解離性眼振と核間性眼筋麻痺
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解離性眼振の定義と眼振の特徴
解離性眼振(dissociated nystagmus)は、水平注視時に両眼で眼振の出方(振幅や目立ち方)が非対称となり、典型的には外転眼の眼振が目立つ所見として臨床では扱われます。
核間性眼筋麻痺(INO)では「病側眼の内転障害」と「健側眼の外転時に目立つ眼振」がセットで観察され、両眼の眼振の大きさに“解離”が見えるため解離性眼振と呼ばれます。
ここで重要なのは、外転眼に見える眼振が単なる末梢性前庭眼振の延長ではなく、水平共同運動の破綻(脳幹ネットワークの左右差)に付随する所見として理解する点です。
解離性眼振の原因とMLF
INOの基本病態は内側縦束(MLF)の障害で、MLFは外転神経核と動眼神経核(内直筋)を連絡し、両眼の水平共同運動を同期させる線維束です。
MLF障害があると、水平注視の指令が内転眼へ伝わりにくくなるため内転障害が生じ、結果として外転眼側に代償的に目立つ眼振(解離性眼振)が観察されます。
原因疾患としては、脳血管障害と脱髄性疾患が代表で、高齢者では脳血管障害、若年者では多発性硬化症などの脱髄が重要、という臨床的な当たりが付けられます。
解離性眼振の診断と神経診察
ベッドサイドでは、まず「水平注視で内転できない眼があるか」「外転側で注視方向性に目立つ眼振が出るか」を同時に観察し、INOの形(=解離性眼振を含むパターン)に当てはまるか確認します。
鑑別の要点として、INOではしばしば“輻輳(寄り目)が保たれやすい”と説明され、水平注視経路と輻輳経路が異なることが臨床的な判断材料になります。
一方で、急性外眼筋麻痺の文脈では「両側性の内側縦束症候群でも輻輳麻痺を伴いうる」ことが指摘されており、「輻輳が保たれる=INO」と単純化しすぎない姿勢が安全です。
解離性眼振とone-and-a-half
MLF障害に加えて同側のPPRF(傍正中橋網様体)ないし外転神経核まで巻き込むと、one-and-a-half syndrome(患側への共同注視麻痺+患側内転障害)が生じ、残った健側眼の外転で眼振が目立つなど、より“脳幹局在”を強く示す所見になります。
このとき臨床像は「片側への注視が両眼ともできない」要素が混ざるため、単純なINO(核間性眼筋麻痺)よりも診察所見が派手になり、複視の訴えも強くなりやすいと整理できます。
また、めまい診療の枠組みでは、解離性眼振(核間性眼筋麻痺)を含む脳幹・小脳系の眼球運動異常は“中枢性を強く示唆する所見”として列挙され、危険なめまいの除外に直結します。
解離性眼振の独自視点:MRI陰性と病巣推定
臨床で意外に落とし穴になるのは、「所見は脳幹局在っぽいのにMRIで病変が描出されない」場面で、MLF症候群でも微小梗塞などでは画像で原因を提示できない場合があるとされています。
この“画像陰性の脳幹障害”を前提にすると、解離性眼振を含む眼球運動所見は、画像所見より先に中枢病変を疑うトリガーとして価値があり、救急・病棟での再評価(時間を置いた再撮像を含む)につながります。
さらに脳幹では拡散強調画像の異常出現が遅れることがあるとされるため、初回画像で安心せず、神経所見の質(再現性・一貫性)を軸にマネジメントを組む視点が実装的です。
中枢性めまい・眼球運動障害の見方(解離性眼振を含む)
日本神経治療学会「標準的神経治療:めまい」PDF(中枢性眼振の例として解離性眼振が挙げられ、画像検査の考え方も記載)
核間性眼筋麻痺(MLF障害)の概説