ジアゼパムの強さと作用時間、他の抗不安薬との効果の比較

ジアゼパムの強さとその特徴

ジアゼパムの特徴早わかり
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作用時間

長時間作用型に分類され、効果が長く持続します 。

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強さ(力価)

抗不安薬の中では中程度の強さとされています 。

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注意点

眠気やふらつき、長期連用による依存や離脱症状に注意が必要です 。

ジアゼパムの強さを示す力価と作用時間

 

ジアゼパムは、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬に分類され、その「強さ」すなわち力価は、他の同系統の薬剤と比較する際の重要な指標となります 。一般的に、ジアゼパム5mgが力価比較の基準として用いられることが多く、抗不安薬の中では「中程度」の力価に位置づけられています 。これは、アルプラゾラム(ソラナックス®など)やロラゼパムワイパックス®など)といった高力価の薬剤に比べると穏やかですが、クロチアゼパム(リーゼ®)などと比較すると強い作用を持つことを意味します 。
ジアゼパムのもう一つの大きな特徴は、その作用時間の長さです 。薬物の効果が半減するまでの時間を示す「半減期」が20~70時間と非常に長く、個人差も大きいとされています 。さらに、ジアゼパムは体内で代謝される過程で「ノルジアゼパム」などの活性代謝物を生成します 。この活性代謝物自体も薬理作用を持ち、特にノルジアゼパムの半減期は非常に長いため、ジアゼパム自体の効果と合わせて、全体として長時間にわたり安定した効果が持続します 。この特性から、ジアゼパムは「長時間作用型」の抗不安薬に分類され、不安状態を継続的に抑制する目的や、アルコール離脱症状の管理などに用いられます 。

参考)ベンゾジアゼピン系抗不安薬の作用時間・効果による使い分け -…


しかし、この長い作用時間は、副作用の持続や薬物の体内蓄積につながる可能性も意味します 。特に高齢者では代謝・排泄機能が低下しているため、眠気やふらつきといった副作用が翌日以降にも持ち越される「ハングオーバー」が起こりやすく、転倒のリスクを高めるため慎重な投与が求められます 。作用発現は比較的速やかですが 、最高血中濃度に達するまでの時間は約1時間とされており、即効性を最優先する場面よりも、持続的な効果を期待する場合に適した薬剤と言えるでしょう 。

参考)https://www.maruishi-pharm.co.jp/media/horizon-injection_if_20240105.pdf


以下のリンクは、ジアゼパムの薬物動態に関する詳細なインタビューフォームです。
ジアゼパム錠 医薬品インタビューフォーム

ジアゼパムと他のベンゾジアゼピン系抗不安薬との効果比較

ジアゼパムは、多くのベンゾジアゼピン系抗不安薬が存在する中で、そのバランスの取れた作用から基準薬として位置づけられています 。ここでは、代表的な薬剤であるロラゼパム(ワイパックス®)やアルプラゾラム(ソラナックス®)との違いを中心に、その効果を比較します。
ジアゼパム vs. ロラゼパム vs. アルプラゾラム

比較項目 ジアゼパム (セルシン®) ロラゼパム (ワイパックス®) アルプラゾラム (ソラナックス®)
力価(強さ) 中程度 (5mgが基準)

参考)セルシンの効果を徹底解説!不安や緊張への作用と注意点

ジアゼパムの約2~3倍 ​ ジアゼパムの約10倍 ​
作用時間 長時間型 ​ 中間型 ​ 短時間~中間型 ​
主な作用 抗不安・鎮静・筋弛緩・抗けいれん

参考)https://med.sawai.co.jp/file/pr22_102.pdf

抗不安・鎮静・催眠 ​ 抗不安・鎮静・催眠 ​
特徴 作用が穏やかで持続的

参考)抗不安薬について①|川崎市の心療内科・精神科の高津心音メンタ…

​。活性代謝物あり ​。

抗けいれん作用が強い ​。代謝が比較的安定 ​。 抗不安作用が強力で即効性も期待できる ​。
依存・離脱 離脱症状は比較的穏やかだが長引く可能性 ​。 作用時間が短いため離脱症状が出やすい ​。 作用時間が短いため離脱症状が出やすい ​。


その他の抗不安薬との比較

このように、ジアゼパムは力価こそ中程度ですが、作用時間が長いという他の薬剤にはない特徴を持っています 。そのため、パニック発作のような突発的な強い不安に対して頓服で使用するよりも、全般性不安障害のように持続的な不安をコントロールするのに適していると言えます 。処方にあたっては、患者の症状、ライフスタイル、そして依存性へのリスクを総合的に評価し、最適な薬剤を選択することが極めて重要です。

以下のリンクでは、各種ベンゾジアゼピン系抗不安薬の作用時間や効果の強さを比較した解説が記載されています。
ベンゾジアゼピン系抗不安薬の作用時間・効果による使い分け

ジアゼパムの副作用と注意すべき離脱症状

ジアゼパムは有効な治療薬である一方、いくつかの注意すべき副作用が存在します 。最も頻度が高い副作用は、**眠気、ふらつき、倦怠感**といった中枢神経抑制作用に関連するものです 。これらの症状は、特に服用初期や増量時に現れやすく、自動車の運転や危険を伴う機械の操作は避けるよう指導することが不可欠です 。高齢者では、これらの副作用が転倒や骨折につながるリスクを高めるため、特に慎重な観察が必要です 。
また、ジアゼパムを含むベンゾジアゼピン系薬剤に共通する重大な問題として、依存と離脱症状が挙げられます 。

参考)ジアゼパムの効果や副作用


依存性:
長期間にわたって服用を続けると、薬がないと精神的・身体的に不調を感じる「依存」が形成されるリスクがあります 。同じ効果を得るためにより多くの量が必要になる「耐性」が形成されることも依存の一環です。

参考)くすりのしおり : 患者向け情報


離脱症状:
長期服用後に自己判断で急に中断したり、急激に減量したりすると、以下のようなつらい離脱症状が現れることがあります 。

参考)ジアゼパムのすべて|効果・副作用から危険な個人輸入まで解説|…

  • 精神症状: 不安感の増強、不眠、イライラ、焦燥感、集中困難、抑うつ、幻覚、妄想​
  • 身体症状: 頭痛、吐き気、筋肉のけいれん・こわばり、手足の震え、発汗、動悸、めまい、光や音への過敏​

ジアゼパムは作用時間が長い分、急激な血中濃度の低下が起こりにくいため、短時間作用型の薬剤に比べて離脱症状は比較的穏やかであると言われることもあります 。しかし、半減期が長い活性代謝物の影響で、減薬してから数日~1週間以上経ってから症状が現れたり、症状が長く続いたりする可能性があり、注意が必要です 。

その他の副作用として、まれに刺激興奮や錯乱といった逆説的な反応や、呼吸抑制が報告されています 。特に、他の呼吸抑制作用のある薬剤との併用には注意が必要です。妊婦や授乳婦への投与も、新生児への影響(離脱症状や黄疸増強など)が報告されているため、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ使用されます 。

参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00001779.pdf


ジアゼパムを安全に使用するためには、漫然とした長期投与を避け、定期的に必要性を見直すことが重要です。減薬・中止を検討する際には、必ず専門家の指導のもと、時間をかけてゆっくりと行う「漸減法」が原則となります。
以下のリンクは、ジアゼパムの副作用や離脱症状について解説している公的な情報源です。
ジアゼパム錠2「サワイ」 | くすりのしおり

ジアゼパムの筋弛緩作用がもたらす治療への応用と注意点

ジアゼパムの薬理作用は抗不安作用や鎮静作用がよく知られていますが、臨床現場で意外なほど重要かつ有用なのが「筋弛緩作用」です 。この作用は、中枢神経系、特に脊髄反射を抑制することによって、筋肉の過度な緊張を和らげる効果をもたらします 。この特性を活かし、ジアゼパムは不安や不眠の治療だけでなく、様々な領域で応用されています。
筋弛緩作用の治療応用例:

  1. 肩こりや腰痛症: 精神的なストレスによって筋肉がこわばることで生じる緊張型頭痛や、肩こり、腰痛症の治療に用いられることがあります 。筋緊張を直接的に緩和することで、痛みの悪循環を断ち切る助けとなります。​
  2. 脳性麻痺などの痙性麻痺: 脳や脊髄の障害によって起こる筋肉のつっぱり(痙縮)を和らげる目的で使用されます。歩行機能の改善や日常生活動作の向上に寄与することがあります。
  3. 破傷風に伴う筋痙攣: 破傷風菌による毒素が引き起こす全身の激烈な筋肉の痙攣に対して、その症状を緩和するために不可欠な薬剤の一つです。
  4. 歯科治療や小手術前の緊張緩和: 治療に対する強い不安や恐怖心から体に力が入ってしまう患者に対し、麻酔前投薬として使用することで心身のリラックスを図り、安全でスムーズな処置をサポートします 。​

このように、ジアゼパムの筋弛緩作用は、精神科領域にとどまらず、整形外科、神経内科、リハビリテーション科など幅広い分野でその価値を発揮します。
筋弛緩作用に伴う注意点と独自のリスク管理:
一方で、この筋弛緩作用は副作用と表裏一体の関係にあります。特に注意すべきは以下の点です。

  • 転倒リスク: 筋弛緩作用により、ふらつきや脱力感が生じやすくなります 。特に、筋力が低下している高齢者では、夜間のトイレ歩行時などに転倒し、骨折などの重大な怪我につながるリスクが格段に高まります。処方時には、夜間は足元を明るくする、手すりを設置するなどの具体的な生活指導を併せて行うことが、独自のリスク管理として非常に重要です。​
  • 嚥下機能への影響: のどの筋肉の弛緩は、嚥下(飲み込み)機能の低下につながる可能性があります。高齢者や神経疾患を持つ患者では、誤嚥性肺炎のリスクを増大させる恐れがあるため、食事中のむせや食べこぼしなどの兆候に注意を払う必要があります。
  • 睡眠時無呼吸症候群(SAS)の悪化: ジアゼパムは呼吸中枢を抑制する作用も持つため 、SASの患者では、筋弛緩作用と相まって上気道の閉塞を助長し、無呼吸の頻度や時間を増加させる危険性があります。SASが疑われる患者への安易な処方は避けるべきです。​

ジアゼパムの筋弛緩作用は、多くの患者に恩恵をもたらす強力な武器ですが、その刃は諸刃の剣でもあります。患者の年齢、身体機能、合併症などを多角的に評価し、その恩恵がリスクを上回るかを慎重に判断することが、医療従事者には求められます。

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