腎周囲膿瘍 抗菌薬
腎周囲膿瘍の診断:CTと培養のポイント
腎周囲膿瘍(perinephric abscess)は腎周囲腔(腎とGerota筋膜の間)に形成される膿瘍で、腎盂腎炎からの波及や血行性感染などで成立します。
臨床的には発熱・側腹部痛・炎症反応高値といった「腎盂腎炎っぽさ」で受診しつつ、抗菌薬に反応しにくい(解熱しない)ことで膿瘍が疑われる流れが多いです。
画像は腹部CTが重要で、尿路感染症の重症例で「水腎症・膿瘍形成・ガス産生など、泌尿器科的緊急ドレナージを要する病態」の鑑別に有用とされています。
培養は、尿培養だけで満足しないのがコツです。
参考)https://www.chemotherapy.or.jp/journal/jjc/05107/051070439.pdf
SIRSや菌血症が疑われる状況では血液培養2セット採取が推奨され、抗菌薬開始前の採取が望ましいです。
さらに腎周囲膿瘍は「尿路と交通が少なく、尿から菌体検出が困難」になり得るため、ドレナージで得た膿瘍内容が唯一の培養検体になることがある点が、治療の成否に直結します。
参考)「腎膿瘍」の初期症状をご存じですか? 早期発見のポイントを併…
腎周囲膿瘍の起因菌:大腸菌と黄色ブドウ球菌をどう考えるか
尿路感染症由来(上行性感染)の場合、腸内細菌科が中心になりやすく、腎盂腎炎の原因菌は膀胱炎と同様である、という整理が基本になります。
一方で血行性感染が関与する腎感染症では黄色ブドウ球菌なども論点になり、感染経路で想定すべき病原体が変わることを意識すると抗菌薬選択がブレにくくなります。
実臨床では「腎周囲膿瘍=グラム陰性だけ」と決め打ちすると外す場面があり、特に皮膚感染・デバイス感染・薬物注射などの背景があればグラム陽性(S. aureus)にも注意が必要です。
耐性菌の観点では、尿路感染症領域でもESBL産生菌やキノロン耐性菌の増加が問題視されており、施設・地域の感受性パターンを踏まえた初期選択が重要です。
そのため、病院内のアンチバイオグラムを前提に「最初は広め、結果が出たら狭める」をチームで徹底すると、結果的に治療成功率と抗菌薬適正使用を両立しやすいです。
腎周囲膿瘍では培養が陰性になりやすいケースもあるため、採取タイミング(開始前)と採取部位(膿瘍内容)を最初から設計するのが現場では効きます。
腎周囲膿瘍の抗菌薬:empiricからdefinitive、投与期間の考え方
尿路感染症の抗菌薬治療は、経験的治療(empiric)開始後に効果判定を行い、培養結果が判明次第definitive therapyへ切り替える、という原則がガイドライン上も明記されています。
効果判定は「治療開始後3日目を目安」とされており、ここで熱型・疼痛・炎症反応・循環動態を見て、膿瘍や閉塞の見逃しがないか再評価します。
腎盂腎炎では「解熱など症状寛解後24時間を目処に経口へスイッチ、合計14日間」が一つの枠組みですが、腎周囲膿瘍は膿瘍という“閉鎖腔”がある分、病巣コントロール(ドレナージ)込みで期間設計するのが実務的です。
腎周囲膿瘍の治療は「抗菌薬+ドレナージ」が柱で、抗菌薬単独は小さな膿瘍など限られた状況で検討されます。
参考)Perinephric abscess<!– –> – …
英語圏の教育リソースでも「抗菌薬は少なくとも2〜3週」と説明されることがあり、膿瘍という病態では“短期で切り上げにくい”点が背景にあります。
参考)https://www.osmosis.org/answers/perinephric-abscess
ただし、期間は固定ではなく「臨床反応・画像の改善・ドレナージ状況」で調整すべき、という考え方が一般的で、サイズ・隔壁化・免疫不全・耐性菌などが長期化要因になります。
初期薬のクラスは、重症度や耐性リスク、緑膿菌リスク(カテーテル、院内、既治療など)を踏まえて決める必要があります。
ウロセプシスや重症例では、早期の静脈内投与と、尿流停滞の解除(ドレナージ)を組み合わせないと治癒に至らない場合がある点も強調されています。
「抗菌薬の効きが悪い=薬が弱い」ではなく、「排膿できていない」「閉塞が残っている」「培養が取れていない」など“設計ミス”の可能性を常に並行で疑うのが安全です。
腎周囲膿瘍のドレナージ:適応・タイミング・意外な落とし穴
腎膿瘍/腎周囲膿瘍は抗菌薬投与に加えて外科的処置を要することが多く、一定サイズ以上(例:3cm以上)や反応不良ではドレナージと穿刺内容の培養が必要、という整理が教科書的です。
また、重症腎感染症の検討では、腎膿瘍は外科的治療(ドレナージ等)併用で解熱までの期間が短かったことが示され、抗菌薬単独に固執しない意義が示唆されています。
一方で水腎症性腎盂腎炎では保存的治療で治癒する例が多く、外科的治療がover treatmentになり得る、という“逆方向の落とし穴”も同報告で触れられています。
腎周囲膿瘍で実務的に効くのが「培養の取り方」です。
尿から菌が出にくい場面では、ドレナージしないと“原因菌不明のまま広域を漫然と継続”になりやすく、結果としてde-escalation不能→耐性リスク上昇→再燃、という悪循環に入ります。
隔壁化(多房性)では経皮ドレナージがうまく機能しないことがあり、その場合は外科的介入が必要になることがある、という点も「意外にハマるポイント」です。
なお、ドレナージは「入れたら終わり」ではなく、排液量・性状、炎症反応、画像での縮小を見ながら、カテーテル管理を含めた感染源コントロールとして運用します。
経験上の独自視点としては、腎周囲膿瘍では“尿路感染症の延長”という思い込みが強いと、腎機能低下時の用量調整やTDMの話題が後手になりやすい点が挙げられます。
特にアミノグリコシドなど安全域が狭い薬剤は腎機能低下時に注意が必要とされているため、腎機能・薬剤選択・ドレナージの3点を同じ重要度で並走させるのが事故を減らします。
参考:尿路感染症の抗菌薬選択・培養・de-escalation・CTの位置づけ(実務の根拠)
JAID/JSC 感染症治療ガイドライン 2015 ―尿路感染症・男性性器感染症―(PDF)
参考:重症腎感染症での保存的治療と外科的治療、解熱までの期間差(ドレナージ判断の背景)