間質の場所と役割
間質がある場所と組織構造
間質は、臓器の内部や外側、あるいは臓器の間のすきまを埋めている結合組織です。具体的には、臓器の表面のすぐ下に位置しており、組織にその強度と形状を与える細胞で構成されています。
参考)間質とは?
全身すべての臓器・組織は実質と間質によって構成されており、臓器・組織機能の中心となっている部分が実質であり、その周辺にあり実質を支持する部分が間質です。間質はその臓器の枠組みをつくって支えている場合もあります。
間質を構成する細胞の多くは線維芽細胞と呼ばれ、病理学者はしばしばそれらを紡錘細胞と表現します。これは線維芽細胞が長くて薄い形状をしているためです。間質には、組織に栄養素を運ぶ血管や、余分な水分や老廃物を取り除くリンパ管も含まれています。
参考)リンパ液の働き|循環
間質と実質の違い
実質とは、臓器内に通常見られる組織で、具体的には臓器の特定の機能を実行する細胞で構成されています。たとえば、肝臓の実質は主に肝細胞と呼ばれる特殊な細胞で構成されており、心臓なら心筋細胞、消化管なら消化管上皮細胞が実質細胞に該当します。
参考)【藤宮峯子院長Vol.4】間葉系幹細胞(MSC)で慢性炎症が…
一方、間質はそれ自体に形はなく、実質の間を埋めている部分で、間質細胞が浮遊しています。実質を構成する細胞は、結合組織の一種である間質に囲まれており、間質が臓器内の他の細胞を一緒に保持するのに役立っています。
参考)実質とは?
肺の構造で見ると、空気が通る部分を「実質」、肺胞の壁やその周囲の支持組織(毛細血管や結合組織など、空気の通らない部分)を「間質」といいます。広い意味で「間質」とは、肺胞や気道(空気の通り道)以外の肺の組織全体を指します。
間質における血管とリンパ管の役割
間質には血管とリンパ管が張り巡らされており、それぞれ重要な役割を担っています。血管は組織に栄養素を運び、リンパ管は余分な水分や老廃物を取り除く働きをします。
毛細リンパ管の構造は密集した網目状になっており、全身にくまなく張り巡らされ間質から余分な水や蛋白等を回収する役割をしています。毛細血管に回収されるほか、一部の間質液はリンパ管に取り込まれ、リンパ系は取り込んだ間質液をたえず血液循環系に運ぶ役割をもっています。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/mpta/21/1/21_1_32/_pdf
この吸収された間質液がリンパ液であり、リンパ管の中を通り合流を繰り返し太くなっていきながら、静脈と同様に心臓の近くまで戻っていきます。毛細リンパ管は弁機能を有し、間質腔から毛細リンパ管内に間質液が流れ込む仕組みになっています。
参考)第1回 むくみとは? 〜血管系とリンパ管系の違いを知ろう〜
間質における線維芽細胞の機能
線維芽細胞は間質を構成する主要な細胞であり、複数の重要な機能を担っています。第一に、細胞間物質の合成として、間質の線維成分であるコラーゲン・エラスチン等のほか、ヒアルロン酸やグリコサミノグリカンなどの合成に関与します。
参考)線維芽細胞 | 一般社団法人 日本血栓止血学会 用語集
線維芽細胞は大食細胞に劣るものの貪食能力を有しており、また筋線維芽細胞は平滑筋細胞同様、セロトニン、ブラジキニンで収縮し、組織収縮に関与します。腸粘膜固有層、肺、真皮の線維芽細胞様細胞には脂肪滴が存在し、ビタミンAや脂質代謝に関わることも知られています。
がん間質を構成する線維芽細胞は、間質を構成するコラーゲン等の線維を産生する細胞であり、がん細胞の悪性化(増殖、浸潤、転移)を促進する役割を持つことが明らかになっています。がん組織を硬くする要因は主に線維芽細胞が産生するコラーゲン、ラミニン、フィブロネクチンなどの細胞外基質(ECM)の蓄積です。
参考)線維芽細胞の性質を変えることにより、抗がん剤の効果を増強させ…
間質の病気と線維化のメカニズム
間質に関連する代表的な病気として、間質性肺炎、肝硬変、慢性腎臓病などがあります。これらの病態では、間質に炎症細胞(線維芽細胞、好中球、マクロファージなど)が溜まり、線維芽細胞がコラーゲン線維を大量に産生して、間質が肥厚し線維でガチガチになっている状態です。
間質が肥厚し線維化すると実質細胞は機能を果たせなくなり、機能不全に陥ります。間質性肺炎では、肺胞の壁(間質)に炎症が起こり、その結果、壁が厚くなったり硬くなったり(線維化)する病気であり、乾いた咳(空咳)や、酸素が取り込みにくくなることによる息切れ・息苦しさが生じます。
肺線維化をもたらす原因として、活性化した線維芽細胞が線維化部位に集積し、I型コラーゲンを大量に産生することが明らかになっています。特に、α-SMAを発現する筋線維芽細胞が線維化の進行に重要な役割を果たします。
参考)共同発表:肺線維化をもたらす線維芽細胞が病変部位に集積するメ…
間質性肺炎の原因としては、膠原病に伴うもの(関節リウマチなど)、薬剤性、粉じん曝露に関連するもの(塵肺性)、アレルギー(過敏性肺炎)に関連するもの、感染症(ウイルスなど)、原因不明(特発性)などがあります。原因不明で慢性の経過をみる代表的な間質性肺炎が特発性肺線維症(IPF)です。
間葉系幹細胞療法は、一旦線維化を起こした状態を元に戻す治療法として注目されており、最大のメリットは慢性炎症をもとに戻すことが可能になった点です。間葉系幹細胞は間質に溜まった炎症細胞を除去することができ、炎症細胞が除去されれば、実質細胞の元になる幹細胞から自ずから実質細胞が生まれてきます。
間質リテラシープロジェクト – 間質の細胞多様性に基づく疾患理解の研究
間質の構造や機能、疾患との関連についてさらに詳しく知りたい方には、科学技術振興機構による間質リテラシー研究プロジェクトのサイトが参考になります。
間質性肺炎の診断や治療について、医療機関による信頼性の高い情報が提供されており、患者さんやご家族の理解に役立ちます。