かかりつけ薬剤師届出と条件業務内容の実務

かかりつけ薬剤師届出の基本要件と施設基準

かかりつけ薬剤師届出を行うには、まず薬剤師個人と薬局の双方が満たすべき要件を整理する必要があります。

代表的なものとして、保険薬剤師として3年以上の薬局勤務経験、同一薬局での1年以上の継続勤務、薬剤師認定制度認証機構が認証する研修認定の取得などが挙げられます。

施設基準としては、「かかりつけ薬剤師指導料及びかかりつけ薬剤師包括管理料の施設基準に係る届出書添付書類(様式90)」と「特掲診療料の施設基準に係る届出書(別添2)」を、管轄の地方厚生局または都道府県の担当部署へ提出する必要があります。

参考)https://www.jplearning.jp/blog/kakaritsuke.html

短時間勤務の薬剤師のみでかかりつけ薬剤師届出を行うことは認められておらず、同一薬局内に週32時間以上勤務する薬剤師がいることが条件とされている点も注意が必要です。

参考)かかりつけ薬剤師(薬局)とは?役割や条件・業務内容を解説

また、平成30年の見直しにより「当該薬局に6か月以上在籍」から「1年以上在籍」に要件が強化された経緯があり、地域包括ケアの中で顔の見える関係を重視する政策意図が反映されています。

参考)かかりつけ薬剤師・薬局とは?算定要件・条件や業務内容について…

この変更は人事異動の多いチェーン薬局ではハードルとなる一方で、地域密着の中小薬局にとっては強みを発揮しやすい制度設計ともいえます。

かかりつけ薬剤師届出の手続きフローと書類の実務

かかりつけ薬剤師届出の実務フローは、①薬局内での要件確認、②必要書類の作成、③管轄への提出、④患者説明・同意取得体制の整備という流れで整理すると把握しやすくなります。

書類の中心となる様式90では、薬剤師の勤務実績や研修歴、地域活動への参画状況など、単なる資格の有無に留まらない情報を求められるため、日頃からの記録管理が重要です。

届出が受理された後は、薬局内で「かかりつけ薬剤師」として対応できる薬剤師を患者へ周知し、お薬手帳への氏名・勤務先・連絡先の記載を徹底することが求められます。

ここで意外に手間取るのが、シフト作成との整合性で、患者の希望と薬剤師の勤務パターンをどの程度までマッチさせるかは、薬局ごとの運用ルールを定めておかないと現場で混乱しやすいポイントです。

届出後は、かかりつけ薬剤師指導料・包括管理料の算定だけでなく、他の診療報酬や介護報酬との関係性も考慮しながら、レセプトコメントや薬歴記載のテンプレートを整えることが、監査対応の観点からも有用です。

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特に在宅医療や地域連携薬局の認定との組み合わせを意識すると、同じ業務でも評価できる点数が変わるため、管理者レベルでの設計が必要になります。

かかりつけ薬剤師届出と服薬情報等提供料・地域連携の実務

かかりつけ薬剤師届出を行った薬局では、服薬情報等提供料1・2・3の算定機会が増える傾向にあり、制度を理解しておくことは医療機関との連携強化にも直結します。

服薬情報等提供料1は、保険医療機関の求めに応じて、患者の同意を得た上で、服用薬などの情報を文書で提供した場合に月1回まで算定でき、2024年度改定では歯科医師への情報提供も対象に含まれています。

服薬情報等提供料2・3は、薬剤師側が必要性を認めた場合や、介護支援専門員への情報提供など、地域包括ケアの文脈で活用しやすい仕組みに整理されており、かかりつけ薬剤師としての役割を可視化する点数ともいえます。

参考)服薬情報等提供料1・2・3の算定要件まとめ【令和6年(202…

地域連携薬局では、医療機関への報告実績として月平均30回以上の情報提供が求められ、服薬情報等提供料による報告はこの実績にもカウントできるため、届出と運用設計を同時に考えることが効率的です。

また、入院前患者の服用薬確認や退院時カンファレンスでの情報共有など、病院薬剤師との連携の中で服薬情報等提供料を活用するケースも増えており、かかりつけ薬剤師届出によって「地域の情報ハブ」として期待される場面は今後さらに広がると予測されます。

参考)https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/001392585.pdf

こうした実務を円滑にするためには、標準化された服薬情報提供書のフォーマットを用意し、電子処方箋・電子カルテとの連携も視野に入れた情報基盤づくりが重要です。

かかりつけ薬剤師届出と改正薬機法・薬局情報公表制度のインパクト

改正薬機法では、薬剤師に対し「調剤時のみならず服用期間を通じた服薬状況の把握と薬学的管理」が義務づけられ、かかりつけ薬剤師届出はその義務を具体化する手段の一つとして位置づけられています。

同時に、薬局の運営状況や提供サービスを都道府県に報告し、「医療情報ネット」等を通じて住民に公表する仕組みが整備され、かかりつけ薬剤師・地域連携薬局・健康サポート薬局などの機能が見える化されつつあります。

この公表制度により、患者は薬局選択の際に「かかりつけ薬剤師が在籍しているか」「在宅対応や24時間相談体制の有無」などを比較しやすくなり、届出をしていない薬局との差が徐々に表面化していくと考えられます。

一方で、情報が公開されるということは、勤務体制の不備や連携実績の不足も可視化されることを意味し、数値指標だけにとらわれず、地域特性に合った機能発揮の仕方を説明できるストーリー作りが求められます。

意外な影響として、薬局間での人材獲得競争にも変化が生じており、「かかりつけ薬剤師として届出がしやすい勤務環境」「地域連携や在宅の経験を積めるフィールド」をアピールする求人が増えているとの指摘もあります。

医療従事者にとっては、単なる点数算定のための届出ではなく、キャリア形成や地域医療におけるポジショニング戦略として、かかりつけ薬剤師届出を捉え直す視点が重要になってきています。

かかりつけ薬剤師届出と患者への説明・同意取得の工夫(独自視点)

かかりつけ薬剤師届出を生かすかどうかは、患者への説明と同意取得の質に大きく左右されますが、多くの現場では「算定のための形式的説明」にとどまりがちです。

患者は「なぜ特定の薬剤師を選ぶ必要があるのか」「自由に薬局を変えてはいけないのか」といった疑問を抱きやすく、ここに十分答えられないと形だけの同意書になってしまいます。

実務上有効なのは、単に制度概要を説明するだけでなく、具体的なメリットを患者の生活場面に落とし込んで伝えることです。例えば、複数医療機関から処方を受けている高齢患者であれば、「お薬を一本化して管理するサポート」「残薬調整と主治医へのフィードバック」「夜間・休日の相談窓口としての役割」などを、実例とともに示すことが有用です。

参考)かかりつけ薬剤師の勧め方!患者さまへの声かけ、同意の取り方【…

ある調査では、かかりつけ薬剤師を選任した患者の多くが「自分のことをよく知ってくれている安心感」や「説明の一貫性」を評価しており、服薬アドヒアランスの向上にも寄与していると報告されています。

かかりつけ薬剤師の満足度に関する報告

また、意外と見落とされるのが「患者側がかかりつけ薬剤師を変更したい場合の手続き」の説明です。変更可能であることを最初に伝えておくことで、患者は心理的な拘束感を持たずに同意しやすくなり、結果的に信頼関係の構築にもつながります。

薬局としては、同意書に変更・撤回の手順を明記し、お薬手帳や待合室掲示を通じて繰り返し案内することで、制度への納得感を高める工夫が求められます。

かかりつけ薬剤師届出後の業務設計とチーム医療での活かし方

かかりつけ薬剤師届出を行った後は、薬剤服用歴の記載内容を「誰が見ても経時的変化と薬学的評価がわかる」レベルに標準化することが、チーム医療の中で信頼を得る鍵となります。

具体的には、処方意図の推定、残薬状況、服薬アドヒアランス、患者の価値観・生活背景などを構造化して記録し、医師や看護師、ケアマネジャーへの情報提供時には、そのまま引用できるようなフォーマットにしておくと、服薬情報等提供料の算定実務もスムーズです。

在宅医療の現場では、かかりつけ薬剤師が訪問看護ステーションや地域包括支援センターとの「ハブ」となり、薬物療法の安全性だけでなく、ポリファーマシー是正や終末期医療における薬剤調整など、より踏み込んだ介入が期待されます。

こうした業務は診療報酬や介護報酬での評価に直結するだけでなく、地域連携薬局や専門医療機関連携薬局の認定取得にも波及しうるため、薬局経営の観点からも戦略的に位置づける価値があります。

さらに、電子処方箋やオンライン服薬指導の普及により、かかりつけ薬剤師の役割は「物の流通管理」から「データを活用した薬学的マネジメント」へとシフトしつつあります。

医療従事者としては、届出の要件を満たすだけでなく、デジタルツールを用いたモニタリングやリスク予測、服薬情報の二次利用(研究や質改善活動への活用)まで視野に入れたスキルアップが、今後の差別化要因になっていくでしょう。

参考)服薬情報等提供料とは?1・2・3の算定要件・タイミングや算定…

かかりつけ薬剤師制度の概要と算定要件全般の整理に役立つ厚労省資料

医薬品医療機器等法等の改正について(厚生労働省資料)

服薬情報等提供料1・2・3の最新算定要件の詳細解説に関する参考リンク

服薬情報等提供料とは?1・2・3の算定要件・タイミング