腎静脈血栓症 症状 診断 検査 治療 予後

腎静脈血栓症 症状

腎静脈血栓症の臨床整理(医療従事者向け)
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まず疑うポイント

急性:側腹部痛・肉眼的血尿・尿量低下。慢性:無症状も多く、腎機能増悪や基礎疾患から逆算して拾う。

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検査の軸

尿検査(血尿・蛋白尿)+腎機能+画像(CT/MR/ドプラ)。侵襲の高い腎静脈造影は現在は限定的。

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治療の軸

抗凝固療法を基本に、重症急性例では血栓溶解療法やカテーテル血栓除去も検討。基礎疾患(ネフローゼ等)の管理が再発予防の要。

腎静脈血栓症 症状 急性型 腰背部痛 血尿

腎静脈血栓症(renal vein thrombosis:RVT)の症状は、発症様式で臨床像が大きく変わります。急性発症では腎梗塞を伴い得て、悪心・嘔吐、側腹部痛、肉眼的血尿、尿量低下など“腎虚血イベント”に近い症候で出てくることがあります。MSDマニュアル(医療者向け)でも、急性例では側腹部痛・肉眼的血尿・尿量低下などが典型として整理されています。参考:MSDマニュアル(プロフェッショナル版)腎静脈血栓症(症状と徴候) 腎静脈血栓症 – 03. 泌尿器疾患 – MSDマニュアル …

臨床の落とし穴は「腰背部痛+血尿=尿路結石」と短絡しやすい点です。RVTは頻度としては高くない一方、基礎に凝固亢進(ネフローゼ、先天性/後天性の凝固異常、悪性腫瘍など)があると、同じ“痛みと血尿”でも意味合いが変わります。MSDマニュアルでは原因としてネフローゼ症候群、凝固亢進性疾患、悪性腎腫瘍、外因性圧迫、外傷などが挙げられています。

急性例で診断のきっかけになりやすい所見(現場向けメモ)。

  • 突然の強い側腹部痛/腰背部痛(鎮痛で改善しにくい、再燃する)
  • 肉眼的血尿(“赤い尿”が明確)
  • 尿量低下〜乏尿(とくに片腎・両側病変、循環動態次
  • 悪心・嘔吐(腹部症状として出る)

腎静脈血栓症 症状 慢性型 無症状 側副血行路

慢性型では、血栓形成が緩徐なため側副血行路が発達し、症状を欠くのが一般的とされています。小児慢性特定疾病情報センターの解説でも、慢性型は症状が乏しいこと、急性型は突然の強い腰背部痛や肉眼的血尿を訴えやすいことが明確に区別されています。参考:小児慢性特定疾病情報センター「腎静脈血栓症 概要(臨床所見)」 https://www.shouman.jp/disease/details/02_10_030/

慢性型で重要なのは「症状がないから除外」ではなく、「背景と検査で拾う」視点です。ネフローゼ症候群、悪性腫瘍(腎細胞癌など)、外部圧迫、脱水、妊娠、エストロゲン療法など、血栓ができる文脈が揃っている時に、腎機能悪化・蛋白尿の変化・説明困難な血尿などからRVTを候補に残すのが安全です(原因が明白でない場合は凝固亢進性疾患の評価を開始すべきとMSDマニュアルでも述べられています)。

慢性型で臨床的に“拾い上げ”につながるポイント。

  • ネフローゼの患者で、浮腫や蛋白尿の波に加えて腎機能が想定以上に悪化する
  • 「腎の腫大がない」「血尿も目立たない」ため、画像を撮らない限り気づきにくい(慢性型では検査異常が乏しいことが多い)
  • 下大静脈血栓症へ進展すると、ネフローゼの程度に比して下肢浮腫が目立ちやすい(小児慢性特定疾病情報センター)

腎静脈血栓症 症状 診断 画像検査 CT MRI ドプラ

RVTは「疑い→画像で血栓を証明して確定」という流れが基本です。小児慢性特定疾病情報センターでは、臨床所見から疑い、画像検査で腎静脈内血栓を証明して確定診断と整理されています。MSDマニュアルでも診断はCT、MRアンギオグラフィー(MR静脈造影を含む)、または腎静脈造影によるとされています。

画像モダリティ選択の実務上の勘所は、“腎機能と侵襲性”のバランスです。MSDマニュアルでは、CT血管造影は感度・特異度とも高く迅速だが造影剤投与が必要で、GFRが30mL/min未満では避けるべきとされています。一方、MR静脈造影は放射線被曝がない利点があるものの、腎機能低下ではガドリニウム関連の腎性全身性線維症(NSF)リスクに配慮が必要とされています。

ドプラ超音波は“手軽だが過信しない”がポイントです。MSDマニュアルでは、ドプラ超音波は検出できることがある一方、偽陰性率・偽陽性率が高いと述べています。小児慢性特定疾病情報センターでも、腎臓は深部臓器で描出困難例があるが熟練者なら高率に描出でき、侵襲もなく有用としています(施設の技術差が診断能に直結しやすい領域です)。

現場での検査の組み立て(例)。

  • 尿検査:血尿・蛋白尿(急性型では血尿・蛋白尿を認めることがある)
  • 血液:腎機能悪化の確認(MSDマニュアル)
  • 画像:造影CT(可能なら)/MR静脈造影(腎機能に配慮)/ドプラUS(スクリーニング・フォロー)

腎静脈血栓症 症状 治療 抗凝固療法 ヘパリン ワルファリン

治療は「基礎疾患の治療+抗凝固療法」が中核です。MSDマニュアルでは、治療として抗凝固療法、腎機能の維持、基礎疾患の治療が挙げられ、侵襲的介入がない場合は低分子ヘパリンまたは経口ワルファリンによる長期抗凝固療法を直ちに開始すべきとされています。抗凝固療法は新規血栓リスクを最小化し、再開通を促進して腎機能を改善する可能性があるとも記載されています。

治療期間の目安も実務上は重要です。MSDマニュアルでは抗凝固療法を少なくとも6〜12カ月継続し、持続性ネフローゼ症候群など凝固亢進性疾患がある場合は無期限に継続するとしています。一方、小児慢性特定疾病情報センターでは、初期にヘパリン(最近は低分子ヘパリンが多い)を使用し、その後ワルファリンへ切り替え、INR 1.5〜2.0を目標に調整する、とかなり具体的な運用が示されています(施設基準や患者背景で調整が必要)。

急性で腎障害が強いケースでは、抗凝固だけでなく血栓溶解療法や血栓除去が検討対象になります。MSDマニュアルでは、AKIを来した急性RVT患者には血栓溶解療法と場合により血栓除去を行うべきで、現在は経皮的カテーテルを用いた方法が推奨されるとされています。小児慢性特定疾病情報センターでも、血栓が下大静脈まで進展し肺梗塞リスクが高いとき、両側性RVT、ヘパリンで改善がないときなどに線溶療法併用を限定的に考慮するが、出血合併症リスクが上がる点が強調されています。

臨床での注意点(出血リスクとバランス)。

  • 血栓を急いで溶かすほど出血リスクが上がるため、適応は“重症度・進展度・合併症リスク”で決める
  • 造影検査・介入の前後で腎機能/循環/出血リスクを再評価する
  • 基礎疾患(ネフローゼ、悪性腫瘍、圧迫、脱水など)の是正が再発予防の中心になる

腎静脈血栓症 症状 見逃し サイド差 尿管 陥凹

検索上位の一般的な解説では、RVTの“意外な拾い上げ所見”として語られにくいのが、慢性例の画像所見です。MSDマニュアルでは、側副静脈の拡張に起因する尿管の陥凹が、一部の慢性症例では特徴的な所見になり得るとされています。つまり、腎そのものの所見が乏しい慢性RVTでも、「尿管が外から押されているように見える」という“間接所見”がヒントになることがあります。

この所見が役立つ場面は、たとえば「腎機能がじわじわ悪化しているが、結石や腫瘍らしい決定打がない」「ネフローゼや血栓リスクがある」など、臨床的な疑いが残る状況です。CTやMRIを読影する際、腎静脈の直接所見(充盈欠損など)だけでなく、側副血行路の発達サインや尿管周囲の変化にも目を配ると、追加検査や再構成画像依頼につながります。もちろん単独では特異的ではないため、症状・リスク・他検査と合わせて“疑いの補強材料”として使うのが安全です。

見逃しを減らすための現場チェック(独自の運用例)。

  • 「腰背部痛+血尿」で結石が否定的なとき、血栓リスク(ネフローゼ、脱水、悪性腫瘍、凝固異常)を必ず確認する
  • 慢性リスク症例では「無症状でもRVTはあり得る」を前提に、腎機能悪化の説明変数として残す
  • 画像では腎静脈だけでなく、側副血行路・尿管の陥凹など間接所見も拾う(MSDマニュアル)