顆粒球コロニー刺激因子と副作用

顆粒球コロニー刺激因子と副作用

顆粒球コロニー刺激因子の主要副作用
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重篤な副作用

大型血管炎、間質性肺炎、急性呼吸窮迫症候群など

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一般的な副作用

骨痛、筋肉痛、腰痛、発熱、倦怠感

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長期的な懸念

白血病リスク、骨髄異形成症候群の発症

顆粒球コロニー刺激因子の一般的副作用

顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)製剤の最も頻度の高い副作用は筋・骨格系症状です 。背部痛、関節痛、筋肉痛、骨痛、四肢痛が5%以上の頻度で報告されており、特に腰痛は20.4%と高い発現率を示しています 。これらの症状は投与開始後1-3日目に出現することが多く、大腿骨や腰椎に痛みを感じる患者が多数を占めます 。

参考)https://kirishima-mc.jp/data/wp-content/uploads/2023/04/3dd17f60813da79e13a4148274c4917c.pdf

発熱も代表的な副作用の一つで、G-CSF投与により体温上昇が生じることがあります 。発熱の原因は感染症だけでなく、G-CSF製剤自体の副作用である場合もあるため、鑑別診断が重要となります 。また、全身倦怠感や頭痛も一般的に見られる症状です 。

参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00049709.pdf

血液検査値異常としては、LDH上昇、Al-P上昇、ALT上昇、AST上昇などの肝機能異常が認められます 。これらの異常値はG-CSF投与終了後2-3日以内に正常化することが一般的ですが、継続的なモニタリングが必要です 。

参考)https://www.jmdp.or.jp/medical/information/news_file/file/pegG-CSF_alart.pdf

顆粒球コロニー刺激因子による重大な副作用

2015年に厚生労働省はG-CSF製剤3剤の使用上の注意に対し、重大な副作用として「大型血管炎」を追記しました 。大型血管炎は大動脈、総頸動脈、鎖骨下動脈等の炎症を起こし、発症頻度は0.47%と報告されています 。G-CSF製剤投与後10日前後に好発することが知られており、発熱や血管炎発症部位に一致した疼痛を全症例で認めます 。

参考)https://www.m3.com/clinical/news/608322

間質性肺炎もG-CSF製剤の重篤な副作用として知られています 。急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を引き起こし、集中治療を要する緊急事態となることがあります 。特に敗血症や肺炎などの重症感染症を合併している患者でリスクが高まるため、呼吸困難や頻呼吸などの初期症状を見逃さないことが重要です 。

参考)https://kobe-kishida-clinic.com/respiratory-system/respiratory-medicine/filgrastim/

脾腫・脾破裂も注意すべき重大な副作用です 。長期的なG-CSF投与により脾臓の腫大が生じることがあり、稀に脾臓破裂を引き起こす可能性があります 。血液疾患患者や高用量の長期投与例でリスクが高まることが報告されています 。

参考)https://www.jstct.or.jp/modules/donor/index.php?content_id=6

顆粒球コロニー刺激因子によるSweet症候群の発症

G-CSF製剤投与により薬剤誘発性Sweet症候群(急性熱性好中球性皮膚症)が発症することがあります 。Sweet症候群の発症にはG-CSF、IL-8などのサイトカインの関与が指摘されており、G-CSFは薬剤誘発性Sweet症候群を起こす薬剤の中でも最も頻度の高い薬剤です 。

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/nishinihonhifu/86/6/86_575/_article/-char/ja

症状として発熱と痛みを伴う顔面、首、手の甲などの皮膚表面に暗赤色の小さな盛り上がりが出現します 。病理組織学的には真皮上層の著明な浮腫と、真皮全層にわたり好中球を主体とする炎症性細胞浸潤が認められます 。特にペグフィルグラスチム投与後の発症例が複数報告されており、血管炎と併発した症例も存在します 。

参考)https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.1412207411

血液検査では好中球の増加と炎症反応の上昇が特徴的で、診断には病理組織検査が重要です 。治療は副腎皮質ステロイド薬が有効とされており、G-CSF投与後に疼痛を伴う紅斑を認めた際にはSweet症候群を鑑別に挙げる必要があります 。

参考)https://asami.clinic/acute-febrile-neutrophilic-dermatosis/

顆粒球コロニー刺激因子の長期的副作用とドナーへの影響

G-CSF製剤を投与されたドナーにおいて骨髄増殖性疾患及び急性骨髄性白血病が発症したとの報告があります 。日本では血縁ドナー2例において急性骨髄性白血病の発症が報告されており、長期的な安全性に関する議論が続いています 。

参考)https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00063355

再生不良性貧血、骨髄異形成症候群及び先天性好中球減少症患者においても染色体異常が見られたとの報告があります 。また、海外ドナーにおいて心不全、血管炎、脳血管障害、片頭痛、痛風、高血糖、虚血性心疾患、心筋炎などの多様な有害事象が報告されています 。

参考)https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00061374

日本造血・免疫細胞療法学会の調査では、10年程度の観察でG-CSF使用ががん発生を助長する可能性は否定的と考えられています 。しかし、健常人に対する長期的影響に関しては十分なデータが得られていないため、継続的な観察が必要です 。末梢血幹細胞採取時に一時的な心停止が報告されている症例もあり、ドナーの安全管理は重要な課題となっています 。

参考)https://vet.cygni.co.jp/include_html/drug_pdf/ketueki/JY-14057.pdf

顆粒球コロニー刺激因子製剤別の副作用特徴

従来型G-CSF製剤(フィルグラスチム)と持続型G-CSF製剤(ペグフィルグラスチム)では副作用プロファイルに違いがあります 。興味深いことに、従来のG-CSF製剤では血管炎を発症しなかった患者が、持続型G-CSF製剤であるペグフィルグラスチムで血管炎を発症したケースが報告されています 。

参考)https://is.jrs.or.jp/quicklink/journal/nopass_pdf/ajrs/008050344j.pdf

ペグフィルグラスチムによる副作用として、背部痛、血中乳酸脱水素酵素増加、発熱、血中ビリルビン増加などが挙げられます 。副作用発現頻度は63.0%と高く、特に背部痛は20.4%の患者で認められています 。また、ペグフィルグラスチム投与により薬剤誘発性Sweet症候群を発症した報告も複数あります 。

参考)https://www.carenet.com/drugs/category/blood-and-body-fluid-agents/3399416G1028

フィルグラスチム(グラン)では骨痛と筋肉痛が最も一般的な副作用として報告されています 。白血球増多症や脾臓腫大のリスクもあり、著しい白血球増多は血液粘稠度の上昇や微小循環障害を引き起こす可能性があります 。アレルギー反応は稀ですが、軽度の皮疹から重篤なアナフィラキシーショックまで様々な症状が報告されており、特に初回投与時や投与再開時にリスクが高まります 。