髪を触ると頭皮が痛い原因は神経痛か病気?ストレスとの関連と対策

髪を触ると頭皮が痛い場合に考えられる原因と対処法

髪を触るときの頭皮の痛みの主な原因

神経系の問題

後頭神経痛など、神経が圧迫されたり刺激されたりすることで生じる痛み。チクチク、ピリピリとした電気が走るような痛みが特徴です。

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皮膚の炎症や疾患

脂漏性皮膚炎や帯状疱疹など、皮膚そのものに炎症や感染が起きている状態。かゆみや赤み、水ぶくれを伴うことがあります。

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心因性・全身性の要因

ストレスによる自律神経の乱れや血行不良、明確な器質的所見がない頭皮異感覚症(スカルプダイセステジア)などが原因となる場合もあります。

髪が痛む原因となる後頭神経痛の症状とメカニズム

 

髪に触れたり、ブラシでとかしたりするだけで頭皮に「ピリッ」「チクチク」といった電気が走るような鋭い痛みを感じる場合、後頭神経痛が原因である可能性が考えられます 。後頭神経痛は、後頭部を走行する大後頭神経、小後頭神経、大耳介神経といった神経が、何らかの原因で刺激されることによって生じる神経痛の一種です 。

主な原因は、長時間のデスクワークやスマートフォンの使用による不良姿勢、首周りの筋肉の過度な緊張(肩こりや首こり)、ストレスなどが挙げられます 。これらの要因によって後頭部から首にかけての筋肉が硬直し、その間を走行する神経が圧迫(絞扼)されることで、痛みやしびれといった症状が誘発されるのです 。痛みは片側に現れることが多く、後頭部から側頭部、頭頂部、さらには目の奥にかけて放散することもあります 。痛みは断続的に数秒から数分続くことが特徴で、痛みのない時間帯もあります。髪を触る、首を動かすといった特定の動作が痛みの引き金になることも少なくありません 。

診断は、特徴的な症状の問診が中心となります。圧痛点(押すと特に痛む場所)の確認や、他の頭痛を引き起こす疾患(片頭痛、緊張型頭痛、くも膜下出血など)との鑑別が重要です。治療としては、まず原因となっている筋肉の緊張を和らげることが基本となります。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の内服や、局所麻酔薬を神経の周辺に注射する神経ブロックが有効な場合があります。また、姿勢の改善指導や、理学療法、ストレッチなども症状の緩和に繋がります 。

後頭神経痛の鍼治療に関する有効性を示唆する研究報告です。代替療法の一つとして参考になります。

後頭神経痛に対する鍼治療の症例

髪周辺の皮膚炎や帯状疱疹による痛みの特徴

髪の毛に触れるだけで頭皮が痛む場合、皮膚自体のトラブルも疑う必要があります 。代表的な疾患として、脂漏性皮膚炎と頭部帯状疱疹が挙げられます。

脂漏性皮膚炎:
脂漏性皮膚炎は、皮脂の分泌が盛んな部位に発生しやすい湿疹です 。頭皮では、皮脂を栄養源とするマラセチアという常在菌(カビの一種)の異常増殖が関与していると考えられています 。フケやかゆみ、赤みを伴い、炎症が強くなると触れるだけで痛みを感じることがあります。ストレスや不規則な生活、ビタミンB群の不足なども悪化要因とされています 。

頭部帯状疱疹:
頭部帯状疱疹は、過去に水ぼうそう(水痘)にかかったことのある人の体内に潜伏していた水痘・帯状疱疹ウイルスが、免疫力の低下をきっかけに再活性化して発症する病気です 。体の片側の神経に沿って、ピリピリ、ズキズキとした強い痛みが先行し、その後、帯状に赤い発疹と水ぶくれが現れるのが特徴です 。頭部に発症した場合、髪に触れるだけで激痛が走ることがあります。初期症状が神経痛と似ているため診断が難しい場合もありますが、皮膚症状の出現が鑑別のポイントとなります 。治療が遅れると、帯状疱疹後神経痛という慢性的な痛みが残る可能性があるため、早期の抗ウイルス薬投与が極めて重要です 。特に高齢者や免疫力が低下している患者には注意が必要です 。

疾患 主な症状 特徴 推奨される診療科
後頭神経痛 電気が走るような鋭い痛み、しびれ 片側性、反復性、圧痛点あり 脳神経外科、神経内科、ペインクリニック
脂漏性皮膚炎 かゆみ、フケ、赤み、ヒリヒリした痛み 皮脂の多い部位、症状が慢性的 皮膚科
頭部帯状疱疹 強い持続的な痛み、ピリピリ感、水ぶくれ 片側性、皮膚症状を伴う 皮膚科、ペインクリニック

髪の痛みとストレス・自律神経の乱れが引き起こす血行不良

明確な神経の圧迫や皮膚疾患が見当たらないにもかかわらず、頭皮に漠然とした痛みや不快感がある場合、ストレスや自律神経の乱れが背景にある可能性を考慮する必要があります 。

人間は強いストレスを感じると、交感神経が優位な状態になります。交感神経は血管を収縮させる働きがあるため、持続的なストレスは頭皮を含む全身の血行不良を引き起こします 。頭皮の血流が悪化すると、筋肉が酸欠状態に陥り、乳酸などの発痛物質が蓄積して痛みとして感じられることがあります。これが、緊張型頭痛の一因ともなり、頭全体が締め付けられるような痛みとともに、頭皮の痛みを訴えるケースも少なくありません 。

また、自律神経の乱れはホルモンバランスにも影響を及ぼします 。特に女性では、ホルモンバランスの変動が心身の不調に繋がりやすく、頭皮の知覚過敏を引き起こす一因となることもあります。さらに、ストレスは免疫機能の低下を招き、前述の帯状疱疹や脂漏性皮膚炎を誘発・悪化させる引き金にもなり得ます 。患者が「髪を触ると頭皮が痛い」と訴え、器質的な異常が見つからない場合、生活習慣や心理的ストレスについて丁寧に問診し、全人的なアプローチを検討することが重要です。睡眠不足、過労、精神的な悩みなどが隠れていないか確認し、生活指導やストレスマネジメントの助言も治療の一環となります。

以下は、頭皮の血行を促進し、筋肉の緊張を和らげる簡単なセルフケアです。

  • 頭皮マッサージ: 指の腹を使って、側頭部や後頭部を優しく円を描くようにマッサージする 。
  • 首のストレッチ: ゆっくりと首を前後左右に倒し、首周りの筋肉を伸ばす。
  • 温める: 蒸しタオルなどで首の後ろや肩を温め、血行を促進する。
  • 十分な休息: 質の良い睡眠をとり、心身をリラックスさせる。

【独自視点】髪の痛みの背景にある頭皮異感覚症(スカルプダイセステジア)とは

「髪を触ると痛い」「頭皮がヒリヒリする」「虫が這うような感じがする」といった異常感覚を訴えるにもかかわらず、診察では明らかな皮膚所見や神経学的な異常が見つからない場合があります。このような原因不明の頭皮の不快な感覚は「頭皮異感覚症(Scalp Dysesthesia)」と呼ばれる病態の可能性があります 。

この概念は、日本ではまだ広く認知されていませんが、海外の皮膚科や精神科領域では注目されています 。頭皮異感覚症は、皮膚感覚異常症候群の一種とされ、灼熱感、掻痒感、疼痛などが主な症状です 。多くは精神的なストレス、うつ病、不安障害などを合併していることが報告されており、心因性の要因が大きく関わっていると考えられています 。しかし、一部では頚椎の変性疾患が原因で、首からの神経根の刺激が頭皮の関連痛として現れているケースも報告されており、単なる心の問題として片付けるべきではありません 。

この症状は、患者のQOL(生活の質)を著しく低下させるにもかかわらず、周囲や医療者にさえ理解されにくいという問題があります 。診断は、他の疾患を除外した上で行われる除外診断が基本となります 。治療には、抗うつ薬(SSRIや三環系抗うつ薬)、抗てんかん薬(ガバペンチンやプレガバリン)などが有効であったとする報告があり、心理療法やストレスマネジメントも重要なアプローチです 。原因不明の頭皮の痛みを訴える患者に対しては、頭皮異感覚症の可能性も視野に入れ、精神的な背景や頚椎疾患の有無も含めて多角的に評価する視点が求められます。

頭皮異感覚症に関する詳細な文献レビューです。病因、診断、治療選択肢について専門的に解説されています。

Scalp dysaesthesia and lichen simplex chronicus: diagnostic and therapeutic update with literature review

髪を触るときの痛みを緩和するセルフケアと専門的アプローチ

髪を触るときの頭皮の痛みを管理するには、原因に応じた専門的な治療と、日々のセルフケアを組み合わせることが効果的です。まず、痛みの原因を特定するために適切な医療機関を受診することが最優先です 。

専門的なアプローチ:

  • 薬物療法: 後頭神経痛には消炎鎮痛薬神経ブロック注射、帯状疱疹には抗ウイルス薬、脂漏性皮膚炎には抗真菌薬ステロイド外用薬が処方されます。頭皮異感覚症やストレスが強い場合は、抗うつ薬や抗不安薬が有効なこともあります 。
  • 理学療法: 後頭神経痛の原因が筋肉の緊張にある場合、専門家によるマッサージやストレッチ、電気治療などが症状緩和に役立ちます。
  • 生活習慣指導: 医師やカウンセラーによるストレスマネジメント、睡眠指導、栄養指導なども重要な治療アプローチです。

自分でできるセルフケア:

  • 正しいヘアケア: 刺激の少ないシャンプーを選び、爪を立てずに指の腹で優しく洗うことを心がけましょう。洗浄成分が頭皮に残らないよう、すすぎは十分に行います。
  • 姿勢の改善: デスクワーク中は定期的に休憩を取り、首や肩を回すストレッチを取り入れましょう。スマートフォンの長時間利用も控えめに。
  • 血行促進: ぬるめのお湯でゆっくり入浴する、適度な運動を習慣にするなど、全身の血行を良くすることが頭皮の健康にも繋がります 。
  • バランスの取れた食事: 皮膚や神経の健康を保つビタミンB群、血行を促進するビタミンE、ストレスへの抵抗力を高めるビタミンCなどを意識して摂取しましょう。
  • リラクゼーション: 趣味の時間を作る、深呼吸をする、アロマテラピーを取り入れるなど、自分に合った方法で心身をリラックスさせることが自律神経のバランスを整える助けになります 。

頭皮の痛みは、身体からの重要なサインです 。安易に自己判断せず、症状が続く場合は専門医に相談し、適切な診断と治療を受けることが、症状の改善と重篤な病気の見逃しを防ぐ鍵となります。


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