ジョサマイシン効果を詳しく解説
感染性腸炎の有効率は66.7%にとどまる
ジョサマイシン効果の基本的な作用機序
ジョサマイシンは16員環マクロライド系抗生物質に分類され、細菌のリボソームに作用してタンパク質合成を阻害する薬剤です。具体的には細菌の50Sリボソームサブユニットに結合し、ペプチド転移酵素の機能を抑制することで静菌作用を発揮します。高濃度では殺菌的な作用も示すことが特徴です。
この薬剤は土壌中の放線菌の一種であるStreptomyces narbonensis var. josamyceticusから産生されました。他の16員環マクロライド系抗生物質と異なり単一の成分からなることが大きな特徴となっています。
つまり単一成分です。
作用の標的となる細菌は主にグラム陽性菌です。ブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌などに対して強い抗菌力を示します。さらにマイコプラズマ属やクラミジアなどの非定型病原体にも有効性が認められています。マイコプラズマは細胞壁を持たない特殊な構造のため、ペニシリン系やセフェム系抗生物質が効きません。しかしジョサマイシンは細胞壁ではなくリボソームを標的とするため、こうした病原体にも作用できるわけです。
最大の特徴はブドウ球菌のマクロライド耐性を誘導しない「耐性非誘導型」であることです。
これは臨床現場で大きなメリットになります。
なぜなら他のマクロライド系抗生物質の一部は使用中に細菌が耐性を獲得するリスクがあるからです。ジョサマイシンではこのリスクが低いため、治療効果を安定して維持できます。
健康成人男性5名にジョサマイシン1gを単回経口投与した薬物動態試験では、投与1時間後に最高血中濃度2.86μg/mLに達しました。比較的早く血中濃度が上昇することが確認されています。体内での分布や代謝についても研究が進んでおり、肝硬変やギルバート症候群の患者では半減期の延長や最高血中濃度の上昇が見られるため注意が必要です。
これらの作用機序と薬物動態の特性により、ジョサマイシンは呼吸器感染症や皮膚感染症をはじめとする幅広い感染症の治療に活用されてきました。
ジョサマイシンの詳細な作用機序や薬物動態について、製薬会社の医薬品インタビューフォームで確認できます
ジョサマイシン効果が期待できる適応症と有効率
臨床試験データから見るジョサマイシンの有効性は、総数1,643例を対象とした試験で有効率77.4%という結果が報告されています。この数字は比較臨床試験を含む複数の研究から得られた信頼性の高いデータです。
疾患別に見ると効果に明確な差が現れます。咽頭炎・喉頭炎、扁桃炎、肺炎などの呼吸器感染症では有効率83.5%(380/455例)と高い効果を示しました。
呼吸器領域が得意分野です。
深在性皮膚感染症や慢性膿皮症では80.2%(150/187例)の有効率となっています。膀胱炎などの尿路感染症では74.6%の有効率でした。
一方で感染性腸炎に対する有効率は66.7%(56/84例)にとどまります。他の適応症と比較すると効果がやや劣る結果です。感染性腸炎の治療を検討する際には、この数字を考慮に入れる必要があります。他の治療選択肢との比較検討が重要になるでしょう。
適応菌種としてはブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、赤痢菌、マイコプラズマ属に感受性があるものが対象です。
具体的な適応症は非常に多岐にわたります。
📌 主な適応症のカテゴリ。
- 🔹 皮膚感染症:表在性・深在性皮膚感染症、リンパ管炎、リンパ節炎、慢性膿皮症、外傷や熱傷の二次感染、乳腺炎
- 🔹 呼吸器感染症:咽頭炎、喉頭炎、扁桃炎、急性気管支炎、肺炎、慢性呼吸器病変の二次感染
- 🔹 泌尿器感染症:膀胱炎、精巣上体炎(副睾丸炎)
- 🔹 消化器感染症:感染性腸炎
- 🔹 眼科感染症:涙嚢炎、麦粒腫(ものもらい)
- 🔹 耳鼻科感染症:中耳炎、副鼻腔炎、化膿性唾液腺炎
- 🔹 歯科感染症:歯周組織炎、歯冠周囲炎、上顎洞炎、顎炎
- 🔹 その他:猩紅熱
マイコプラズマ肺炎に対しては特に重要な選択肢となります。ただし近年マクロライド耐性マイコプラズマの増加が問題視されています。大阪府の調査では2024年のマクロライド耐性変異率が60.2%に達したという報告もあり、耐性株が疑われる場合にはニューキノロン系やテトラサイクリン系への変更も検討が必要です。
歯科領域でも使用実績があります。歯周組織炎や歯冠周囲炎、顎炎に対する有効率は72.4%(55/76例)と報告されており、一定の効果が期待できます。歯科感染症では嫌気性菌が関与することも多いため、症例に応じて他の抗菌薬との併用や変更を検討することも大切です。
用法用量については成人で1日800〜1200mg(力価)を3〜4回に分割投与します。小児では1日量を体重1kg当たり30mgとし3〜4回に分割投与する形です。
年齢や症状により適宜増減されます。
日経メディカルの薬剤情報で適応症の詳細や用法用量を確認できます
ジョサマイシン効果と他のマクロライド系薬剤との違い
マクロライド系抗生物質は大きく14員環、15員環、16員環に分類されます。ジョサマイシンは16員環に属し、この構造的特徴が他剤との違いを生み出しています。
14員環マクロライドの代表格はエリスロマイシンやクラリスロマイシン、ロキシスロマイシンです。これらは強い抗菌力を持つ一方で、苦味が強いという欠点があります。特に小児用製剤では服薬コンプライアンスの問題になりやすい点です。15員環にはアジスロマイシンがあり、組織移行性に優れ3日間投与で7日間効果が持続する特性を持ちます。
16員環マクロライドであるジョサマイシンの最大の利点は苦味が少ないことです。
小児への投与時に服薬しやすくなります。
またスピラマイシンやミデカマイシンなど他の16員環薬剤と比べても、単一成分からなる点が特徴的です。他の16員環マクロライドは複数の類似化合物の混合物であることが多いため、この点は品質管理上のメリットになります。
耐性誘導の観点から見ると明確な差があります。ジョサマイシンはブドウ球菌のマクロライド耐性を誘導しない「耐性非誘導型」です。一方で14員環のエリスロマイシンなどは誘導型耐性を引き起こしやすい性質があります。誘導型耐性が起こると、使用中に細菌が耐性を獲得して効果が減弱するリスクが高まるわけです。
交差耐性については注意が必要です。ジョサマイシンに対する耐性菌は他のマクロライド系抗生物質にも交差耐性を示します。耐性機序は作用の標的である細菌リボソームRNAの変化によるものです。つまり一度耐性を獲得した細菌にはマクロライド系全般が効きにくくなります。
胃腸障害の発現頻度も比較のポイントです。ジョサマイシンは胃腸障害が比較的少ないとされています。マクロライド系抗生物質全般で下痢などの消化器症状が副作用として出現しやすいのですが、ジョサマイシンはその中でも使いやすい部類に入ります。これは長期投与が必要な症例で重要な要素です。
薬物相互作用の面では、マクロライド系全般がCYP3A4という肝臓の代謝酵素を阻害する性質があります。そのため併用薬の血中濃度が上昇するリスクがあります。ジョサマイシンも同様の注意が必要で、併用注意薬を確認してから処方することが求められます。
適応症の範囲では各薬剤で微妙な違いがあります。アジスロマイシンは性感染症やヘリコバクター・ピロリ除菌にも適応がありますが、ジョサマイシンにはこれらの適応はありません。逆にジョサマイシンは歯科領域の感染症に明確に適応があり、この分野での使用実績が豊富です。
2023年にジョサマイシンが販売中止となった現在、代替薬の選択が重要になっています。関係学会ではエリスロシンを代替候補薬として推奨しています。エリスロシンはエリスロマイシンの製剤で14員環マクロライドです。耐性非誘導型という特性は失われますが、同じマクロライド系として類似の抗菌スペクトラムを持ちます。
ただしエリスロシン自体も供給が不安定な状況にあります。エリスロマイシン錠200mg「サワイ」が唯一の経口エリスロマイシン製剤代替品ですが、これも限定出荷となっています。このため実際の臨床現場ではクラリスロマイシンやアジスロマイシンなど他の14-15員環マクロライドへの切り替えを検討するケースが増えています。
ジョサマイシン効果に影響する副作用と注意点
副作用の発現状況を理解することは適正使用の基本です。ジョサマイシンの主な副作用として報告されているのは消化器症状で、下痢、食欲不振、悪心、嘔吐、腹部膨満感などがあります。
重大な副作用としては以下の3つに注意が必要です。
⚠️ ショック・アナフィラキシー(頻度不明):投与直後から過敏反応が起こる可能性があります。呼吸困難、血圧低下、蕁麻疹、顔面浮腫などの症状が現れた場合には直ちに投与を中止し適切な処置が必要です。投与開始時は特に注意深い観察が求められます。
⚠️ 偽膜性大腸炎(頻度不明):外国で血便を伴う重篤な大腸炎の報告があります。腹痛や頻回の下痢が現れた場合には直ちに投与を中止する必要があります。抗生物質関連下痢症の一種で、クロストリジウム・ディフィシルという細菌の異常増殖によって起こります。
通常の下痢との鑑別が重要です。
⚠️ 皮膚粘膜眼症候群(スティーブンス・ジョンソン症候群)(頻度不明):重篤な皮膚反応です。高熱、目の充血、口唇や口腔粘膜のびらん、皮膚の広範な発赤や水疱などが見られたら投与を中止し専門的治療を開始します。
これは命に関わる副作用です。
その他の副作用としては0.1〜5%未満の頻度で発疹などの過敏症状、肝機能異常、口内炎などが報告されています。頻度不明のものとして黄疸、顔面浮腫なども挙げられています。
抗生物質による下痢は腸内細菌叢のバランスが崩れることで起こります。善玉菌も抗生物質の影響を受けるため、悪玉菌が相対的に増えて下痢になるわけです。多くの場合は抗生物質の服用を中止してから数日以内に軽快しますが、2〜3週間かかることもあります。下痢が出現した場合には水分や電解質の補給を心がけ、消化の良い食事を摂ることが大切です。
特定の背景を有する患者では使用に注意が必要です。肝機能障害のある患者では肝機能が悪化する可能性があるため定期的な検査が推奨されます。特に肝硬変やギルバート症候群の患者では血中濃度が上昇しやすいことが分かっています。高齢者も一般に生理機能が低下しているため、副作用が出現しやすい傾向があります。
妊婦への投与については治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与することとされています。授乳中の使用についても同様に慎重な判断が求められます。小児への使用は可能ですが、体重に応じた用量調整が必要です。
薬物相互作用にも留意が必要です。マクロライド系抗生物質はCYP3A4を阻害するため、この酵素で代謝される薬剤との併用で相手薬の血中濃度が上昇します。具体的にはベンゾジアゼピン系睡眠薬、一部の降圧薬、免疫抑制薬などが該当します。併用薬を確認し、必要に応じて用量調整や代替薬の検討を行うべきです。
耐性菌の発現を防ぐため、原則として感受性を確認してから使用することが推奨されています。また疾病の治療上必要な最小限の期間の投与にとどめることが重要です。
漫然とした長期投与は避けるべきです。
投与中は定期的に観察を行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行います。特に重大な副作用の初期症状を見逃さないよう注意深いモニタリングが求められます。
おくすり110番のサイトでジョサマイシンの副作用情報や注意事項を詳しく確認できます
ジョサマイシン効果を最大化するための処方戦略
耐性菌の問題は抗菌薬治療における最大の課題です。ジョサマイシンを含むマクロライド系抗生物質の適正使用は、この問題への対処として極めて重要になります。
まず抗菌薬投与の必要性を慎重に判断することが出発点です。咽頭炎・喉頭炎、扁桃炎、急性気管支炎、感染性腸炎、中耳炎、副鼻腔炎については「抗微生物薬適正使用の手引き」を参照し、本当に抗菌薬が必要かを判断してから投与を決定します。ウイルス性感染症には抗菌薬は効果がありません。不要な投与は耐性菌のリスクを高めるだけです。
感受性検査の実施も重要な戦略です。可能であれば培養検査を行い、原因菌とその薬剤感受性を確認してから選択することが理想的です。ただし結果が出るまでに数日かかるため、重症例では経験的治療を先行させる必要があります。
つまり経験的治療です。
その場合も結果判明後に必要に応じて薬剤変更を行います。この考え方をde-escalationと呼びます。
投与期間の設定も適正使用の鍵です。症状が改善したからといって自己判断で中止すると、耐性菌が生き残るリスクが高まります。一方で必要以上に長期投与を続けることも耐性菌の選択圧になります。一般的には症状改善後さらに2〜3日投与を継続することが推奨されますが、疾患により異なります。
呼吸器感染症では5〜7日程度が標準的です。
マクロライド耐性マイコプラズマへの対応も現代的な課題です。マクロライド系抗生物質を投与しても3〜4日経過しても解熱しない場合、耐性株の可能性を考慮します。その場合はトスフロキサシンなどのニューキノロン系やミノサイクリンなどのテトラサイクリン系への変更を検討します。小児用製剤のある抗菌薬の選択肢が限られるため、事前に地域の耐性率情報を把握しておくことも有用です。
併用療法の検討も場合によっては必要です。重症感染症や混合感染が疑われる場合、グラム陰性菌もカバーできるよう他系統の抗菌薬との併用を考慮します。例えば深在性皮膚感染症で嫌気性菌の関与が疑われる場合、メトロニダゾールなどとの併用が選択肢になります。
ただし不必要な多剤併用は避けるべきです。
患者への服薬指導も治療成功の重要な要素です。決められた時間に決められた量を服用すること、症状が改善しても自己判断で中止しないこと、下痢などの副作用が出た場合の対処法などを具体的に説明します。特に小児の場合は保護者に対する丁寧な説明が欠かせません。
ジョサマイシン販売中止後の現在、代替薬選択の戦略も必要です。エリスロシンが推奨されていますが供給不安定な状況では、クラリスロマイシンやアジスロマイシンなど他のマクロライド系への変更を検討します。これらは耐性誘導型であるため、ジョサマイシンと完全に同じではありませんが、抗菌スペクトラムは類似しています。
歯科領域での使用では感染の程度を評価することが大切です。軽度の歯周組織炎であれば局所処置と併用して経口抗菌薬を使用しますが、重症例では切開排膿などの外科的処置が優先されます。抗菌薬だけに頼らず総合的な治療計画を立てることが重要です。
耐性菌を増やさないためには、個々の医療従事者の意識と行動が鍵を握ります。安易な抗菌薬処方を避け、必要な症例に適切な薬剤を適切な期間使用する、このシンプルな原則を守ることが最も効果的な戦略です。
厚生労働省の「抗微生物薬適正使用の手引き」で適正使用の具体的な基準を確認できます

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