上腕骨顆上骨折子供のリハビリ
上腕骨顆上骨折の固定期間とリハビリ開始時期
小児上腕骨顆上骨折の治療では、骨折の重症度に応じて固定期間が決定されますよ。一般的にギプス固定は3〜4週間程度行われ、この期間中に仮骨形成が進行します。
参考)上腕骨顆上骨折(子供にみられる肘の骨折) – 古東整形外科・…
固定期間中でも、手指の運動は積極的に行うことが推奨されます。これは血流促進と筋萎縮予防につながるためです。骨折の癒合状態をレントゲンで確認し、仮骨形成が明確になった段階でリハビリテーションを開始するのが標準的な流れなんです。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jkpt/1/0/1_0_53/_pdf
早期リハビリ開始の重要性は複数の研究で示されており、固定解除後すぐに自動運動から始めることで、最終的な可動域の改善度が大きく変わってきます。一方で、骨癒合が不十分な状態での過度な運動は再骨折のリスクを高めるため、医師の指示に従った段階的なアプローチが必要です。
参考)上腕骨顆上骨折 – 名古屋市中村区の整形外科 – MRI完備…
平均的な治療期間は固定1カ月、リハビリ1カ月の合計約2カ月とされていますが、骨折の重症度や患者の年齢によって変動します。
古東整形外科・リウマチ科 – 上腕骨顆上骨折の治療とリハビリ期間
上腕骨顆上骨折の可動域訓練の具体的方法
リハビリテーションの中心となるのは、肘関節の可動域訓練です。初期段階では関節可動域練習を中心に、肘関節屈曲・伸展の改善を目指します。
参考)上腕骨顆上骨折後患者における筋電図評価と 運動療法効果の検討
具体的な訓練方法として以下のアプローチが効果的ですよ:
- 自動運動から開始し、徐々に他動運動へ移行する段階的プログラム
参考)【2024年版】上腕骨骨折への保存・手術 / リハビリテーシ…
- 温熱療法を併用した関節可動域練習で血流を促進し疼痛を軽減
参考)骨折後に拘縮する原因とは?治療や後遺障害認定のポイントも解説…
- 振り子エクササイズによる肩関節周囲の柔軟性向上
- 壁登りエクササイズで上肢全体の可動域を改善
リハビリ実施時の注意点として、痛みを我慢して無理に曲げ伸ばしする必要はありません。特に小児の場合、遊びを取り入れながら日常生活の中で自然に肘を動かすことが効果的なんです。
筋電図評価を用いた研究では、肘関節屈曲拘縮の改善後も肘関節変換運動(屈曲から伸展への切り替え)において筋活動のタイミングのずれが生じることが報告されています。そのため、単純な可動域練習だけでなく、バルーンドリブルや腕立て伏せなどの協調運動訓練も重要です。
前腕回内・回外運動も忘れてはならない要素で、この動作は肘関節機能に重要な役割を果たしています。回外位では強い荷重に耐える力を発揮し、回内位では巧緻運動に適しているため、両方向の訓練が必要です。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jkpt/10/0/10_0_33/_pdf
日本理学療法士協会 – 上腕骨顆上骨折後患者における運動療法効果
上腕骨顆上骨折後の後遺症と予防対策
上腕骨顆上骨折の代表的な後遺症には内反肘、肘関節拘縮、神経損傷によるしびれなどがあります。
参考)上腕骨顆上骨折|患者家族への対応がわかる!子どもの治療とケア…
内反肘は骨折後のずれが残ったまま骨癒合した場合に発生し、上腕の軸に対して前腕の軸が内側を向く変形です。小児では自家矯正(自然な修正)が起きにくい骨折であるため、初期の整復が不十分だと成長に伴って内反変形が進行する可能性があるんです。
肘関節拘縮は長期固定により関節周囲の筋肉、靱帯、関節包などの伸張性が低下して起こります。拘縮予防には以下の対策が効果的です:
- 鎮痛剤処方とクーリングで腫脹・浮腫を軽減
- 固定中も動かせる範囲での運動実施
- 固定解除後の早期からの積極的な関節可動域練習
拘縮は数週間から数ヶ月で発生するケースが多いため、固定期間が長いほどリスクが高まります。特に小児上腕骨顆上骨折では拘縮が発生しやすいとされており、注意深い経過観察が必要です。
フォルクマン拘縮という阻血性拘縮も重大な合併症の一つです。これは血管損傷により前腕の筋肉が壊死する状態で、上肢機能の喪失をもたらすため、骨折治療に優先して対処すべき緊急事態なんです。医療従事者は常に阻血徴候(しびれ、冷感、脈拍の減弱など)を念頭に置き、1つでも認めた場合は迅速な対応が求められます。
参考)No.338 「校庭のアスレチック施設から転落した8歳の小学…
上腕骨顆上骨折のリハビリにおける筋力強化
可動域改善後の段階では、肘関節周囲筋の筋力強化が重要になってきますよ。長期固定により上腕二頭筋や上腕三頭筋に筋萎縮が生じるため、系統的な筋力トレーニングが必要です。
筋力強化の段階的アプローチは以下の通りです:
- 筋収縮の学習から開始し、等尺性収縮で筋活動を再教育
- 軽い抵抗運動でパワーとしての筋力を獲得
- ゴムバンドや軽いダンベルを使用した段階的負荷増加
- 筋群間の協調性獲得のための変換運動練習
特に注目すべきは筋電図を用いた評価です。研究によると、肘関節の可動域と筋力が改善しても、屈曲から伸展への切り替え(変換運動)において筋活動のタイミングにずれが残ることが明らかになっています。このタイミングのずれは日常生活動作、特に床から立ち上がる動作や窓拭きなどの協調運動を伴う動作に影響を与えるんです。
円回内筋は上腕骨内側上顆から橈骨に付着し、強力な回内作用を持つ筋肉です。前腕の回内・回外運動は肘関節機能に重要な役割を果たしており、重い荷物を持つ際の回外位での剛性確保や、細かい作業時の回内位での巧緻性向上に寄与します。
自主トレーニングとして、バランスボード上での立位バランス訓練も全体的な身体安定性向上に効果的です。ただし、すべてのトレーニングは医師や理学療法士の指導下で安全に実施することが前提となります。
上腕骨顆上骨折治療における独自の保存療法アプローチ
従来の手術療法に対し、徹底した固定療法による保存的治療という独自アプローチが注目されています。この方法では手術や入院なしで良好な治療成績を上げているんです。
具体的な固定方法として、単純に腕にギプスを巻くだけでなく、体幹部から固定することで整復した骨がずれないように完全に安定させます。見た目は大げさに感じられますが、この徹底した固定により患者は家庭で普通の生活を送りながら安全な治療を受けられるメリットがあります。
治療経過の特徴的なポイント:
- 固定後3日程度で腫れが引き、ギプス内にゆとりができるため再固定が必要なケースがある
- 2週間後に仮骨形成を確認できれば体幹固定から腕のみの固定に切り替え可能
- 肩や手指の自由度が向上し、患者のQOLが改善
リハビリについても患者負担を最小限にする工夫がされています。小児の場合、痛みを我慢して曲げ伸ばしする必要はなく、遊びを取り入れながら日常生活の中で自然に肘を動かすだけで十分な効果が得られるんです。
ただし、すべての症例がこの保存療法の適応になるわけではありません。骨折部のずれが大きい場合や、神経・血管損傷の合併がある場合は、速やかに手術可能な施設への紹介が必要です。
参考)小児上腕骨顆上骨折
アメリカ整形外科学会(AAOS)のガイドラインではGartland II型以上の骨折には手術が推奨されていますが、日本の一部施設では慎重な保存療法により良好な成績を収めており、治療選択の幅を広げています。
参考)http://www.jpoa.org/mag/vol28-1/085-088.pdf
治療法 | 固定期間 | 入院の有無 | リハビリ期間 | 総治療期間 |
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手術療法(ピンニング) | 3〜4週間 | 必要な場合が多い | 約1カ月 | 約2カ月 |
保存療法(徹底固定) | 約1カ月 | 不要 | 約1カ月 | 約2カ月 |