カボザンチニブ添付文書の用法用量から副作用まで

カボザンチニブ添付文書の重要事項

食後投与すると薬効が57%も過剰に増える

📋 この記事の3つのポイント
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適応と用法用量

腎細胞癌・肝細胞癌に対する標準用量60mgと、ニボルマブ併用時の40mgの違いを詳細に解説

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重大な副作用と対処法

消化管穿孔、高血圧クリーゼなど17種類の重大副作用とグレード別の減量・休薬基準

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薬物相互作用と注意点

CYP3A4阻害剤・誘導剤との相互作用、食事の影響、手術前28日間の休薬規定

カボザンチニブの適応疾患と承認状況

カボザンチニブ(商品名:カボメティクス錠)は、キナーゼ阻害剤に分類される抗悪性腫瘍剤です。2020年3月に日本で初めて承認され、現在では2つの適応を持っています。一の適応は「根治切除不能又は転移性の腎細胞癌」で、2020年5月に薬価収載されました。第二の適応は「がん化学療法後に増悪した切除不能な肝細胞癌」で、2020年11月に追加承認されています。

腎細胞癌に対しては、血管新生阻害剤による前治療後の二次治療以降での使用と、ニボルマブとの併用による一次治療での使用が可能です。

つまり2つの使い方があるということですね。

肝細胞癌に対しては、ソラフェニブなどの全身化学療法後に増悪した患者が対象となります。これらの適応は、国内外の大規模臨床試験で有効性と安全性が確認されたことに基づいています。

薬価は20mg錠が8,007.60円、60mg錠が22,333円と設定されており、有用性加算II(10%)が適用されました。費用対効果評価の対象品目にも指定され、2022年の評価では良好な結果が得られています。治療費の面でも、医療従事者が患者に説明する際の重要な情報となります。

カボザンチニブの用法用量と投与時の注意点

添付文書に記載されている標準用量は、単独投与の場合「1日1回60mgを空腹時に経口投与」です。ニボルマブとの併用投与の場合は「1日1回40mgを空腹時に経口投与」と、用量が異なる点に注意が必要です。この用量の違いは、併用療法での安全性プロファイルを考慮した設定となっています。

空腹時投与が厳密に規定されているのには明確な理由があります。食後に投与した場合、カボザンチニブの最高血中濃度(Cmax)が41%、血中濃度曲線下面積(AUC)が57%も増加することが臨床試験で確認されています。具体的には、食事の1時間前から食後2時間までの間の服用を避ける必要があります。つまり、朝食前なら食事の1時間以上前、食後なら2時間以上経過してから服用するということです。

減量は段階的に行います。単独投与の場合、60mg→40mg→20mg→20mg隔日投与の順に減量し、20mg隔日投与でも忍容不能な場合は投与を中止します。グレード1以下に回復するまで休薬し、再開時には1段階減量した用量から開始します。ニボルマブ併用時は40mg開始のため、減量パターンが異なる点も把握しておく必要があります。

カボザンチニブの作用機序と薬物動態

カボザンチニブは、複数の受容体チロシンキナーゼを同時に阻害するマルチキナーゼ阻害薬です。主な標的分子は、血管内皮細胞増殖因子受容体2(VEGFR2)、肝細胞増殖因子受容体(MET)、AXLの3つです。これらは腫瘍の増殖、血管新生、浸潤、転移に深く関与している分子であり、これらを同時に阻害することで強力な抗腫瘍効果を発揮します。

VEGFR2の阻害により腫瘍血管の新生が抑制され、腫瘍への栄養供給が遮断されます。この仕組みは血管新生阻害剤として知られています。METとAXLの阻害は、腫瘍細胞の増殖シグナルを直接遮断し、転移能力も低下させます。特にMETは肝細胞癌で高発現していることが多く、肝細胞癌への適応拡大の根拠となっています。

薬物動態の特徴として、血漿蛋白結合率が99.7%以上と極めて高く、消失半減期は約55時間です。半減期が長いため、定常状態到達までに時間がかかり、投与19日目の蓄積率は約5倍になります。代謝は主にCYP3A4で行われ、排泄は糞中54%、尿中27%です。この長い半減期が、1日1回投与を可能にしています。

カボザンチニブの重大な副作用と発現頻度

添付文書には17種類の重大な副作用が記載されており、医療従事者は発現頻度と対処法を熟知しておく必要があります。最も頻度が高いのは手足症候群で44.3%に発現します。次いで肝機能障害が34.8%、高血圧が32.6%と続きます。これらの高頻度副作用は患者のQOLに直結するため、早期発見と適切な対症療法が重要です。

消化管穿孔は0.9%、瘻孔は0.7%と頻度は低いものの、発現すると重篤化しやすい副作用です。腹痛、発熱、血便などの症状が出現した場合は直ちに画像検査を実施し、確認された場合は投与を中止して外科的処置を検討します。出血も7.7%と比較的高頻度で、消化管出血0.9%、脳出血0.2%などが報告されています。

血栓塞栓症は4.1%に認められ、肺塞栓症1.7%、深部静脈血栓症0.7%、虚血性脳卒中0.2%などが含まれます。下肢の腫脹や突然の呼吸困難などの症状に注意が必要です。腎障害も13.6%と高頻度で、蛋白尿8.7%、急性腎障害1.3%が報告されています。定期的な尿検査とクレアチニン測定が推奨されます。

カボザンチニブの薬物相互作用と併用注意薬

カボザンチニブは主にCYP3A4で代謝されるため、CYP3A4阻害剤や誘導剤との相互作用に注意が必要です。CYP3A4阻害剤(リトナビル、イトラコナゾールクラリスロマイシンなど)との併用では、カボザンチニブの血中濃度が上昇し、副作用が増強される可能性があります。ケトコナゾール併用試験では、AUCが38%増加したというデータがあります。

グレープフルーツジュースも強力なCYP3A4阻害作用を持つため、カボザンチニブ服用中は摂取を避けるよう患者に説明する必要があります。

これは継続的な注意事項です。

CYP3A4誘導剤(リファンピシンデキサメタゾンカルバマゼピンなど)との併用では、カボザンチニブの血中濃度が低下し、効果が減弱する可能性があります。リファンピシン併用試験ではAUCが77%も減少しました。

セイヨウオトギリソウ(St. John’s Wort)含有食品もCYP3A4を誘導するため、服用中は避けるよう指導します。併用が避けられない場合は、CYP3A4誘導作用のない薬剤への代替を考慮するか、カボザンチニブの減量を検討します。プロトンポンプ阻害剤との相互作用は認められていないため、胃酸分泌抑制が必要な場合でも併用可能です。

カボザンチニブ投与時の手術前後の休薬期間

カボザンチニブは創傷治癒を遅らせる可能性があるため、手術前後の休薬期間が添付文書に明確に規定されています。外科的処置が予定されている場合、手術の少なくとも28日以上前に投与を中断することが推奨されます。これは歯科手術を含むすべての外科的処置に適用されます。28日間という期間は、カボザンチニブの長い半減期(約55時間)と組織への蓄積を考慮した設定です。

術後の投与再開のタイミングは、患者の創傷治癒状態を慎重に評価して判断します。添付文書では具体的な日数は規定されていませんが、創傷が十分に治癒するまでは投与を控えるべきです。通常、術後2~4週間程度が目安となりますが、創傷の状態、手術の侵襲度、患者の全身状態などを総合的に判断する必要があります。

緊急手術が必要になった場合の対応も重要です。緊急手術ではカボザンチニブを直ちに中止しますが、半減期が長いため体内に残存している可能性があります。出血リスクや創傷治癒遅延のリスクを外科医と共有し、術中・術後の管理を綿密に行います。また、顎骨壊死のリスクがあるため、歯科治療前には口腔内を十分に観察し、必要に応じて予防的な歯科処置を検討します。

武田薬品工業の医療関係者向けサイトでは、カボメティクスの適正使用に関する詳細情報やFAQが掲載されており、手術前後の管理についても詳しく解説されています。
PMDAの医薬品情報サイトでは、最新の添付文書、審査報告書、インタビューフォームなどが入手でき、薬物動態や臨床試験データの詳細を確認できます。