傷を伴う可能性があり、上腕骨頚部骨折の合併は閉鎖整復の禁忌となり得るため、放射線学的評価で除外する重要性が述べられています。
さらに、徒手整復が引き金となって骨折転位が拡大した症例報告もあり、「整復に成功した」という結果だけで安全とは言い切れません。
ここが臨床の難所で、整復を急ぐべき局面(皮膚の緊張が強い、循環が怪しい等)もありますが、だからこそ“短時間で必要事項を押さえた安全な整復計画”が必要になります。整復前画像が難しい状況でも、少なくとも骨折を疑う強い所見(著明な圧痛、異常可動性、広範な腫脹など)があれば、無理にゼロポジションへ持ち込まない判断が重要です。
肩関節脱臼の整復でゼロポジションと固定とリハビリ(独自視点)
検索上位では「整復法」自体に焦点が当たりやすい一方、臨床の満足度を分けるのは“整復後の設計”です。整復が成功しても、固定の方針と再脱臼予防の指導が曖昧だと、患者は「戻ったのにまた外れた」という負の体験をしやすくなります。
一般的に整復後は再脱臼予防のために一定期間の固定が行われ、固定期間に関する言及として「3~4週が一般的」「若年者では6週が望ましいと報告」など、年齢で再脱臼リスクが変わる点が説明されています。
ここで“ゼロポジション”を独自視点で捉えると、整復手技の名称というより「肩関節を安定させる筋群が働きやすいアライメントを作る」という概念として理解できます。つまり、整復後も腱板機能や肩甲上腕リズムを再獲得させるリハビリ設計が重要で、固定だけでは再発予防が不十分になり得る、という臨床的な繋がりが見えてきます。
意外なポイントとして、整復後の指導で「痛くない範囲で動かす」だけを強調すると、患者は肩をすくめる代償運動を覚え、結果的に肩甲帯の過緊張が残ることがあります。早期から理学療法で“肩甲骨の下制・後傾”などの基本を整えると、恐怖回避姿勢が減り、再受傷リスク行動(急な外転外旋)も減らしやすくなります。
整復は「成功させる」だけでなく、「合併損傷を増やさない」「次の再脱臼を減らす」まで含めて初めて完結します。ゼロポジション挙上法は侵襲性の低い選択肢として紹介されますが、骨折除外・神経血管評価・痛みコントロールという土台があって初めて安全に機能します。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5154590/
以下は、現場で使える最低限のチェックリストです(施設プロトコルがある場合はそれを優先)。
・整復前:レントゲンで骨折の有無と脱臼方向を確認する。
・整復前:腋窩神経領域の感覚、末梢循環など神経血管所見を記録する。
・整復中:痛みが増強し抵抗が強いときは一旦止め、鎮痛鎮静や別手技へ切り替える。
・整復後:再脱臼予防のため固定とリハビリ方針を具体化する(若年者は再脱臼率が高い点に注意)。
(参考リンク:肩関節脱臼の整復法の全体像と、骨折合併が閉鎖整復の禁忌になり得る点・神経血管評価の重要性)
A systematic and technical guide on how to reduce a shoulder dislocation (Turk J Emerg Med, 2016)
(参考リンク:ゼロポジション挙上法の具体的手順、整復のコツ、整復後の固定とリハビリの考え方)
肩の脱臼~再脱臼の予防が重要~

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