化膿性関節炎 指
化膿性関節炎 指の診断:関節液と培養とグラム染色
化膿性関節炎の診断は「関節液の採取と細菌学的同定」が中心で、まず関節穿刺(関節液採取)を急ぐのが基本です。
SANJOガイドラインでも、疑う時点で可能な限り早く関節液穿刺を行い、白血球数(PMN比率)・結晶・細菌学検査(培養/グラム染色)を優先順位つきで提出することが推奨されています。
検体の出し方にも落とし穴があります。穿刺の手技は厳密な無菌操作が必要で、皮膚の消毒が乾いてから穿刺する、皮下膿瘍を貫いて穿刺しない、蜂窩織炎部位を避ける(可能なら)といった注意点が明記されています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9901514/
「乾いたはずなのに採れない(dry tap)」では、針先が関節包外にある可能性があり、超音波/透視/CTでのガイドを考慮します。
関節液の所見としては、SANJOガイドラインでは関節液WBC >50,000/μLが示唆的とされつつも、これ単独では確定できず、逆に低値でも否定できない点が強調されています。
また「結晶がある=感染なし」ではなく、結晶(痛風/偽痛風)を認めても化膿性関節炎は否定できないため、結晶検査は“除外”ではなく“併存の確認”として扱う姿勢が安全です。
意外と現場で効く工夫として、関節液培養を通常培地だけに頼らず、余剰検体を血液培養ボトルへ接種すると感度が上がり得る、という記載があります(ただし検体量や施設運用に依存)。
さらに、培養陰性でも疑いが強い場合は、培養の延長(最大10–14日)や、抗菌薬投与中・難培養菌・陰性例でのPCRなど分子検査の活用が推奨されています。
化膿性関節炎 指の起因菌:黄色ブドウ球菌とMRSAリスク
起因菌は状況で変わりますが、総論として黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)が主要な原因菌である点は複数レビューで共通しています。
SANJOガイドラインでも、経験的治療の選択にあたり「もっとも可能性の高い病原体」と「MRSAや多剤耐性グラム陰性菌のリスク因子」を考慮するよう示されています。
指(DIP/PIPなど)の小関節では、皮膚バリア破綻(ささくれ、微小外傷、咬創、処置後)からの直接接種が背景に隠れていることが多く、病歴聴取で見落とすと原因菌推定がズレます。
参考)https://www.mdpi.com/2076-2607/8/6/838/pdf
深部手感染症の総説では、手は外傷や皮膚損傷から細菌が侵入しやすく、黄色ブドウ球菌や連鎖球菌などが多いこと、進行すれば深部区画へ波及し得ることが述べられています。
「意外に重要」なのは、患者背景で炎症反応や症状が典型的でないことがある点です。免疫抑制(ステロイド、リウマチ治療、糖尿病など)では、関節液WBCのカットオフが当てはまらない可能性がある、とSANJOガイドラインでも注意喚起されています。
つまり、指の腫脹と疼痛が強いのにCRPが軽度、というケースでも、局所所見と穿刺結果を優先して判断する必要があります。
化膿性関節炎 指の治療:抗菌薬と投与期間と切り替え
治療は原則として「抗菌薬+排膿/ドレナージ(洗浄・デブリードマンを含む)」の組み合わせで、関節破壊を防ぐため初動が勝負です。
SANJOガイドラインでは、敗血症が疑われる場合を除き、培養の偽陰性を避けるため、経験的抗菌薬は関節液などの診断サンプリング後に開始することが基本とされています。
経験的抗菌薬は地域の疫学と耐性、グラム染色、MRSAリスクを踏まえて選び、培養結果でde-escalation(適正化)していく流れになります。
投与期間は施設や病態で差が出やすい領域ですが、SANJOガイドラインでは(成人での明確な試験が乏しいとしつつ)静注1–2週を維持し、臨床所見と炎症反応が改善したら内服へ切り替え、内服2–4週(合計でおおむね数週)を提案しています。
総説レベルでも、化膿性関節炎の抗菌薬期間は4–6週が一般的な目安とされ、初期は高濃度到達のため静注を一定期間行い、その後内服へ移行する考え方が整理されています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11274354/
ただし指の小関節では、関節腔が小さく組織圧が上がりやすい一方で、十分なドレナージが確保できれば治療反応も早いことがあり、“期間”よりも「再燃しない感染源コントロール」と「機能温存のリハビリ開始時期」がアウトカムに効きます。
薬剤選択の実務では、MRSAを強く疑う(既往、施設リスク、皮膚病変、重症度など)場合に抗MRSA薬を考慮しつつ、漫然と広域にしないバランスが重要です。
敗血症/ショックを伴う場合は、関節炎という局所感染でも“全身管理の優先順位”が上がるため、施設の敗血症プロトコルに沿った即時投与と感染源コントロールが求められます(SANJOでもその例外が明記)。
化膿性関節炎 指の手術:洗浄とデブリードマンと早期介入
指の化膿性関節炎では、抗菌薬だけで押し切ろうとすると関節破壊と拘縮が残りやすく、洗浄・デブリードマン(必要に応じて滑膜切除やドレナージ)を早期に検討します。
SANJOガイドラインは主に“ネイティブ関節の総論”ですが、毒素や細菌負荷、関節内圧を下げる目的で侵襲的治療(関節穿刺の反復、関節鏡、開放手術など)が必要で、特に多くの場面で外科的デブリードマンを推奨しています。
手の小関節に関しては、近年の後ろ向き研究でも「早期介入が転帰に影響する」ことが示唆されています。手指の化膿性関節炎を扱った5年間の後ろ向き研究では、手の化膿性関節炎が機能に大きく影響し得る病態であり、臨床像・起因菌・治療要因の整理を通じて早期対応の重要性が議論されています。
参考)https://www.mdpi.com/1648-9144/60/6/895/pdf?version=1716907287
また、DIP関節に限れば、感染が重症化すると関節破壊が進み、徹底したデブリードマンが必要になり得ること、背側進入による関節内洗浄が広く行われていることが専門誌の抄録情報として示されています。
参考)化膿性遠位指節間関節炎に対する背側・掌側進入併施の検討 (臨…
「意外な選択肢」として、手指小関節の化膿性関節炎(DIP関節)に対しMasquelet technique(誘導膜法)を応用した症例報告があり、徹底的デブリードマン後の欠損・不安定性に対する再建戦略として紹介されています(一般化は禁物だが“機能温存の発想”として有用)。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6926348/
術後管理で忘れがちなのが、感染が落ち着いたら“できるだけ早く”可動域訓練へ移ることです。SANJOガイドラインでは、感染がコントロールされドレーンが抜去された後、拘縮回避のため早期の関節運動開始が推奨されています。
指は短期間の固定でも拘縮が固定化しやすいので、創部安定性と感染制御を確認しつつ、装具とハンドセラピーを早めに噛ませる設計が重要になります。
化膿性関節炎 指の独自視点:培養陰性と「抗菌薬先行」の罠
検索上位の一般向け解説では「抗菌薬を早く開始」と単純化されがちですが、臨床では“採取前投与”が診断の精度を落とすことが最大の罠です。
SANJOガイドラインは、敗血症例を除き、経験的抗菌薬は診断サンプリング後に開始して培養陰性を避けるべき、と明確に線引きしています。
指の化膿性関節炎は、関節液量が少なく「少量検体+抗菌薬先行」の組み合わせで培養陰性になりやすい一方、陰性でも治療は止められないため、結果として“広めの抗菌薬が長引く”という逆説に陥ります。
だからこそ、最初の穿刺で「量が少ない場合の優先順位(細菌学>WBC>結晶)」を意識し、残りを血液培養ボトルへ回す、培養延長やPCRを選択肢に入れる、という運用面が最終的な抗菌薬の適正化につながります。
もう一つの盲点は、指の疼痛と腫脹があると腱鞘炎や深部膿瘍と鑑別が絡み、関節だけを見ていると感染源コントロールが不十分になる点です。
深部手感染症の総説が述べるように、手は解剖学的に区画が近接し、膿が深部スペースへ波及し得るため、診察では関節単独疾患と決め打ちせず、超音波などで膿瘍形成や隣接組織の評価もセットで考えるのが安全です。
(診断・治療の根拠として有用:SANJOガイドライン原文)
(総説として有用:化膿性関節炎の診断・抗菌薬期間・手術介入の整理)
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11274354/

一歳三ヶ月の息子が化膿性関節炎から骨髄炎になりました: 《入院生活と予後の手記》 (JS出版)