関節痛と熱なしの原因から治療まで
関節痛で熱なしの風邪と感染症の鑑別
関節痛があるが熱がない場合、風邪の初期段階である可能性が高いとされています。関節は普段の生活で常に使われるため、体調が悪い時に節々の痛みは最初の症状として出やすいという特徴があります。
参考)https://medicaldoc.jp/symptoms/part_orthopedics/sy0626/
風邪による関節痛の場合、プロスタグランジンという物質が免疫細胞の活性化により分泌されることが原因となります。このプロスタグランジンは体温を上げる効果もありますが、タイミングがずれて後から熱が出ることもあるため注意が必要です。
参考)https://www.mcsg.co.jp/kentatsu/health-care/31706
また、感染症関節炎やウイルス性関節炎の可能性も考慮する必要があります。パルボウイルスB19、肝炎ウイルス、HIV、節足動物媒介ウイルス、コロナウイルスなどの感染により、関節痛や急性関節炎を引き起こすことがあります。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7610167/
関節痛で熱なしの非炎症性疾患の特徴
変形性関節症は非炎症性疾患の代表例で、関節液の貯留や骨増殖に伴う腫脹は認めますが、局所の発赤や熱感はほとんど認めません。病初期には関節の軽い痛み、違和感、こわばりなどが出現し、進行すると関節を動かした時に痛みを感じ、安静にすると軽快するという特徴があります。
参考)https://www.rheuma-net.or.jp/rheuma/illness/oa/
手指関節の第2関節によく起こる症状で、炎症ではないので熱感を伴わないことが関節リウマチとの重要な鑑別点となります。変形性関節症では、加齢や激しいスポーツなどによる関節の軟骨がすり減ることで、強い関節痛や関節の変形が生じます。
参考)https://w-health.jp/woman_trouble/vulvar_pain_syndrome/
痛風も熱を伴わない関節痛の原因の一つで、高尿酸血症によって関節に尿酸の結晶が蓄積することで発症します。主に夜間に強い関節痛、腫れ、頻脈、倦怠感などの症状が現れるのが特徴です。
参考)https://www.mcsg.co.jp/kentatsu/health-care/35935
関節痛で熱なしのリウマチ性疾患の診断
関節リウマチは左右対称に複数の関節が腫れて痛むのが特徴で、特に「朝のこわばり」が30分以上続く場合は注意が必要です。早期関節リウマチの診断基準では、6つの項目のうち3つに当てはまる場合に診断されます。
参考)https://sincellclinic.com/column/Rheumatoi-Arthritis
診断には血液検査でリウマトイド因子やCRPの測定、X線検査、関節液検査、超音波検査、MRI検査などが用いられます。しかし、初期のリウマチでは従来の診断基準に当てはまらないことが多く、総合的な判断が必要となります。
参考)https://kubota-ra.com/column/diagnosis.html
全身性エリテマトーデス(SLE)も様々な臓器に炎症を起こす病気で、関節痛以外にも発熱や倦怠感、皮膚の発疹などを伴うことがありますが、必ずしも熱を伴うとは限りません。シェーグレン症候群でも関節が炎症を起こし、痛みを生じる関節痛が代表的な症状の一つとなっています。
参考)https://akashi.clinic/2024/08/21/joint_pain/
関節痛で熱なしの新しい診断アプローチ
最近の研究では、関節痛の病態メカニズムにおいて神経免疫相互作用が重要な役割を果たしていることが明らかになってきました。従来の炎症マーカーだけでなく、神経系と免疫系の双方向の影響を考慮した診断アプローチが注目されています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11363721/
天候と関節痛の関連性についても系統的レビューが行われ、気圧や相対湿度が関節痛の強度と正の相関を示し、気温は負の相関を示すことが報告されています。この知見は、従来の診断では見落とされがちな環境因子の影響を評価する新たな視点を提供しています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10120534/
また、非炎症性疼痛という概念も重要で、炎症マーカーと関連しない痛みが関節リウマチ患者の約5分の1に見られることが系統的レビューで示されています。これにより、従来の炎症ベースの診断だけでは不十分な症例があることが明らかになっています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10321089/
関節痛で熱なしの治療と日常管理
関節痛の治療において、患部に熱感がない場合は患部を温めることが効果的とされています。サポーターなどで患部を保護し、温熱療法を行うことで症状の改善が期待できます。
参考)https://www.saitama-rheum.com/jointpain/
日常生活では、関節に負担がかからない動きを心がけることが重要です。階段昇降、床に座る、急な方向転換や停止、重い荷物を持つなどの動きは避け、関節に負担のかからない範囲で無理のない運動を継続することが推奨されます。
参考)https://mymc.jp/clinicblog/211797/
痛みが持続する場合や他の症状を伴う場合は、専門医による診察が必要です。血液検査、尿検査、画像検査などの総合的な検査により、適切な診断と治療方針を決定することができます。早期診断と適切な治療開始により、関節の機能維持と症状の改善が可能となります。
参考)https://www.takedahp.or.jp/jujo/consultation/introduction/rheumatism_c4_4.html
筋骨格系疼痛は成人の約47%が経験する一般的な問題であり、そのうち39-45%は長期間持続し医学的相談が必要となります。適切な管理により生活の質の向上と社会経済的負担の軽減が期待できるため、症状が持続する場合は積極的な医療機関受診が推奨されます。