医薬品陳列ルールと指定第2類の7メートルと構造設備規則

医薬品陳列ルールの重要ポイント
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7メートルルール

指定第2類医薬品は情報提供カウンターから7m圏内に陳列

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第1類・要指導

客の手が届かない場所か、鍵のかかる設備に陳列が必須

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照明の明るさ

陳列場所は60ルクス以上、調剤台は120ルクス以上が必要

医薬品陳列ルールと薬機法の詳細

医薬品の陳列は、単に商品を並べるだけではなく、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)および薬局等構造設備規則によって厳格に管理されています。これらのルールは、消費者が適切な情報提供を受けずに医薬品を購入し、健康被害に遭うことを防ぐために設けられています。特にリスク区分に応じた陳列場所の制限や、医薬品とそれ以外(医薬部外品や健康食品)の明確な区別は、店舗運営において最も基本的なコンプライアンス事項です。実地指導において行政担当官が必ずチェックする項目であり、違反した場合は行政処分の対象となる可能性があるため、店長や管理者は細部までルールを把握しておく必要があります。

参考)https://www.city.suita.osaka.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/015/936/121729111443.pdf

指定第2類医薬品の7メートルルールと情報提供の設備

 

指定第2類医薬品は、第2類医薬品の中でも特に注意を要するものとして厚生労働大臣が指定した医薬品です。これらには、風邪薬や解熱鎮痛薬、水虫薬などが含まれ、日常生活で頻繁に使用される一方で、副作用や相互作用のリスクも無視できません。そのため、薬機法では「指定第2類医薬品を陳列する場合には、情報提供を行うための設備から7メートル以内の範囲に陳列しなければならない」と定められています。

参考)https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002w4wd-att/2r9852000002w511_1.pdf

この「7メートル」という距離は、薬剤師や登録販売者が購入者の挙動に目を配り、必要に応じてすぐに情報提供や相談対応ができる物理的な限界距離として設定されています。具体的には、情報提供を行うカウンター(相談応需場所)の中心から、指定第2類医薬品が陳列されている棚の最も遠い端までの直線距離が7メートル以内でなければなりません。

参考)http://fksm.sakura.ne.jp/keijisetumei_tenpo.pdf

もし、店舗のレイアウト上の都合で7メートル以内に陳列できない場合は、以下のいずれかの措置を講じる必要があります。

  • 鍵をかけた陳列設備に陳列する:購入者が自由に手に取れないようにし、購入の意思を示した際に必ず資格者が対応するフローを強制する。

    参考)Q.1 陳列施設から「1.2mの範囲」という1.2mという数…

  • 指定第2類医薬品を陳列する陳列設備から1.2メートル以内の範囲に、通常、薬剤師又は登録販売者が常駐する:現実的にはシフト管理等の面で難易度が高いため、鍵付き陳列か7メートル以内の遵守が一般的です。

このルールは「ついで買い」を誘発するようなレジ横の陳列や、季節ごとのプロモーション棚を展開する際に見落とされがちです。特にエンド陳列(棚の端)で指定第2類医薬品を展開する場合、カウンターからの距離が7メートルを超えていないか、メジャー等を用いて実測確認することが推奨されます。

参考リンク。

厚生労働省による指定第2類医薬品の陳列等に関する取り扱いの詳細

指定第2類医薬品について – 厚生労働省

第1類と要指導医薬品の鍵と陳列区画の制限

第1類医薬品(ロキソニン等)や要指導医薬品(スイッチ直後の医薬品等)は、副作用のリスクが高かったり、使用実績が少なかったりするため、薬剤師による対面での書面を用いた情報提供が義務付けられています。このため、これらの医薬品の陳列には最も厳しい制限が課されています。

参考)https://www.kpa.or.jp/docs/download/6ef8075b9ee65d7e44a582d4f40a6306.pdf

原則として、第1類医薬品および要指導医薬品は、「購入者が直接手の触れられない陳列設備」に陳列しなければなりません。これには具体的に以下の2つの方法があります。

  1. 鍵をかけた陳列設備

    ガラスケース等に入れ、鍵をかけることで、購入希望者が勝手に商品を取り出せないようにします。鍵の管理は薬剤師が行い、販売時に初めて商品が取り出される運用となります。

  2. 購入者が進入できない区画への陳列

    調剤室や、カウンターの後ろ側(バックカウンター)など、従業員のみが立ち入れるエリアに陳列します。顧客側には空箱(ダミーケース)のみを陳列し、レジで現物と交換する方式もこれに該当します。

    参考)7メートルルール – 流通用語集 –…

ここで重要なのは、「陳列区画」の概念です。要指導医薬品陳列区画や第1類医薬品陳列区画は、情報提供を行う場所(カウンター)の内部または近接する場所に設置する必要があります。例えば、薬剤師が不在の時間帯がある店舗では、これらの区画をシャッターやカーテンで閉鎖できる構造(閉鎖陳列)にしておく必要があります。

参考)一般医薬品

また、これらの医薬品は、他のリスク区分(第2類、第3類)と明確に区分して陳列する必要があります。混在陳列は厳禁であり、棚の列を変える、仕切り板で分けるなど、顧客が見て即座にリスク区分が分かるように表示を行う義務もあります。実地指導では、空箱陳列であっても、その空箱が顧客の手に届く場所に置かれている場合、誤認を招かないよう「空箱です」といった明示や、第1類医薬品である旨の表示が適切になされているかが確認されます。

参考)福岡市 医薬品販売制度に関する情報ペ−ジ(事業者向け)

医薬品と医薬部外品の区別と混在陳列の禁止

ドラッグストアや薬局では、医薬品だけでなく、医薬部外品(リポビタンDなどの一部ドリンク剤、薬用歯磨き粉など)、化粧品、健康食品など多種多様な商品が扱われています。しかし、薬機法では「医薬品を他の物と区別して貯蔵・陳列しなければならない」と規定されています。これは、消費者が医薬品ではないものを医薬品と誤認して購入したり、逆に医薬品をただの食品感覚で購入したりすることを防ぐためです。

参考)https://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/02/dl/s0222-5c.pdf

特に注意が必要なのが、「混在陳列」です。例えば、以下のようなケースは不適切とみなされる可能性があります。

  • ドリンク剤の棚

    「第2類医薬品」「第3類医薬品」のドリンク剤と、「医薬部外品」や「清涼飲料」のドリンク剤を、明確な区分けなしに同一の棚に並べること。

  • ビタミン剤やサプリメント

    医薬品のビタミン剤と、健康食品(サプリメント)のビタミン剤を混ぜて陳列すること。

  • 保湿クリーム

    医薬品の保湿剤(第2類、第3類)と、化粧品や医薬部外品のハンドクリームを隣接させて、境界が曖昧なまま陳列すること。

これらを防ぐためには、棚板単位で分ける、あるいは同一棚内であっても「医薬品コーナー」「健康食品コーナー」といったPOPや仕切り板(ディバイダー)を用いて、物理的かつ視覚的に明確に区画を分ける必要があります。法令上は「10cm離せばよい」といった具体的な数値基準はありませんが、「購入者が陳列の状態を見て、明確に区別できること」が求められます。

また、医薬品のリスク区分間(第1類、第2類、第3類)の混在も禁止されています。指定第2類医薬品についても、第2類医薬品の枠内であっても、さらに「指定第2類」であることが分かるように陳列する必要があります。棚替えや新商品導入の際、スペースが足りずに「とりあえず空いている場所に置く」といった対応をすると、意図せず混在陳列違反となるケースが多いため注意が必要です。

参考)一般用医薬品の販売制度に関する事項

参考リンク。

医薬品販売制度の概要と陳列における法令遵守のポイント

医薬品販売制度の概要 と 法令遵守のポイント – 薬局等構造設備規則

構造設備規則における照明の明るさと60ルクス

医薬品の陳列に関して、意外と見落とされがちなのが「照明の明るさ(照度)」に関する規定です。薬局等構造設備規則では、店舗の明るさについて具体的な数値基準を設けています。

参考)e-Gov 法令検索

  • 医薬品を通常陳列し、又は交付する場所60ルクス以上
  • 調剤台の上(調剤を行う場合): 120ルクス以上

この「60ルクス」という基準は、購入者が医薬品の添付文書やパッケージの記載事項(成分、効能・効果、使用上の注意など)を誤りなく読むために必要な最低限の明るさとして定められています。薄暗い店舗では、高齢者などが文字を読み取れず、誤使用につながる恐れがあるためです。

参考)薬局(調剤薬局)が内装で意識するポイント!こだわるべき理由も…

現代の一般的なドラッグストアや調剤薬局であれば、通常のLED照明下では数百〜1000ルクス程度あるため、全体照明としては問題になることは少ないでしょう。しかし、注意が必要なのは「局所的な暗がり」です。

  • 棚の最下段や、什器の影になる部分
  • 倉庫兼店舗のようなバックヤードに近いエリア
  • 節電のために一部の照明を消灯している場合
  • 間接照明を多用した、雰囲気重視の高級感ある店舗デザイン

このような場合、特定の陳列箇所が60ルクスを下回る可能性があります。実地指導では、照度計を用いて実際の売り場の明るさを測定することもあります。特にリノベーションや居抜き出店を行う際は、照明設計の段階でこの「陳列場所60ルクス以上」という法的要件をクリアしているか確認することが不可欠です。

参考)調剤薬局の新装、リフォーム・リノベーション内装工事【上京区】

医薬品陳列ルールと濫用防止のための販売規制の強化

近年、若者を中心とした市販薬のオーバードーズ(過剰摂取)が社会問題化しており、これに伴い医薬品の陳列や販売に関する規制も強化される傾向にあります。これは単なる陳列場所の問題にとどまらず、「濫用等のおそれのある医薬品」として指定された成分を含む製品の取り扱いに関わる重要な論点です。

参考)【2025年成立】改正薬機法のポイントをわかりやすく解説!コ…

「濫用等のおそれのある医薬品」には、エフェドリン、コデイン、ジヒドロコデイン、ブロムワレリル尿素などの成分を含む鎮咳去痰薬(咳止め)や解熱鎮痛薬などが該当します。これらの医薬品を陳列する際は、以下の点に留意する必要があります。

  1. 個数制限への対応

    原則として1人1個までの販売とすることや、複数個購入する理由の確認が義務付けられています。そのため、陳列においても、客が一度に大量に手に取れないような工夫(空箱陳列や、棚に出す数量を制限する)が有効な対策となります。

  2. 陳列場所の視認性

    これらの医薬品は指定第2類医薬品に含まれることが多いため、前述の「7メートルルール」が適用されます。しかし、単に距離を守るだけでなく、薬剤師や登録販売者の目が届きやすい位置(例えばカウンターの正面や、死角にならない棚)に配置することが、濫用防止の観点から強く推奨されます。

  3. POP等による啓発

    陳列棚に「過剰摂取の危険性」や「販売個数制限」を知らせる掲示を行うことは、顧客への注意喚起だけでなく、店舗として適正販売に取り組んでいる証左としても重要です。

2025年以降の法改正の議論においても、20歳未満への販売制限や、本人確認の厳格化が盛り込まれる方向で進んでいます。単に「ルールだから陳列場所を守る」という受動的な姿勢ではなく、「なぜその場所に陳列するのか(=乱用を防ぎ、適正使用を守るため)」という意図を持った売り場作りが、これからの店舗運営には求められます。独自視点として、これら「濫用おそれ医薬品」をあえて目立つゴールデンライン(視線の高さ)から外し、相談カウンターに近づけるといったレイアウト変更は、コンプライアンスと顧客の安全を守る上で非常に効果的な施策と言えるでしょう。

参考)https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/report_pdf/202424050A-sokatsu_1.pdf



【指定第2類医薬品】イブA錠EX 40錠