ジプレキサとオランザピンの違いは薬価と副作用や剤形を比較

ジプレキサとオランザピンの違い

ジプレキサとオランザピンの違い早わかり
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先発品と後発品

ジプレキサが先発医薬品、オランザピンが後発医薬品(ジェネリック)です。有効成分は同一ですが、添加物や製剤技術が異なる場合があります。

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薬価の違い

ジェネリックであるオランザピンの方が、ジプレキサに比べて薬価が大幅に安く設定されています。例えば10mg錠では5倍以上の価格差があります 。

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副作用プロファイル

有効成分が同じため副作用は基本的に同じです。特に体重増加と眠気が多く、血糖値上昇などの代謝系副作用にも注意が必要です 。

ジプレキサとオランザピンの薬価と剤形の違い

ジプレキサとオランザピンの最も明確な違いは、先発医薬品か後発医薬品(ジェネリック)かという点と、それに伴う薬価の違いです 。ジプレキサが先発品であり、その特許期間が満了した後に、他の製薬会社から有効成分「オランザピン」を主成分とする後発品が「オランザピン」という一般名で発売されています 。

後発品は開発費用が抑えられるため、薬価が大幅に安く設定されています 。例えば、2024年時点の薬価を比較すると以下のようになります。

規格 ジプレキサ錠(先発品)の薬価 オランザピン錠「サワイ」(後発品)の薬価
5mg 95.50円 17.00円
10mg 178.50円 30.70円

このように、特に汎用される規格では5倍以上の価格差があり、患者の経済的負担を大きく軽減します 。

また、剤形にもいくつかのバリエーションがあります 。

  • 錠剤: 最も標準的な剤形です 。
  • OD錠(口腔内崩壊錠): 水なしで服用できるため、嚥下機能が低下した患者や服薬を拒否する傾向のある患者に有用です。先発品のOD錠は「ジプレキサザイディス錠」という名称で、一般的なOD錠よりも速やかに溶ける特徴があります 。
  • 細粒: 錠剤の服用が困難な場合や、より細やかな用量調節が必要な場合に使用されます 。
  • 筋注製剤: 緊急時や経口投与が困難な場合に用いられる注射剤です。主に急性期の興奮状態を鎮める目的で使用されます 。

後発品のオランザピンにもOD錠や細粒が多くのメーカーから供給されており、患者の状態に応じた選択が可能です 。

ジプレキサの主な副作用と体重増加のメカニズム

オランザピンは統合失調症や双極性障害に対して高い効果を示す一方で、注意すべき副作用も存在します 。特に頻度が高いとされるのが体重増加傾眠です 。ある調査では、1%以上の頻度で傾眠(22.3%)、体重増加(20.1%)が報告されています 。

なぜオランザピンは体重増加をきたしやすいのでしょうか。そのメカニズムは完全には解明されていませんが、複数の要因が関与していると考えられています 。

  • 🧠 ヒスタミンH1受容体・セロトニン5-HT2C受容体の遮断: オランザピンはこれらの受容体を強力にブロックする作用を持ちます。これにより、満腹感が得られにくくなり、食欲が亢進することが主な原因とされています 。
  • 📉 代謝への直接的な影響: 近年の研究では、食欲亢進や体重増加とは独立して、オランザピンが肝臓での糖新生を促進したり、膵臓β細胞のインスリン分泌に影響を与えたりすることで、血糖値が上昇しやすくなる可能性が示唆されています 。これは、肥満を伴わないケースでも糖尿病が発症する一因と考えられています。
  • 🏃 活動量の低下: 傾眠や倦怠感といった副作用により、日中の活動量が低下することも体重増加に拍車をかける一因となります 。

この体重増加や耐糖能異常は、アドヒアランスの低下や心血管系疾患のリスク増大に繋がるため、臨床上非常に重要な問題です。定期的な体重測定や血液検査(血糖値、HbA1c、脂質など)を行い、必要に応じて食事療法や運動療法を指導することが不可欠です 。

以下の参考リンクは、オランザピンによる糖尿病誘発の非典型的なメカニズムについて解説した京都大学の研究報告です。
オランザピンの非典型的糖尿病誘発機構を解明 – 京都大学

ジプレキサ(オランザピン)の作用機序と効果

オランザピンは、MARTA(Multi-Acting Receptor Targeted Antipsychotic:多元受容体標的化抗精神病薬)に分類される非定型抗精神病薬です 。その名の通り、脳内の様々な神経伝達物質の受容体に作用することで、その効果を発揮します。

主な作用機序は以下の通りです。

  • ドパミンD2受容体遮断作用: 統合失調症の陽性症状(幻覚、妄想など)に関与するとされる中脳辺縁系ドパミン神経の過活動を抑制します 。
  • セロトニン5-HT2A受容体遮断作用: この作用がD2受容体遮断作用と合わさることで、錐体外路症状(パーキンソン症状など)や高プロラクチン血症といった副作用を軽減し、陰性症状(感情の平板化、意欲低下など)への効果も期待できるとされています 。
  • その他受容体への作用: ヒスタミンH1受容体、ムスカリンM1受容体、アドレナリンα1受容体など、複数の受容体を遮断する作用を持ちます 。これらの作用が、鎮静作用、抗不安作用、そして眠気や体重増加、便秘、口渇といった副作用にも関連しています。

この多彩な薬理作用により、オランザピンは統合失調症の陽性症状と陰性症状の両方に効果を示すだけでなく、双極性障害における躁症状およびうつ症状の改善、さらには抗うつ薬との併用によるうつ病・うつ状態の治療にも適応があります 。その強力な鎮静作用から、特に精神運動興奮が激しい急性期の患者に用いられることも多い薬剤です 。

ジプレキサと他の非定型抗精神病薬との比較

非定型抗精神病薬にはオランザピン以外にも多くの選択肢があります。ここでは代表的なリスペリドンやアリピプラゾールと比較し、その特徴をまとめます 。

薬剤名 作用機序の分類 効果の傾向 主な副作用の傾向
オランザピン
(ジプレキサ)
MARTA 陽性・陰性症状、躁・うつ症状に幅広く有効 。鎮静作用が強い。 体重増加、脂質異常、血糖値上昇などの代謝系副作用が最も多い 。眠気も強い。
リスペリドン
(リスパダール)
SDA
(セロトニン・ドパミン拮抗薬)
陽性症状に強力な効果 。鎮静作用はオランザピンより弱い傾向。 錐体外路症状(アカシジア等)高プロラクチン血症(生理不順、乳汁分泌など)が比較的多い 。
アリピプラゾール
(エビリファイ)
DSS
(ドパミン・システム・スタビライザー)
ドパミン系を安定化 。賦活作用(気分を高める)があり、うつ病併用にも 。 アカシジア(静坐不能)が特徴的 。不眠や吐き気。代謝系副作用は少ない傾向。

💡 簡単にまとめると、

  • 鎮静効果と代謝系副作用ならオランザピン
  • 陽性症状へのシャープな効果と錐体外路症状/高プロラクチン血症ならリスペリドン
  • 賦活効果とアカシジアならアリピプラゾール

といった特徴で使い分けが検討されます 。ただし、これらはあくまで一般的な傾向であり、効果や副作用の現れ方には大きな個人差があります。患者個々の症状、副作用の忍容性、既往歴などを考慮して、最適な薬剤を選択することが重要です。

以下の論文は、オランザピンと他の非定型抗精神病薬を比較したメタアナリシスの結果です。
Olanzapine versus other atypical antipsychotics for schizophrenia. – PMC