間質性腎炎ぶどう膜炎症候群と診断と治療
間質性腎炎ぶどう膜炎症候群の臨床像
間質性腎炎ぶどう膜炎症候群(TINU症候群)は、尿細管間質性腎炎(TIN)とぶどう膜炎(U)を合併するまれな疾患概念です。
疫学的には若年者に多く、女性に多いとされ、発症年齢の中央値が15歳という報告もあります。
腎症状は非特異的で、発熱、全身倦怠感、腹痛・側腹部痛、多尿・多飲など「感染症や体調不良でも起こり得る」症状に紛れやすい点が落とし穴になります。
一方、眼症状も典型例では眼痛、充血、羞明、視力低下が挙がりますが、ぶどう膜炎が確認されても無症状の患者が相当数いる(約60%近くが無症状)という記載があり、症状ドリブンの拾い上げは危ういことがわかります。
ぶどう膜炎は典型的に両側性の前部ぶどう膜炎ですが、中間部や後部の病変を来すこともあり、型が揃わないために“いつもの前部ぶどう膜炎”として処理される危険があります。
間質性腎炎ぶどう膜炎症候群の診断とβ2MG
診断の実務では「疑う力」が半分以上を占めます。なぜなら、TINUに特異的な非侵襲的検査はないとされ、腎生検で確定診断が可能、という整理だからです。
ただし臨床現場でまず武器になるのは尿検査で、尿細管性蛋白尿の増加、特に尿中β2ミクログロブリン(β2MG)上昇が診断のポイントになるとされています。
加えて白血球尿、血尿、蛋白尿、尿糖なども参考所見になり得ますが、これらは非特異的なので、β2MGのように「尿細管障害」をより直接に反映する項目を軸にするのが合理的です。
血液検査では腎機能障害(血清クレアチニン高値)が見られることが多い一方、診断時点で眼の症状と腎症状が併存しているのは20%程度という記載があり、片側から入った時点で反対側が“静か”でも油断できません。
臨床の工夫としては、原因不明の前部ぶどう膜炎をみたら「最低限の腎評価セット(血清Cr+尿検査+β2MG)」を同時に走らせ、初回で決め打ちできなければ経時で追う、という設計が現実的です。
間質性腎炎ぶどう膜炎症候群の鑑別診断
TINUは“合併が特徴”であるため、鑑別では「腎炎の原因」と「ぶどう膜炎の原因」を別々に洗い出してから、両者を結ぶ全身性疾患を潰す流れが安全です。
鑑別として、感染症(結核、EBV、HIV、クラミジア、マイコプラズマ、トキソプラズマ症など)やサルコイドーシス、シェーグレン症候群、SLE、肉芽腫性多血管炎(ウェゲナー)、ベーチェット病、強直性脊椎炎、炎症性腸疾患などを含めるべきとされています。
日本語の臨床解説でも、尿細管間質病変と眼症状を合併する病気としてサルコイドーシスが挙げられ、鑑別が難しい場合があると明記されており、胸部所見・ACE・リゾチーム・全身症状などの情報統合が重要です。
「ぶどう膜炎+腎機能障害」という見た目だけでTINUに寄せると、感染症や自己免疫疾患の治療機会を逸するので、ステロイド開始前に“感染の赤旗”を拾うチェック(結核リスク、発熱の持続パターン、曝露歴など)は手順化しておくのが無難です。
間質性腎炎ぶどう膜炎症候群の治療
治療は一般に免疫抑制療法が中心で、一次治療として経口コルチコステロイドが挙げられ、開始後数日〜数週間で症状改善がみられることが典型的とされています。
さらに、シクロホスファミド、シクロスポリン、メトトレキサート、ミコフェノール酸モフェチルなど他の免疫抑制療法の使用報告もあるため、再発・遷延や臓器障害の程度に応じて治療を段階化する発想が必要になります。
ぶどう膜炎に対してはコルチコステロイド外用が有用とされ、局所治療で改善するケースが多い一方、全身投与が必要になる場合もある、という二段構えで理解すると臨床判断がぶれにくくなります。
腎症状は自然軽快することもある一方、高度の腎機能障害や全身症状を伴う場合はステロイドや免疫抑制薬で治療される、という整理があり、「軽いから放置」でも「すぐ全身投与」でもなく重症度で決める姿勢が求められます。
また予後は大半で良好とされますが、一部は末期腎不全に移行し得るため、短期反応だけで安心せず腎機能を追い切る必要があります。
間質性腎炎ぶどう膜炎症候群の連携とフォロー(独自視点)
TINUの難しさは、腎と眼の発症タイミングが揃わない点にあります。ぶどう膜炎とTINは同時性にも異時性にも発生し得る、とされているため、診断は「瞬間」ではなく「期間」で成立します。
実臨床の設計としては、眼科→腎スクリーニング、腎臓内科/小児科→眼科スクリーニングを相互に“自動化”するのが有効です。実際に、ぶどう膜炎の治療・経過観察中には定期的に尿検査を行い、尿細管間質性腎炎の経過観察中には定期的に眼科受診を行う重要性が示されています。
ここでの意外なポイントは、「患者が自覚症状を訴えないから順調」と見なすほど危険が増すことです。ぶどう膜炎は無症状例が多いとされる一方、腎症状も非特異的で、両者とも“本人の体感”に依存すると拾えない領域が残ります。
したがって、紹介状・逆紹介のテンプレートに以下のような最低限の項目を固定で入れると、忙しい現場でも漏れが減ります。
- 👁️眼科→腎:ぶどう膜炎の型(前部/中間部/後部)、両側性、点眼ステロイド反応、再発回数、無症状の有無。
- 🧪腎→眼科:血清Cr推移、尿所見(白血球尿・血尿・蛋白尿・尿糖)、尿中β2MG、腎生検の有無と所見要旨。
- 🤝共通:感染症・サルコイドーシス等の鑑別の進捗、ステロイド開始日と用量、免疫抑制薬の併用状況。
眼合併症は20%で報告がある(虹彩後癒着、嚢胞様黄斑浮腫、眼圧上昇、白内障など)という記載もあり、視機能を守る観点でも“腎が落ち着いた後の眼フォロー”が途切れない運用が大切です。
鑑別診断・治療・予後の要点がまとまっており、医療者向けに全体像を把握するのに有用。
Orphanet:尿細管間質性腎炎・ぶどう膜炎症候群(TINU症候群)
尿中β2MGなど診断のポイント、併存が20%程度、定期的な相互フォローの重要性が具体的で臨床運用に直結。