化膿性関節炎と指
化膿性関節炎 指の症状と鑑別の要点
指の化膿性関節炎(PIP/DIP/MCPを含む)は、腫脹・発赤・熱感・強い自発痛、そして「関節可動域制限(とくに他動で痛い)」が前面に出やすい疾患です。手の感染性関節炎は重症化すると機能障害や、場合によっては切断に至ることがあるため、初診段階で“関節疾患としての危険度”を高めに見積もる姿勢が重要です。手指では外傷・咬傷などの直接侵入が多く、症状が局所に限局して見える点が落とし穴になります。
鑑別で特に紛らわしいのは、蜂窩織炎、腱鞘炎(化膿性屈筋腱腱鞘炎)、結晶誘発性関節炎(痛風/偽痛風)、炎症性関節炎(RA/PsAなど)です。手の感染性関節炎では、外傷歴がはっきりしない血行性感染も一定割合(10~12%程度)あり、原因が不明でも除外してはいけない点が臨床的に重要です。
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「意外な落とし穴」として、結晶(尿酸/ピロリン酸カルシウム)が関節液で確認できても感染を除外できないことが挙げられます。SANJOガイドラインでも、結晶の存在は化膿性関節炎(septic arthritis)を否定しないと明記されており、結晶が見えたことで診断が早合点になりやすい点は教育価値が高いポイントです。
化膿性関節炎 指の診断と関節穿刺と培養
医療従事者向けに最初に強調したいのは、化膿性関節炎の診断は「関節穿刺で得られる情報」が中核であり、臨床所見や採血だけでは確定も除外もできないことです。SANJOガイドラインでは、疑ったら可能な限り速やかに関節穿刺を行い、(量が限られる場合は優先順位として)細菌同定(培養)→白血球数/PMN%→結晶の順に評価することが推奨されています。
また、敗血症所見がない限り、原則として抗菌薬投与は“穿刺などの検体採取後”に開始し、培養陰性化(偽陰性)を避ける方針が示されています。これは手指の小関節でも同様で、先に抗菌薬が入るほど原因菌が取れず、結果として治療が長期化・広域化しやすくなります。
関節液の細胞数は重要ですが万能ではなく、SANJOガイドラインでは関節液WBC>50,000/μLは示唆的である一方、それだけで確定できず、逆に低値でも除外できないとされています。免疫抑制患者ではカットオフが当てはまりにくい点も臨床での“見逃しの理由”になりやすいため、症状・画像・関節液検査を束ねて判断します。
化膿性関節炎 指の画像とMRIとエコー
手指の化膿性関節炎は、初期の単純X線が「役に立たない」ことがあり、画像に頼り過ぎると診断が遅れるリスクがあります。手の感染性関節炎に関する総説では、発症後最初の2週間はX線所見が乏しく、早期診断には不向きとされています。
一方でエコーは、小関節でも関節液貯留の確認や穿刺ガイドとして実用性が高く、アクセスしにくい関節の穿刺誘導にも用いられます。SANJOガイドラインでも、超音波・CT・MRIは関節液貯留や周囲膿瘍の検出、穿刺ガイドとして有用と整理されています。
MRIは関節液・滑膜炎だけでなく、周囲軟部組織の波及や隣接する骨髄炎の評価に強みがありますが、コストと時間遅延があるため「MRI待ちで穿刺や治療が遅れる」構図が起きやすい点が実務上の注意点です。手の感染性関節炎の総説でも、MRIは有用だが急性期に広く使いにくい、と述べられています。
化膿性関節炎 指の治療と抗菌薬と手術
治療は原則として「排膿(ドレナージ/洗浄)+抗菌薬」が両輪で、手指の小関節でも“抗菌薬だけ”で押し切ると再燃・骨髄炎化・拘縮につながりやすい構造があります。SANJOガイドラインは、菌量と関節内圧を下げ毒素を洗い流す目的で、関節内の侵襲的治療(関節穿刺の反復、関節鏡、開放手術)を必要とし、可能なら早期のデブリドマンを推奨しています。
手の感染性関節炎の総説では、小関節では関節鏡が技術的に難しいことが多く、開放洗浄(open sanitation)が最も頻用されるとされています。さらに、感染が残存する場合は24~48時間以内の再手術が推奨される、という整理もあり、「1回洗って終わり」にならない点が手指領域の現実です。
抗菌薬の期間は症例の重症度・骨髄炎合併・術後経過で変動しますが、手の感染性関節炎の総説では概ね2~4週間の抗菌薬治療と早期リハビリ開始が述べられています。加えて、成人の手指の感染性関節炎で「術後2週間」と「術後4週間」を比較し、4週間の優位性が示されなかったランダム化試験が紹介されており、漫然と長期化させない視点も重要です。
ここで“意外に重要”なのが、治療の成否は抗菌薬の種類だけでなく、初期の菌量コントロール(排膿の質)と、その後の可動域管理で大きく変わることです。SANJOガイドラインでは、感染コントロール後は拘縮を避けるため早期の関節可動化を開始することが推奨され、ドレーン抜去など条件が整った段階で動かす方針が示されています。
化膿性関節炎 指の独自視点と再発予防とリハビリ
検索上位の一般的な解説では「治療=抗菌薬+手術」で終わることが多い一方、手指の化膿性関節炎は“治った後の手”まで含めて設計しないと、患者満足度と就労復帰に直結する機能が落ちます。手の感染性関節炎では、感染が鎮静化しても関節拘縮(stiffness)が主要な後遺症になり得るため、リハビリ開始時期が結果を左右する論点として繰り返し議論されています。
独自視点として提案したいのは、「初診時点でリハビリの負債を作らない」オーダー設計です。たとえば、①排膿後に“どの関節をどこまで固定するか(固定し過ぎない)”、②疼痛コントロールを早期に整えて他動・自動運動を入れられる環境を作る、③再診でCRPだけでなく“可動域の推移”をアウトカムとして追う、の3点をセットで運用すると、感染制御と機能温存の両方を評価しやすくなります。
さらに、再発・治療不成功のサインを早期に拾うことが、手指では“再手術の遅れ=骨髄炎化”につながり得ます。SANJOガイドラインでは治療失敗の兆候として、疼痛や局所炎症所見の持続、CRPやWBCの非改善、再穿刺での関節液所見(WBC高値の持続・培養陽性など)を挙げており、手指でも同様のフレームで「どこまで改善していれば良いか」をチームで共有すると運用が安定します。
(病態としての“怖さ”を患者説明に落とし込むための小ネタ)
・手の感染性関節炎の総説では、実験的条件で軟骨破壊が24~48時間で進行し得ることが述べられており、「痛みが強いのに様子見」は危険になり得る根拠として説明に使えます。
・また、治療が10日以上遅れると臨床研究で骨髄炎が認められた、という記載があり、受診遅れや紹介遅れのリスクコミュニケーションにも応用できます。
権威性のある参考(診断・治療の優先順位、抗菌薬開始のタイミング、結晶があっても否定できない等)。
SANJOガイドライン(septic arthritisの診断・穿刺・抗菌薬・手術タイミングの推奨)
権威性のある参考(手指の化膿性関節炎に特化:原因、画像の限界、治療遅延と骨髄炎、治療期間、リハビリ開始)。
Septic arthritis of the hand(手指の感染性関節炎の総説)

一歳三ヶ月の息子が化膿性関節炎から骨髄炎になりました: 《入院生活と予後の手記》 (JS出版)