解離性大動脈瘤の症状と初期診断

解離性大動脈瘤の症状

解離性大動脈瘤の主要症状

突然の激烈な疼痛

胸部や背部に「裂けるような痛み」が走り、痛みの移動を伴うことが特徴的です

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意識障害・神経症状

脳血流障害により失神や片麻痺、視力障害などの脳梗塞様症状が出現します

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循環動態の異常

血圧左右差、ショック状態、心タンポナーデなど生命を脅かす合併症を引き起こします

解離性大動脈瘤の典型的な疼痛症状

解離性大動脈瘤の最も特徴的な症状は、何の前触れもなく突然発症する激烈な疼痛なんです。患者さんは「過去に経験したことのないような痛み」「杭が刺さるような痛み」「バットで殴られたような痛み」と表現することが多く、その痛みの程度は非常に強いものですよ。

参考)大動脈解離・解離性大動脈瘤


疼痛の部位は解離が発生した場所によって異なり、胸部、背部、腰部などに出現します。大動脈が裂けていくにしたがって痛みも移動するという「移動する激烈な胸背部痛」が急性大動脈解離の典型的な症状とされています。この痛みの移動パターンは、内膜の裂け目が進展していく過程を反映しているんですね。

参考)急性大動脈解離|社会医療法人三栄会 ツカザキ病院


興味深いことに、裂けるのが一時的に治まると痛みが止まることもあるという報告があります。また、非常に稀ではありますが、痛みなどの症状が起こらない無症候性の症例も存在するため、診断には注意が必要です。​

解離性大動脈瘤による神経学的症状

解離性大動脈瘤では、血流障害によって多彩な神経学的症状が出現することがあります。脳に血液を送る血管が解離で血流障害を起こした場合、「脳卒中」による意識障害や片側の麻痺、視力障害などの症状が現れるんです。

参考)解離性大動脈瘤


実際の臨床現場では、脳梗塞を疑われて脳神経科へ搬送されてから大動脈解離であることが分かるケースがよくあります。失神などの意識不明状態となって病院へ搬送され、検査の結果、急性大動脈解離と判明した方は10〜15%程度いるとされています。​
左半身麻痺を主症状として発症した解離性大動脈瘤の症例も報告されており、脳梗塞症状が前面に現れた解離性大動脈瘤の診断には高度な鑑別診断能力が求められますよ。血流不足による脳への影響で失神や意識低下が発生することもあるため、循環器疾患と神経疾患の両面から評価することが重要なんです。

参考)https://www.semanticscholar.org/paper/210d82e038c3d2297a1eb39e1cb0ebf090eafaf8

解離性大動脈瘤の循環動態異常と合併症

解離性大動脈瘤では、循環動態に関連した重篤な症状や合併症が出現します。血管の解離により左右の腕で血圧に大きな差が生じることがあり、これは診断の重要な手がかりとなるんです。

参考)急性大動脈解離について


上行大動脈に解離が及ぶStanford A型では、1時間に1%ずつ死亡率が上昇すると言われており、48時間以内におよそ半分の患者さんが亡くなることになります。大動脈基部で解離が起こると、大動脈弁閉鎖不全症となり、呼吸困難や急性心不全が起こるんですよ。​
心タンポナーデは特に危険な合併症で、大動脈が破裂して心嚢内に少量の出血でもそれが心臓の周りに溜まってしまうと、心臓の動きが制限されてしまい突然死の原因となります。また、偽腔が冠動脈を塞ぐと急性心筋梗塞を発症し、カテーテル治療を開始してから大動脈解離と分かることもあるため、鑑別診断には十分な注意が必要です。

参考)大動脈解離 – 06. 心臓と血管の病気 – MSDマニュア…

解離性大動脈瘤の臓器虚血症状

大動脈解離の範囲が広がると、大動脈から各臓器に栄養を送っている枝分かれした動脈が圧迫されてふさがってしまうことがあります。このような血流障害による合併症は、患者の生命予後に大きく影響するため、早期発見が極めて重要なんです。​
腎臓につながる動脈が遮断されると腎不全が発症し、腸管を栄養する上腸間膜動脈が影響を受けると腹部内臓虚血による激しい腹痛(abdominal angina)を来すこともあります。また、脊髄につながる動脈の遮断により、ピリピリ感や運動麻痺などの神経障害が出現することもあるんですよ。

参考)302 Found


下肢動脈閉塞症状を初発とした解離性大動脈瘤DeBakey I型の症例も報告されており、手や足の痛みで発症することもあります。さらに、右心不全症状を呈した症例も存在し、解離の進展範囲や偽腔による圧迫部位によって実に多彩な臨床像を呈することが特徴的です。

参考)https://www.semanticscholar.org/paper/d871d7d4ee53b243b4ebe24b29d6ff2fbe47695a

解離性大動脈瘤の診断における症状評価の重要性

解離性大動脈瘤の診断において、症状の正確な評価は極めて重要です。しかし、その症状はさまざまで診断は難しいものなんですよ。呼吸困難や息切れが心臓や肺の血流の影響を受けることで発生したり、突然の呼吸困難感を初発症状とした解離性胸部大動脈瘤の症例も報告されています。

参考)大動脈解離|つくば心臓血管内科 メイクリニック|茨城県つくば…


自覚症状に乏しい解離性大動脈瘤も存在し、Marfan症候群の患者においてStanford分類A型の解離性大動脈瘤が発見された症例では、症状が前面に出ないため診断が遅れるリスクがあります。このような非典型的な症例では、画像診断による早期発見が生命予後を改善する鍵となるんです。

参考)https://www.semanticscholar.org/paper/974fdbe984d024da5b5c189645e6a4c4449a35b0


医療従事者は、通常の看護業務の中で危険な状況をいち早く判断し、適切にドクターコールすることが求められます。解離の進行具合により症状が急速に悪化するため、継続的なモニタリングと迅速な対応が必要不可欠ですよ。

参考)急性大動脈解離患者の看護|ICU における循環器内科患者の看…


国立循環器病研究センター「大動脈瘤と大動脈解離」では、大動脈解離の症状について詳しい情報が提供されています。循環器専門施設による権威ある情報源として参考になりますよ。
日本血管外科学会「解離性大動脈瘤(大動脈解離)って?」は、血管外科専門医による解離性大動脈瘤の解説ページです。症状から診断、治療まで網羅的に説明されています。