過食症の治し方:心理療法と薬物療法による治療アプローチ

過食症の治し方

過食症治療の概要
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心理療法中心のアプローチ

認知行動療法や対人関係療法で過食行動のパターンを改善

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薬物療法の併用

抗うつ薬により過食衝動と感情の安定化を図る

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家族の理解とサポート

家族療法を通じて治療環境を整備し回復を促進


過食症の治療は、医療従事者が専門的な知識と多面的なアプローチを組み合わせて実施する必要がある複雑な疾患です 。現在の治療において最も効果的とされているのは、心理療法を中心とした包括的な治療体系であり、患者の症状や背景に応じてカスタマイズされた治療計画が求められます 。本記事では、過食症の治し方について、エビデンスに基づいた治療アプローチを詳しく解説します 。

参考)神経性過食症 – 10. 心の健康問題 – MSDマニュアル…

過食症の認知行動療法による治し方

認知行動療法(CBT)は、過食症治療の第一選択として国際的に推奨されている治療法です 。特に、摂食障害に特化したCBT-E(強化型認知行動療法)は、神経性過食症患者に対して顕著な効果を示しています 。この治療法では、患者が食事パターンの正常化を目指し、過食行動に関連する思考パターンや行動を修正することを目標とします 。

参考)過食症(神経性大食症)

治療プロセスでは、食事日記や行動実験などの技法を用いて、過食のトリガーとなる状況や感情を特定し、それらに対する適応的な対処法を習得します 。4〜5か月間にわたって週に1〜2回のセッションを受け、合計16〜20回ほどの治療を実施することで、約30〜50%の患者でむちゃ食いと排出行動が改善します 。日本では平成30年4月の診療報酬改定により、神経性過食症患者に対するCBT-Eが診療報酬算定可能となり、医師または医師と看護師の共同で実施できます 。

参考)摂食障害の治療

摂食障害に対する認知行動療法(CBT-E)の詳細な治療マニュアル

過食症の薬物療法による治し方

薬物療法は、心理療法と組み合わせることで過食症の治療効果を高める重要な治療手段です 。選択的セロトニン再取り込み阻害薬SSRI)などの抗うつ薬が主に使用され、むちゃ食いと嘔吐の頻度を減らす効果があります 。これらの薬物は、過食症患者によくみられる不安と抑うつの症状改善にも有効であることが確認されています 。

参考)過食症について相談する前に知っておきたい治療法を解説 – シ…

薬物療法の効果は、過食の衝動を抑制し、気分の落ち込みや不安を和らげることにあります 。ただし、薬物療法単独では根本的な治療にはならず、認知行動療法などの心理療法と並行して実施することで、より良い治療結果が期待できます 。医師との継続的な相談により、患者の状態に応じた適切な薬物調整を行うことが重要です 。
近年注目されているTMS治療(経頭蓋磁気刺激療法)も、うつ状態を伴うケースや依存症としての側面が強いケースにおいて効果が期待される新しい治療選択肢として研究が進められています 。

参考)過食に有効!?TMS治療の過食症への効果を精神科医が解説

過食症の家族療法による治し方

家族療法は、特に若年者の過食症治療において重要な役割を果たします 。欧米の摂食障害ガイドラインでは、病歴3年未満、18歳以下の神経性過食症に対して、家族をベースとする治療(FBT:Family Based Treatment)を第一選択として推奨しています 。この治療法は、家族病理として捉えてきた従来の立場から家族を解放し、摂食障害を明確な病理として外在化することで治療を進めます 。

参考)https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/report_pdf/%E3%81%AF%E3%81%98%E3%82%81%E3%81%A6%E3%81%AEFBT%E5%AE%9F%E8%B7%B5%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%89.pdf

家族療法では、まず家族との関わりの中に過食症の原因がないかを探り、それを解決することから始めます 。治療者は摂食障害を家族の問題として捉え、問題解決に向けて家族全体をサポートしながら患者の病気克服を目指します 。家族の理解と協力があることで治療を進めやすくなるため、家族への説明や助言、環境調整なども重要な治療要素となります 。

参考)摂食障害とは?症状や診断方法について解説|渋谷・大手町・みな…

FBTの要点として、①病因論を棚上げし家族を病理から解放する、②摂食障害を「エイリアン」として外在化し両親による疑似的摂食障害専門病棟を実現する、③外来治療で青年期の自然な成長を促進することが挙げられます 。

過食症のオンライン治療による治し方

最新の治療アプローチとして、治療者誘導型オンライン認知行動療法が注目されています 。福井大学をはじめとする全国6つの大学病院と1つのナショナルセンターによる多施設共同ランダム化比較試験では、オンライン認知行動療法の有効性がアジアで初めて実証されました 。この治療法により、通常治療のみのグループと比較して、過食と代償行動の回数が顕著に減少することが確認されています 。

参考)神経性過食症女性に治療者誘導型オンライン認知行動療法を提供し…

オンライン治療の最大の利点は、外来通院の負担を軽減し、自宅で専門的な治療を受けられることです 。特に地方在住者や通院困難な患者にとって、新たな治療選択肢として期待されています 。治療プログラムでは、1回90分を1回、1回60分を20回の計21回の面接を約20週間にわたって実施し、面接に加えて宿題(記録や課題)も課されます 。

参考)https://kohnodai.jihs.go.jp/subject/080/200/opt08019112202.pdf

神経性過食症に対するオンライン認知行動療法の研究成果詳細

過食症の栄養療法と支持的治療による治し方

過食症の治療には、栄養面での専門的なアプローチも不可欠です 。栄養療法では、栄養士による助言や必要に応じた食事以外の補助的な栄養補給が行われます 。規則正しい食事パターンの確立は、過食行動の改善において基本的かつ重要な要素となります 。

参考)Q22:摂食障害(神経性やせ症、神経性過食症)の治療

教育入院を実施する医療機関では、朝昼夕の3食を規則正しく食べる練習をしながら、テキストや医師との面談を通して回復のヒントを探る包括的なアプローチが取られています 。栄養サポートチームによる専門的な栄養指導も、治療効果を高める重要な要素です 。
心理教育では、病気に対する正しい知識を身につけ、健康的な食生活改善に向けての具体的な助言が提供されます 。支持的精神療法も一般的に行われ、患者の心理的な負担を軽減し、治療継続への動機づけを支援します 。
さらに、マインドフルネス・イーティングなどの新しいアプローチも効果を示しており、過食エピソードの減少、身体像不満の改善、食習慣の改善、生活の質の向上などの効果が短期間で確認されています 。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10975968/