脚気の症状と診断
脚気の初期症状と進行パターン
脚気はビタミンB1(チアミン)欠乏により引き起こされる疾患で、初期には食欲不振や全身倦怠感が現れますが、これらは非特異的な症状のため見逃されやすいんです。特に下半身に倦怠感が強く出現し、次第に足のしびれやむくみ、動悸、息切れ、感覚の麻痺といった特徴的な症状が出てきます。
進行すると手足に力が入らなくなり寝たきり状態となり、放置すると心不全が悪化して死に至ることもあるため、早期発見が極めて重要なんです。脚気になると末梢神経や中枢神経が侵され、足元がおぼつかなくなるほか、重症化すると心不全を起こします。
参考)脚気の発生:農林水産省
脚気の症状・原因・予防法の詳細情報では、ビタミンB1欠乏から起こる脚気の詳しい症状と治療法が解説されています。
脚気の乾性型と湿性型の違いと特徴
脚気には主に乾性脚気と湿性脚気の2つの型があり、それぞれ異なる臨床像を呈します。乾性脚気は末梢神経障害を中心とした型で、しびれ、筋力低下、歩行困難が主症状となり、多発神経炎を主体として表在知覚神経障害から腱反射低下などを来たします。
一方、湿性脚気は心臓に影響が出て動悸、息切れ、浮腫などの心不全症状を呈し、末梢の動脈が拡張して血管抵抗の低下から高拍出性心不全を起こして浮腫が生じます。湿性脚気では循環不良や組織内の体液蓄積が特徴的で、主に心血管系に影響を及ぼします。
参考)脚気の治療と予防
また、乾性脚気に分類されるウェルニッケ脳症やコルサコフ症候群といった中枢神経症状も重要な合併症として認識する必要があります。
脚気の診断に必要な検査と膝蓋腱反射
脚気の診断において、膝蓋腱反射は古くから重要な神経学的検査とされています。通常、人の膝の下を叩くと足がはね上がりますが(膝蓋腱反射)、反応しない場合は脚気の疑いがあるんです。膝蓋腱を弛緩させた状態で叩くと、大腿四頭筋が収縮し膝関節が伸展する膝蓋腱反射は、末梢神経障害の有無を見る検査です。
血清ビタミンB1を測定することはできますが、感度と特異度は不明で、検査が正常でもビタミンB1欠乏症の可能性があります。したがって、1~2週間にわたる食事摂取量の低下、意識障害や運動失調、眼球運動障害の症状から臨床的に診断することが大切なんです。
参考)「ビタミン欠乏」の知識・注意点・最新情報【訪問看護師の疾患学…
脚気を疑った場合は血中ビタミンB1値の測定結果を待たずに診断的治療としてビタミンB1の投与を開始することが推奨されており、特に高齢者の原因不明の循環不全や左室収縮能の保たれた心不全では脚気心の可能性を念頭に置く必要があります。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/102/7/102_1790/_pdf
ビタミンB1が著効した衝心脚気及びWernicke脳症の症例報告には、実際の診断と治療の経過が詳しく記載されています。
脚気の原因とリスク要因:現代における発症メカニズム
脚気の原因は体内のビタミンB1不足であり、人の体はビタミンを自力で合成することはほとんどできないため、食べ物から摂取して補う必要があります。現代では糖質の過剰摂取、インスタント食品を常食としている人や、ビタミン吸収に障害のある胃切除後の患者、ビタミン喪失量の多い血液透析中の患者などに発症のリスクがあるんです。
特に注目すべきは、アルコールを大量に摂取し続けるとビタミンB1を多く消費するため、脚気を発症する要因となり得る点です。昭和48年から53年にかけて行われた調査では、脚気の発症は若年者に多く、その誘因は糖質過剰摂取とビタミンB1摂取不足であり、まさに過食時代の偏食による微量栄養素不足であったことが明らかになりました。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu1962/36/10/36_10_670/_pdf
また、経中心静脈高カロリー輸液(TPN)施行時にビタミンB1剤が投与されていない場合や、糖質過剰投与によるB1の相対的欠乏も現代特有のリスク要因として認識されています。近年でも偏食やアルコール依存症、過度なダイエット、消化器疾患により再び注目されているんです。
脚気の治療と予防:ビタミンB1補充の実践的アプローチ
脚気の治療はビタミンB1の大量投与が基本となります。乾性脚気では、ブドウ糖液を投与する前にチアミン500mgを1日3回、3日間点滴し、その後250mgを1日1回、5日間点滴、さらに100mgを1日1回、経口投与(症状が安定するまで)という治療プロトコルが推奨されています。
湿性脚気では、チアミン200mgを1日3回、点滴(症状が安定するまで)という治療が行われます。実際の症例報告では、ビタミンB1投与開始後急速に血圧の上昇と尿量の増加を認め、アニオンギャップも正常化するなど、劇的な改善が得られることが報告されているんです。
予防面では、ビタミンB1を豊富に含む食品の摂取が重要で、豚肉、豆類、ゴマなどを意識して摂取することが推奨されます。特に主食を白米から玄米に替えるだけで、約5倍ものビタミンB1を摂ることができるんです。
ビタミンB1の働きと1日の摂取量では、具体的な食品とその含有量が詳しく解説されています。
食事改善としては、ビタミンB1は水に溶けやすく熱に弱い性質があるため、短時間で調理することがポイントです。ニンニクやネギなどに含まれるアリシンと結合すると熱にも強くなるため、加熱調理はニンニクと一緒にするとビタミンB1を多く摂取できます。
参考)12月13日は「ビタミンの日」脚気という病気のこと知っていま…