上皮細胞の種類と分類
上皮細胞は、体表面を覆う「表皮」、管腔臓器の粘膜を構成する「上皮」、外分泌腺を構成する「腺房細胞」や内分泌腺を構成する「腺細胞」などを総称した細胞群です。これらの細胞は、生体の内部環境を維持する上で重要な役割を果たし、成体の約50%の細胞に該当します。上皮細胞は、形態学的特徴と機能的特徴により系統的に分類され、それぞれが特定の組織や器官で特化した役割を担っています。
上皮細胞の形態学的分類システム
上皮細胞の分類は、まず細胞の並び方によって決定されます。単層上皮は細胞が基底膜上で一列に並んでいる構造で、多列上皮は細胞が基底膜上で数列に並んでいるものの、すべての細胞が突起を伸ばして基底膜に接触している特殊な構造です。重層上皮は細胞が基底膜上で重なり合うように何列(およそ10から30層)にも並んでいる構造を示します。
個々の細胞の形状による分類では、扁平上皮は細胞が潰れたような平たい形状を特徴とし、立方上皮は細胞が立方形を呈し、円柱上皮は縦方向に長い円柱形をしています。線毛上皮は細胞表面に線毛が生えている特殊な構造を持ちます。これらの用語を組み合わせることで、「重層扁平上皮」や「単層円柱上皮」といった具体的な分類が可能になります。
上皮細胞の主要な種類と分布
単層扁平上皮は、血管・リンパ管内皮、漿膜中皮に分布し、薄い構造により物質交換機能に特化しています。血管内皮では酸素や二酸化炭素の交換を、肺胞上皮ではガス交換を効率的に行います。胸膜や腹膜といった漿膜も単層扁平上皮で構成され、体腔内の摩擦を軽減する役割を担います。
参考)<単層扁平上皮> #薄いので物質交換に向きます|かずひろ先生…
単層立方上皮は汗腺上皮(エクリン腺腺房の上皮)や甲状腺濾胞上皮、尿細管などに限定的に分布します。単層円柱上皮は消化管上皮、呼吸器・気道上皮、卵管・子宮に広く分布し、細胞の丈が高いため細胞小器官を多く含み、吸収や分泌機能に優れています。
重層扁平上皮は表皮、食道上皮、子宮外頸部上皮、肛門上皮などに分布し、摩擦や機械的刺激に対する強固な保護機能を提供します。角化重層扁平上皮(表皮)と非角化重層扁平上皮(口腔、食道、膣など)に分類され、角化型はケラチンによるバリア機能が特に発達しています。
参考)<重層扁平上皮>#積み重なっているので摩擦や機械的刺激に強い…
上皮細胞の特殊な種類と機能
多列線毛円柱上皮は鼻腔上皮、咽頭上皮、気管・気管支上皮に特化して分布し、表面の線毛と杯細胞が産生する粘液により、塵や異物を体外へ排出する清浄化機能を担います。線毛の協調運動により、気道内の異物除去システムが効率的に機能します。
参考)【人体】上皮組織 href=”https://sgs.liranet.jp/sgs-blog/5676″ target=”_blank” rel=”noopener”>https://sgs.liranet.jp/sgs-blog/5676amp;#8211; SGSブログ
移行上皮(尿路上皮)は腎盂上皮、尿管上皮、膀胱上皮、尿道上皮、前立腺導管上皮に分布し、最も顕著な伸縮性を示す上皮として知られています。膀胱の拡張時には上皮層が2~3層に薄くなり、収縮時には約6層の厚い構造になる動的変化が特徴です。この特殊な構造により、尿量変化に応じた効率的な容量調節が可能になります。
参考)移行上皮
上皮細胞の機能的分類システム
上皮細胞は機能的に6つの主要カテゴリーに分類されます。分泌上皮は粘液、酵素、ホルモンなど生物活性物質を産生・分泌し、吸収上皮は水、電解質、栄養素を能動的に吸収・輸送します。導管上皮は管腔面を覆い物質転送を促進し、被蓋上皮(被覆上皮、保護上皮)は身体表面や管腔器官内面を覆い、物理的・化学的バリアを構成します。
感覚上皮は外界刺激を神経系へ伝達する特殊機能を持ち、嗅上皮、網膜、内耳ラセン器などが該当します。これらの上皮では知覚神経が豊富に分布し、しばしば血管が上皮内に存在する特殊な構造を示します。呼吸上皮は気道系に特化した上皮で、ガス交換と気道清浄化の両機能を担います。
上皮細胞の構造的特徴と細胞間結合
上皮細胞の構造的特徴として、外気や液体にさらされる頂端面と結合組織に接着する基底面があり、この極性により物質の分泌・吸収機能が実現されます。基底面を支える基底層は細胞外マトリクスの丈夫な層で構成され、上皮の構造的安定性を保持します。
隣接する上皮細胞間は、タイトジャンクションと呼ばれるタンパク質複合体により強固に結合されています。これらの細胞間結合により、細胞間隙を分子が通過するのを防ぎ、細胞同士のコミュニケーションが可能になります。タイトジャンクションが弱体化すると、細菌や病原体、毒素が血流へ侵入し、免疫システムの活性化と炎症反応を引き起こすリスクが高まります。
上皮組織は環境刺激に対する第一防御層として機能し、常に修復と交換が行われる動的な組織です。この継続的な更新システムにより、外界からの物理的・化学的ストレスに対する防護機能が維持されています。