角膜穿孔とコンタクトレンズ障害の原因と治療法

角膜穿孔とコンタクトレンズの関係

角膜穿孔の主要な原因とリスク要因
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コンタクトレンズ関連感染症

不適切なケアや装用により細菌・アメーバが角膜に侵入

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角膜潰瘍の進行

治療が遅れると潰瘍が深部まで達し穿孔に至る

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緊急治療の必要性

穿孔発生時は迅速な外科的処置が視力保持の鍵

角膜穿孔の病態生理と定義

角膜穿孔とは、角膜が全層にわたって欠損し、眼内容物が流出する重篤な眼科緊急疾患です 。角膜は外側から角膜上皮、Bowman膜、角膜実質、Descemet膜、角膜内皮の5層構造となっており、穿孔は角膜上皮から角膜内皮まで貫通した状態を指します 。この病態では前房が消失し、房水の漏出により眼圧が著しく低下することが特徴的です 。
参考)角膜穿孔
穿孔の原因は多岐にわたりますが、感染性要因(細菌、真菌、アカントアメーバ)、外傷性要因、自己免疫疾患、コンタクトレンズ障害などが主要な病因として挙げられます 。特に現代では、コンタクトレンズの普及に伴い、不適切なレンズケアや装用方法による角膜感染症から穿孔に至る症例が増加傾向にあります 。
参考)https://www.kobayashi-eye.com/lineup/20220921-1071/
角膜穿孔は視力予後に重大な影響を与える疾患であり、迅速な診断と適切な治療介入が求められます 。放置すれば感染の拡大、眼内炎、そして最終的には失明に至る可能性があるため、眼科救急疾患として位置づけられています 。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6951192/

角膜穿孔の主要症状と診断基準

角膜穿孔患者の主要症状として、激烈な眼痛、羞明、流涙、視力低下が挙げられます 。患者は眼を開けることができず、眼瞼痙攣を呈することが多く見られます 。白目の充血(結膜充血・毛様充血)も特徴的で、角膜表面の白濁や混濁も観察されます 。
参考)犬の角膜穿孔について|眼が見えなくなる?治る?獣医師が解説
診断において重要な所見は、角膜の全層欠損による前房の浅化または消失です 。房水の漏出により眼圧が低下し、眼球の張りが失われてしぼんだ状態となります 。細隙灯顕微鏡検査では、穿孔部からの房水漏出や虹彩組織の脱出、前房蓄膿などが確認されることがあります 。
参考)非感染性角膜穿孔に対する多層羊膜移植術の有効性 (臨床眼科 …
穿孔のサイズと部位の評価は治療方針決定に重要であり、直径2mm以下の小穿孔では保存的治療が可能な場合もありますが、それ以上の大きな穿孔では外科的修復が必要となります 。フルオレセイン染色により穿孔部位の詳細な評価を行い、周囲組織の炎症状態も含めて総合的に診断します 。
参考)角膜穿孔への対応 (臨床眼科 77巻11号)

コンタクトレンズ関連角膜穿孔の発症機序

コンタクトレンズ装用による角膜穿孔の発症機序は複雑な病態の連鎖として理解されます 。まず、不適切なレンズケアや汚染されたレンズケースにより、緑膿菌やアカントアメーバなどの病原微生物がレンズ表面に付着します 。これらの病原体がレンズとともに角膜上皮に接触し、微細な上皮欠損部から角膜実質内に侵入することで感染が成立します 。
参考)https://www.acuvue.com/ja-jp/memamori/contact-lenses/306/
特に緑膿菌感染では、菌が産生するプロテアーゼやエラスターゼなどの酵素により角膜実質の急速な融解が起こります 。この組織融解過程は極めて急激で、数日のうちに角膜全層に及ぶ壊死性炎症を引き起こし、最終的に穿孔に至ります 。アカントアメーバ角膜炎においても、アメーバが角膜実質深層まで侵入し、慢性的な炎症により角膜の菲薄化と穿孔を来すことがあります 。
参考)コンタクトレンズの痛みや違和感|大阪市住吉区の竹安眼科医院
コンタクトレンズ装用による慢性的な酸素不足も穿孔リスクを高める要因です 。角膜上皮の代謝障害により上皮バリア機能が低下し、病原体の侵入を容易にします 。また、レンズによる機械的刺激や乾燥により角膜表面に微細な傷が生じ、これが感染の入り口となることも重要な病因の一つです 。
参考)コンタクトレンズによる目の障害の原因、実態、具体例

角膜穿孔に対する外科的治療法

角膜穿孔の外科的治療は穿孔のサイズ、部位、原因疾患により治療選択が決定されます 。小径穿孔(2mm以下)に対しては、まず保存的治療としてソフトコンタクトレンズによる被覆や組織接着剤(フィブリン糊)の使用が試みられます 。これらの方法により穿孔部の一時的な閉鎖を図り、自然治癒を促進することが可能です 。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10276684/
中等度から大型の穿孔に対しては、羊膜移植術が広く行われています 。多層羊膜移植法では、まず穿孔部周辺の壊死組織を除去し、細切した羊膜を穿孔部に充填します 。その上から羊膜を被覆し、縫合により固定することで穿孔の閉鎖を図ります 。羊膜は抗炎症作用と上皮化促進作用を有し、感染の制御と創傷治癒の促進に有効です 。
参考)羊膜移植術ガイドライン|京都府立医科大学組織バンク
重篤な穿孔や羊膜移植で対応困難な症例では、角膜移植術が必要となります 。部分層角膜移植(パッチグラフト)や全層角膜移植(全層角膜移植術)により、健常なドナー角膜で穿孔部を修復します 。角膜移植は視機能の回復も期待できる治療法ですが、移植片拒絶反応や感染のリスクも伴うため、慎重な術後管理が必要です 。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/64baa099a82561a3ad5e829629d20fa70cd0650a

角膜穿孔の予防対策とコンタクトレンズ適正使用法

コンタクトレンズ関連角膜穿孔の予防には、適切なレンズケアと装用方法の遵守が最も重要です 。まず、レンズの取り扱い前には必ず石鹸で手洗いを行い、清潔な手でレンズを扱うことが基本となります 。レンズの洗浄には専用のケア用品のみを使用し、水道水での洗浄は絶対に避けるべきです 。
参考)角膜炎の原因や症状、主な治療方法と予防方法
レンズケースの管理も極めて重要で、使用後は毎回新しいケア用品で洗浄し、自然乾燥させる必要があります 。ケースは2-3ヶ月ごとに新品と交換し、古いケースの継続使用は避けるべきです 。また、使用済みのケア用品の再利用は厳禁であり、毎日新しい消毒液を使用することが求められます 。
参考)https://www.bausch.co.jp/-/m/BL/Japan/Files/Package%20Inserts/ff_leaf201701.pdf
装用時間の管理と定期検査の重要性も強調すべき点です 。連続装用の許可がない限り就寝時のレンズ装用は避け、装用中に痛みや充血が生じた場合は直ちにレンズを外し、眼科医の診察を受けることが必要です 。定期的な眼科検査により、角膜の状態を客観的に評価し、早期の異常発見に努めることで、重篤な合併症の発生を予防できます 。
参考)緑膿菌