上腕骨外側上顆炎の治し方
上腕骨外側上顆炎の治し方の原因と病態
上腕骨外側上顆炎(いわゆるテニス肘)は、ものをつかんで持ち上げる、タオルを絞るといった動作で、肘外側から前腕にかけて痛みが出やすく、安静時痛は目立たないことが多い疾患です。
中年以降で増えやすく、年齢とともに腱が傷みやすくなることが背景にあり、主に短橈側手根伸筋の起始部が肘外側で障害されると考えられています。
関連筋として、長橈側手根伸筋・短橈側手根伸筋・総指伸筋が挙げられ、いずれも「手首や指を伸ばす」機能と結びつくため、反復する把持や手関節背屈の負荷が症状と直結します。
治し方を考える際に重要なのは、「炎症」という言葉に引っ張られすぎないことです。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7222600/
近年の整理では、腱の変性を含む病態(tendinosis/epicondylosis)として説明されることが多く、単純に冷やして安静だけで“元通り”にするより、負荷を調整しながら回復に必要な刺激を入れる設計が中心になります。
その一方で、痛みが強い時期に無理な運動を入れると悪化しやすいので、「今は下げる時期か、作り直す時期か」を患者教育として言語化することが、結果的に最短の治し方になります。
上腕骨外側上顆炎の治し方の診断とテスト
診断は外来で行える疼痛誘発テストが中心で、代表的な検査としてThomsenテスト、Chairテスト、中指伸展テストが一般に用いられます。
これらで肘外側〜前腕に痛みが誘発されれば上腕骨外側上顆炎を支持し、日常生活では「ペットボトルのふた」「フライパンを持つ」「雑巾を絞る」などの再現性も評価に使えます。
また、肘外側痛でも鑑別は幅広く、症状が外側上顆より遠位に強い・しびれや筋力低下がある・頚部症状を伴う場合は、別病態(例:末梢神経絞扼など)を疑って設計を変える必要があります。
医療従事者向けの現場視点では、痛みの誘発動作を「把持(grip)」「手関節伸展」「前腕回内外」「肘伸展位」などに分解して、どの組み合わせが最も悪いかを取ると、治し方(負荷調整の指示)が具体化します。
例として、Chairテスト陽性でも“肘を曲げると楽”な人は負荷の回避姿勢が取りやすく、作業環境調整(取っ手の太さ、把持時間、荷重位置)で一気に改善することがあります。pmc.ncbi.nlm.nih+1
検査名を増やすより、「痛い動きの共通項=どの腱にストレスが集中しているか」を患者と共有するほうが、セルフケア継続率が上がりやすいです。
上腕骨外側上顆炎の治し方の保存療法と装具
日本整形外科学会の解説では、まず保存療法として、手首や指のストレッチをこまめに行うこと、作業やスポーツを控えつつ湿布や外用薬を使用すること、必要に応じて局所麻酔薬とステロイドの注射を行うこと、テニス肘用バンドを装着することが挙げられています。
また、保存療法が無効な場合には手術療法(筋膜切開術、切除術、前進術、肘関節鏡視下手術など)も選択肢になります。
つまり「治し方=まず保存療法で勝負し、反応が悪い群を見極めて次へ進む」という、段階的な意思決定が基本です。
理学療法の観点では、ガイドラインのクリニカルクエスチョンとして、前腕伸筋群の伸張運動(ストレッチング)、手関節伸筋群の筋力増強運動、徒手療法、装具(コックアップスプリントやテニスバンド)、低出力レーザーや超音波、体外衝撃波、患者教育(環境整備を含む)などが論点として整理されています。
この整理はそのまま臨床の引き出しになり、患者に合わせて「今はストレッチ中心」「仕事中は装具で守る」「慢性期は筋力増強運動へ」など、優先順位を組み替える土台になります。
装具は“治す道具”というより、腱の付着部に集中する張力を一時的に分散し、日常生活の再開を助ける位置づけで説明すると納得されやすいです。pmc.ncbi.nlm.nih+1
保存療法の頻出トラブルは、「痛いから完全に動かさない」か「痛いのにストレッチを強くやりすぎる」の両極端です。
臨床では、痛みが強い時期は“回数は多く・強さは弱く”が安全で、作業後に痛みが残るなら負荷量が過多と判断し、把持時間・重量・手首角度のどれを下げるかを指示します。
この“負荷の見える化”ができると、患者は「治し方=我慢」から「治し方=設計」に認知が変わり、再発率が下がります。
上腕骨外側上顆炎の治し方のストレッチと運動療法
ストレッチは保存療法の中心の一つとして紹介されており、手首や指のストレッチをこまめに行うことが推奨されています。
狙いは、前腕伸筋群の緊張を下げて腱付着部への負担を減らすこと、そして「痛みが出る動作の前後で回復を促す」ことです。
ただしストレッチは万能ではなく、痛みが強い時期に“伸ばし切る”ようなやり方をすると増悪することがあるため、疼痛の反応を見ながら可動域と保持時間を調整します。
実際に臨床で説明しやすい手首ストレッチの例として、肘を伸ばし、手のひらを下に向けた状態で手首を屈曲方向へ誘導し、前腕外側の伸び感を軽く感じる範囲で保持する方法が、一般向けの解説でも紹介されています。hiroshima-seikeigekaiin+1
ポイントは「肘を伸ばす」「手首と指(特に中指側)の伸筋群に張りを作る」で、痛みの直撃ポイント(外側上顆)を押さえつけるより、負荷の通り道を変える意識で行うと成功しやすいです。tokyo-jointclinic+1
セルフケア指導では、痛みが0になるまで待つのではなく、“痛みが上がらない範囲で毎日続く”メニューを作るほうが、結局は早い治し方になります。
運動療法については、理学療法ガイドラインの論点として「手関節伸筋群の筋力増強運動」が明示されています。
特に慢性期は、ただ柔らかくするだけでなく、腱が耐えられる負荷容量(load capacity)を作る必要があり、軽負荷で反復し、痛みの反応を見ながら段階的に抵抗量や回数を上げる設計が一般に推奨されます。
意外に見落とされるのが「握力(grip)を直接鍛えるほど悪化する」ケースで、この場合は手関節背屈を固定して把持させる作業を一時的に減らし、まずは痛みを上げない範囲の手関節伸展筋トレに寄せると改善が早まることがあります。
上腕骨外側上顆炎の治し方の独自視点と注射
独自視点として有効なのは、「肘」だけで完結させず、作業設計(環境整備)までを治療介入に含めることです。
たとえばPC作業・工具作業・調理などで、手首背屈位のまま把持が続く配置になっていると、短橈側手根伸筋の起始部に同じストレスが反復し、ストレッチだけでは追いつきません。
患者教育として「今日の動作で腱に何点の負荷がかかったか」を点数化し、点数が上がる行為(重い物をつまむ、持ち手が細い、肘伸展位での反復)を1つずつ潰すと、医療者側の介入が短くても治し方が再現可能になります。
注射は保存療法の選択肢として、肘外側への局所麻酔薬とステロイド注射が挙げられています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3364060/
一方で、ステロイド注射は短期的には痛みを抑える目的で選ばれることがある反面、長期成績や繰り返し注射に関する論点がガイドラインでも整理されており、適応・説明・回数管理が重要です。isho+1
また国内の症例報告として、上腕骨外側上顆炎に対するステロイド注射が行われる臨床背景や、注射に伴う合併症が議論される文献もあり、「痛みが取れた=治った」ではなく、負荷設計と運動療法の併用が必要であることを強調すべきです。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jelbow/26/2/26_184/_pdf/-char/ja
さらに、いわゆる再生医療的アプローチとしてPRP療法の国内報告もあり、少数例ながら治療成績が報告されています。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jelbow/25/2/25_237/_pdf
PRPは自由診療として扱われることも多く、適応や費用、エビデンスの確実性は施設差が大きいため、「通常の保存療法で改善しない場合の選択肢」として位置づけ、患者の期待値調整を丁寧に行うのが安全です。jstage.jst+1
臨床では、注射系の介入を入れる場合ほど、作業負荷の再設計(環境整備)と運動療法の再開タイミングをセットで説明すると、再燃を防ぎやすいです。
痛みが長引く、夜間痛が強い、しびれ・筋力低下がある、可動域制限や引っかかりがある場合は、単純な上腕骨外側上顆炎だけで説明できないことがあります。pmc.ncbi.nlm.nih+1
その場合は画像や鑑別を含めて再評価し、治し方を「セルフケア継続」から「診断の組み立て直し」に切り替えるのが医療安全上のポイントです。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9259427/
保存療法が無効な場合に手術療法が検討されるという流れも踏まえ、見立てがズレていないかを定期的にチェックします。
【参考リンク(病態・症状・検査・保存療法の要点)】
【参考リンク(理学療法で扱う介入の論点一覧)】
日本理学療法士協会:肘関節機能障害理学療法ガイドライン(上腕骨外側上顆炎)
【参考リンク(保存療法のエビデンス整理・論点の俯瞰)】
Management of Lateral Epicondylitis: A Narrative Literature Review
【参考リンク(国内:PRP療法の報告PDF)】
上腕骨外側上顆炎に対するPRP療法の治療成績

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