花粉症目薬市販コンタクトしたまま使える成分と防腐剤の比較

花粉症目薬市販コンタクトしたままの選び方
👁️

防腐剤の吸着リスク

ベンザルコニウム塩化物はソフトレンズに吸着し角膜障害の原因となるため不可

🧪

有効成分の選択

クロルフェニラミンマレイン酸塩などレンズ透過性と安全性が確認された成分を選ぶ

🛡️

装着液との併用

高分子ポリマーを含む装着液で抗原の付着を物理的に阻害し症状を緩和する

花粉症の目薬を市販でコンタクトしたまま使う

[防腐剤]の種類と[ソフトコンタクト]への吸着リスクに関する薬理学的考察

医療従事者が患者から「コンタクトをしたまま使える市販の花粉症目薬」について相談を受けた際、最も留意すべき点は有効成分の薬効よりも、添加剤である防腐剤(保存剤)の組成です。一般的に、市販の点眼薬に広く使用されているベンザルコニウム塩化物は、強力な抗菌作用を持つ一方で、角膜上皮障害を引き起こす細胞毒性が報告されています。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8277985/

特にソフトコンタクトレンズ(SCL)装用下での使用が禁忌とされる最大の理由は、SCLの素材が持つ多孔質構造と親水性にあります。ベンザルコニウム塩化物はカチオン性界面活性剤であり、多くのSCL(特にFDA分類グループIVのような高含水・イオン性レンズ)に対して高い吸着性を示します。レンズ内に防腐剤が濃縮・蓄積されることで、角膜上皮細胞が長時間高濃度の防腐剤に曝露されることになり、点状表層角膜炎(SPK)やレンズの変形、混濁を引き起こすリスクが飛躍的に高まります。

参考)市販の花粉・アレルギー用目薬のおすすめ人気ランキング【コンタ…

一方で、「コンタクト対応」を謳う市販薬(例:ロートアルガードコンタクトaなど)では、ンザルコニウム塩化物を配合せず、レンズへの吸着性が低い防腐剤を使用するか、あるいは防腐剤フリーの製剤設計を採用しています。例えば、ソルビン酸カリウムトロメタモール、ホウ酸などが代替として用いられますが、これらはSCLへの吸着や蓄積が比較的少ないとされています。医療従事者としては、パッケージの「コンタクト対応」の表示を確認するだけでなく、添付文書の添加物欄を確認し、ベンザルコニウム塩化物が含まれていないことを裏付けとして指導することが求められます。また、防腐剤フリー製剤であっても、開封後の使用期限(多くは10日〜1ヶ月)が短く設定されている場合があるため、衛生管理指導も併せて行う必要があります。

参考)花粉などによる目の症状に効く目薬を紹介|コンタクトをしたまま…

[成分]比較:抗ヒスタミン薬と抗炎症剤の[市販]における配合トレンド

市販の「コンタクトしたまま使える」花粉症目薬に配合される有効成分は、医療用医薬品と比較して限定的です。主な配合成分として挙げられるのは、クロルフェニラミンマレイン酸塩(抗ヒスタミン成分)とグリチルリチン酸二カリウム(抗炎症成分)の組み合わせです。

参考)コンタクト使用時におすすめの花粉症用目薬5選!選び方や効果的…

クロルフェニラミンマレイン酸塩は、H1受容体遮断薬として即効性のある止痒効果を示しますが、医療用で主流のケトチフェンフマル酸塩やオロパタジン塩酸塩と比較すると、肥満細胞からのケミカルメディエーター遊離抑制作用(抗アレルギー作用)は持ち合わせていません。つまり、市販のコンタクト対応目薬の多くは、アレルギー反応の「根本的な抑制」よりも、すでに放出されたヒスタミンによる「かゆみの対症療法」に主眼が置かれています。

参考)花粉・ハウスダストなどによるつらい目のかゆみに、ソフトコンタ…

また、SCL装用中の眼組織は低酸素状態になりやすく、角膜代謝が低下している可能性があります。この状態で血管収縮剤(塩酸テトラヒドロゾリンなど)が配合された点眼薬を使用すると、結膜の血流が一時的に低下し、角膜への酸素供給がさらに阻害されるリスクや、リバウンドによる充血悪化の懸念があります。そのため、コンタクト対応の市販薬では血管収縮剤を含まない製品が推奨されます。最近では、角膜保護成分としてコンドロイチン硫酸エステルナトリウムを配合し、レンズ装用による物理的な摩擦や乾燥から角膜を守る設計の製品(例:ロートアルガードコンタクトa)も存在します。

参考)LOHACO – ロートアルガード コンタクトa 13ml …

医療従事者としては、患者の症状が「我慢できない突発的なかゆみ」なのか、それとも「シーズンを通したベースラインの炎症管理」なのかを見極める必要があります。前者であれば上記のような市販薬も選択肢に入りますが、後者の場合は、コンタクト装用下でも使用可能な防腐剤フリーの医療用点眼薬(アレジオンLX点眼液など)への切り替えを医師に提案するか、あるいは「点眼時のみレンズを外す」という基本原則に立ち返るよう指導することが重要です。

参考)花粉症の目薬「アレジオンLX点眼液0.1%」アレルギー性結膜…

[装着液]と点眼薬の併用による抗原クリアランスと[対策]の最適化

「コンタクトしたまま目薬」というニーズを持つ患者に対し、盲点となりやすいのが装着液(フィッティング液)の活用です。装着液は医薬部外品として分類され、厳密には「治療薬」ではありませんが、花粉症対策において重要な役割を果たします。

参考)コンタクトレンズ用の目薬と装着液の違いとは?正しく使い分けよ…

装着液には、ヒプロメロースやポリビニルアルコールなどの高分子ポリマーが配合されており、これらがレンズ表面に親水性の被膜(クッション)を形成します。この被膜は、レンズ装用時の異物感を軽減するだけでなく、花粉やタンパク質汚れのレンズへの付着を物理的に阻害するバリア機能も期待できます。一部の製品では、タウリンアスパラギン酸などの栄養成分を含み、角膜の代謝をサポートするものもあります。

臨床的な視点では、装着液と点眼薬の「使い分け」ではなく「併用」による相乗効果を指導すべきです。具体的には、朝のレンズ装用時に装着液を使用して花粉の付着を予防し、日中に症状が出た場合にのみコンタクト対応の点眼薬を使用するというフローです。さらに、人工涙液(ソフトサンティアなど)を併用することで、眼表面に付着した花粉を「洗い流す(Wash out)」効果も得られます。SCL装用中は涙液交換率が低下するため、抗原がレンズと角膜の間に滞留しやすくなります。防腐剤フリーの人工涙液による頻回点眼は、この滞留した抗原を物理的に排出する最も安全かつ効果的な手段の一つです。

参考)コンタクトをしたまま使える花粉症目薬を紹介|症状に合わせた選…

ただし、装着液を目薬代わりに使用することは推奨されません。装着液は粘度が高く設定されていることが多く、点眼薬として使用すると一過性のかすみ目を引き起こしたり、薬液の排出が遅延したりする可能性があるためです。

参考)コンタクトレンズの装着液は目薬として使えない?違いと使い分け…

[ソフトコンタクト]のFDA分類と薬剤透過性から見る[選び方]の盲点

医療従事者がさらに踏み込んで製品選択をアドバイスする場合、患者が使用しているSCLのFDA分類(グループI〜IV)を考慮に入れることは、検索上位の記事にはない専門的な視点です。

一般的に、グループIV(高含水・イオン性)のレンズは、マイナス荷電を帯びており、涙液中のタンパク質や脂質だけでなく、点眼薬中のプラス荷電を持つ成分(多くの薬物成分や一部の防腐剤)を吸着しやすい性質があります。一方で、シリコーンハイドロゲルレンズ(主にグループIやV)は、酸素透過性は高いものの、脂質汚れが付着しやすい特性があります。

参考)https://www.cureus.com/articles/104570-use-of-ketotifen-fumarate-eluting-daily-disposable-soft-contact-lens-in-management-of-ocular-allergy-literature-review-and-report-of-two-cases.pdf

市販の「コンタクト対応」目薬は、基本的にすべてのレンズタイプで使用可能とされていますが、レンズの汚れや変形に対する感受性はレンズ素材によって異なります。例えば、グループIVのレンズを使用している患者が、微量でも防腐剤が含まれる製品(たとえコンタクト対応であっても)を頻回に使用した場合、レンズのパラメータ変化やフィッティング不良が生じるリスクは、非イオン性レンズ(グループI、II)を使用している患者よりも理論上高くなります。

したがって、1dayタイプの使い捨てレンズを使用している患者であれば、多少の薬剤吸着が起きても翌日には新しいレンズに交換するため、市販薬使用のリスクは相対的に低くなります。しかし、2weekや1monthタイプの定期交換型レンズを使用している患者に対しては、レンズへの蓄積効果を考慮し、完全防腐剤フリーの1回使い切りタイプ(例:ティアーレコンタクトなど)を強く推奨すべきです。このように、単に「コンタクト対応」という表示だけで判断せず、患者のレンズ交換サイクルと素材特性をマッチングさせることが、トラブル回避の鍵となります。

独自視点:[花粉症]症状による涙液pH変化と[目薬]の刺激感に関する指導

検索上位にはあまり見られない独自の視点として、アレルギー炎症時の涙液pH変化と点眼薬の刺激性(pHおよび浸透圧比)の関係性に着目します。

アレルギー性結膜炎を発症している眼表面では、炎症性サイトカインの増加や涙液分泌の不安定化により、生理的な涙液環境が乱れています。通常、涙液のpHは約7.0〜7.4の弱アルカリ性ですが、炎症時には酸性側に傾くことがあります。この状態で、pHが低い(酸性の)点眼薬や、浸透圧比が生理食塩水と大きく異なる点眼薬を使用すると、通常時よりも強い「しみ(刺激感)」を感じることがあります。

市販のコンタクト対応目薬の中には、清涼感を与えるためにl-メントールやd-カンフルを配合した「クールタイプ」が多く存在します。これらは掻痒感を冷感でマスキングする効果があり、患者満足度は高い傾向にありますが、炎症が強い角膜に対しては刺激が強すぎる場合があります。特にSCL装用中は、レンズが蓋となって成分が眼表面に長時間留まるため、清涼化剤による刺激が持続し、痛みとして知覚されることがあります。

医療従事者としては、「しみる=効いている」という誤った認識を患者が持たないよう指導する必要があります。強い刺激は反射性流涙を促し、点眼した薬液を洗い流してしまうため、薬効の持続時間が短くなる可能性があります。したがって、角膜上皮障害のリスクがある場合や、痛みを伴うような重度の充血がある場合は、清涼化剤を含まない「マイルドタイプ」や「人工涙液」を選択するようアドバイスすることが、治療コンプライアンスの維持につながります。また、点眼直後の「一時的な不快感」と「アレルギー症状の悪化」を区別するために、点眼後5分程度様子を見ても異物感が続く場合は、レンズの変形や薬剤過敏症を疑い、直ちに使用を中止して眼科受診を促すトリアージ基準も伝えておくべきでしょう。

Ocular benzalkonium chloride exposure: problems and solutions(参考:ベンザルコニウム塩化物の眼表面への毒性とSCL吸着リスクに関する論文)
コンタクトをしたまま使える花粉症目薬を紹介(参考:市販薬の成分分類と商品例)
ロートアルガード コンタクトa 商品情報(参考:コンドロイチン硫酸などの角膜保護成分の配合)