拡張期血圧が高い症状と原因
拡張期血圧が高いときに現れる症状
拡張期血圧が高い状態では、多くの場合は無症状で経過しますが、血圧が急激に上昇したときや高値になると様々な症状が現れることがあります。代表的な症状として、後頭部を中心とした頭痛が挙げられ、特に早朝に多く見られます。この頭痛は鈍い圧迫感や拍動性を伴うことが特徴です。
めまいやふらつきも拡張期血圧上昇時によく見られる症状です。血圧の急上昇や変動によって脳血流が不安定になることが原因とされています。また、動悸や胸の圧迫感を感じることもあり、血圧が高いと心臓の酸素需要が増えるため、狭心症のような症状が出ることがあります。
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その他の症状として、吐き気、耳鳴り、視力異常、手足のしびれなどが報告されています。視野のかすみやチラつきは、網膜出血や視神経の浮腫によるもので、長期の高血圧で高血圧性網膜症を引き起こすことがあります。肩こりや不安感といった症状も、自律神経の不調や血管の緊張によって現れることがあります。
拡張期血圧の正常値と基準値
拡張期血圧の正常値を理解することは、自身の血圧状態を把握する上で重要です。日本高血圧学会の診断基準によると、診察室での拡張期血圧が90mmHg以上の場合を高血圧としています。正常血圧は拡張期血圧が80mmHg未満で、80~89mmHgは高値血圧に分類されます。
参考)血圧 正常値
家庭血圧の基準値は診察室血圧よりも低く設定されており、家庭での拡張期血圧が85mmHg以上で高血圧と診断されます。正常血圧は75mmHg未満、正常高値血圧は75mmHg未満、高値血圧は75~84mmHgとなっています。
年代別の血圧平均値を見ると、30代では男性が79.1mmHg、女性が71.5mmHg、40代では男性が83.9mmHg、女性が76.0mmHg、50代では男性が86.4mmHg、女性が79.0mmHgとなっており、加齢とともに上昇する傾向があります。最近の研究では、収縮期血圧120mmHg未満、拡張期血圧80mmHg未満までコントロールする方が良いとされています。
拡張期血圧が上昇する主な原因
拡張期血圧が高くなる主な原因は、末梢血管の抵抗増加と動脈硬化の進行です。心臓から遠い細い血管(末梢血管)が動脈硬化により硬くなると、血液が流れにくくなり拡張期血圧が上昇します。拡張期血圧のみが高い場合は、末梢血管の動脈硬化はあるが太い血管の弾力性は保たれている状態が考えられます。
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生活習慣要因として、肥満、運動不足、喫煙、大量飲酒などが拡張期血圧上昇に関与しています。これらの要因は特に60歳までの若年・中年層に多く見られます。高ガンマ・グロブリン血症や血小板減少症を伴うケースでは、原因不明の肺高血圧症との関連も報告されています。
参考)302 Found
塩分の過剰摂取も拡張期血圧上昇の重要な要因です。日本人の食生活は塩分が多くなりやすい傾向があり、注意が必要です。また、若年者では二次性高血圧が原因となることもあり、35歳以下で収縮期血圧140mmHg以上、拡張期血圧90mmHg以上を示す場合を若年性高血圧と定義しています。
拡張期血圧と動脈硬化の関係
拡張期血圧と動脈硬化の関係は複雑で、動脈硬化の進行段階によって拡張期血圧の変化パターンが異なります。動脈硬化の初期段階では、大動脈の弾力性が低下し拡張期血圧は上昇します。しかし、末梢血管まで動脈硬化が及ぶと、血管が硬くなって血流が滞りやすくなり、拡張期血圧は変動します。
参考)https://kango-oshigoto.jp/hatenurse/article/9653/
心臓から連続する太い血管は、高い血圧にも耐えられるようにクッションのように弾力性に富んでいます。収縮期には広がり、拡張期にはゴムのように元に戻ろうとする圧力により、血液をさらに末梢に送り出します。動脈硬化が進行した状態では、大動脈の伸展性が小さくなり、ここに貯留される血液量が少なくなるため、収縮期血圧は高く拡張期血圧は低くなります。
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拡張期血圧は末梢血管抵抗や血管の弾性を反映しており、末梢血管が収縮して抵抗が高くなると拡張期血圧は上昇します。血管全体の弾性を反映し、血管が柔軟性を失うと血液の流れがスムーズでなくなり拡張期血圧に影響を与えます。収縮期血圧と拡張期血圧の差(脈圧)が小さいと動脈硬化の進展が軽度という報告があり、心血管系の臓器障害が発生するリスクは低いと考えられています。
拡張期血圧を下げる治療と生活習慣の改善
拡張期血圧を下げるための特別な治療法はなく、通常の高血圧治療と同じく生活習慣の改善と適切な薬物治療が重要です。生活習慣の改善について、1日の食塩摂取量を6g未満にすることが推奨されています。カリウムを多く含む野菜や果物を積極的に摂取し、飽和脂肪酸やコレステロールの摂取を控えることが効果的です。
運動療法として、有酸素運動を毎日30分、または週180分以上行うことが推奨されています。ウォーキングやジョギング、水泳などを週に合計150分ほど行うと良いでしょう。適正体重(BMI25kg/m²未満)を維持することも重要で、肥満のある方は減量が必要です。
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その他の生活習慣として、睡眠時間の確保(6~7時間以上)、カフェインの取りすぎに注意、禁煙・ストレス管理が推奨されています。1日あたりの飲酒量を、男性は純エタノール量換算で20~30mL以下に、女性は10~20mL以下に抑えることも大切です。薬物療法を行う場合は、Ca拮抗薬、ARB、ACE阻害薬、利尿薬、β遮断薬などの第一選択薬を少量、単剤で開始します。
拡張期血圧の食事改善に効果的な栄養素
血圧を下げるために効果的な食事では、特定の栄養素を積極的に摂取することが重要です。カリウムは塩分を外へ追い出す働きがあり、野菜や果物に多く含まれています。雑穀ご飯、海藻類、きのこ類、ごぼうなどの根菜には食物繊維が多く含まれ、食物繊維はナトリウム(食塩)を吸着し体外へ排出する働きがあります。
DASH食と呼ばれる食事法は、血圧を上げないための効果的な食事として注目されています。野菜、果物、ナッツ類、豆類、魚類、低脂肪乳製品、穀類(全粒粉のパン)などを中心とした複合食で、低脂肪・低コレステロールが特徴です。アメリカの調査では、DASH食を実践した人は収縮期血圧が11.4mmHg、拡張期血圧が5.5mmHg下がったと報告されています。
マグネシウムは血管を広げる効果があり、カルシウムと一緒に摂取することで相乗効果が期待できます。魚類を積極的に摂取し、魚油に含まれる不飽和脂肪酸による降圧効果も取り入れることが推奨されています。オリーブオイルや多価不飽和脂肪酸(植物や魚の油に多く含まれる成分)が豊富な食事で、より有効な降圧効果が得られることが報告されています。
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国立循環器病研究センター|高血圧と動脈硬化の関係について詳しい情報
日本心臓財団|下の血圧だけが高い高血圧の医学的解説
CureApp|血圧を下げる方法と生活習慣の具体的なアドバイス