萎縮型加齢黄斑変性 治療薬 地図状萎縮 診断基準

萎縮型加齢黄斑変性 治療薬

この記事のポイント
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診断の軸は「地図状萎縮」

萎縮型加齢黄斑変性では、地図状萎縮の定義と画像所見の押さえ方が治療薬選択や経過観察の質を左右します。

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治療薬は「進行抑制」が主目的

補体を標的とする薬剤は、視機能を“戻す”よりもGAの進行速度を“遅らせる”設計思想で説明すると理解が揃います。

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評価指標は面積だけにしない

GA面積に加え、中心窩との位置関係、症状・QOL、併存所見の拾い上げで現場の意思決定が安定します。


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萎縮型加齢黄斑変性 治療薬の前提となる地図状萎縮 診断基準

 

萎縮型加齢黄斑変性(いわゆるdry AMDの中核病態)を“治療薬の対象として語る”とき、まず臨床で共通言語にすべきなのが「地図状萎縮(GA)」の定義です。日本眼科学会が示す診断基準では、地図状萎縮の必須所見として、(1)直径250μm以上、(2)円形・卵円形・房状または地図状、(3)境界鮮明、(4)網膜色素上皮の低色素または脱色素変化、(5)脈絡膜中大血管が明瞭に透見可能、の5点をすべて満たすことが挙げられています。

この「250μm」「境界鮮明」「脈絡膜中大血管透見」は、現場の説明や紹介状にも落とし込みやすいチェック項目で、治療薬の適応判断や病勢の共有に直結します。

加えて同基準では、重症度分類として「地図状萎縮と中心窩の位置関係」や随伴所見により軽症・中等症・重症に分類する考え方が示されています。

参考)https://jamanetwork.com/journals/jamaophthalmology/articlepdf/2818579/jamaophthalmology_fu_2024_oi_240023_1714675197.23407.pdf

治療薬の価値を患者に説明する際、「中心窩に近いかどうか」「中心窩を巻き込む速度が問題か」という見立てに翻訳できると、期待値のズレ(“注射すれば視力が戻るはず”)を早期に是正できます。

  • 診断の最小セット:地図状萎縮の5必須所見をカルテに定型文で残す。
  • 病勢共有のコツ:中心窩との距離(中心窩温存か否か)を必ず記載する。
  • 「萎縮型=治療なし」からの転換:治療薬の議論は“GAの進行抑制”を前提に設計する。

萎縮型加齢黄斑変性 治療薬 アイザベイ(補体第5成分阻害薬)の薬理と位置づけ

日本の医療用医薬品情報として、アイザベイ硝子体内注射液20mg/mLは一般名アバシンカプタド ペゴルナトリウムで、薬効分類名に「眼科用補体第5成分阻害薬」「ポリエチレングリコール共役RNAアプタマー」と記載されています。

ここが重要で、いわゆる“抗VEGFの延長線”ではなく、補体(炎症・免疫反応の一部)に介入してGAの進行を遅らせるという設計思想を、医療従事者間で最初に握っておく必要があります。

臨床成績の提示でも、アイザベイではGA面積を平方根変換した解析(MMRM解析)が示され、12カ月時点で群間差(平均成長速度の差)としてマイナス方向の差が提示されています。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11733175/

さらに24カ月では毎月投与群・隔月投与群それぞれの推定値が示され、臨床的には「継続投与で進行速度を抑える」フレーミングで説明が組み立てやすい構造です。

一方で、同資料には視力(文字数)の変化量も提示されており、GA進行抑制と視力アウトカムが必ずしも単純に一致しない現実も読み取れます。

そのため、患者説明や院内共有では「目的:GA進行抑制」「評価:GA面積+中心窩への拡大+自覚症状」をセットで置くと、治療継続の意思決定が揺れにくくなります。

  • 作用標的:補体第5成分(C5)阻害という“病態介入”の文脈で理解する。
  • アウトカム設計:GAの進行速度(面積)と視機能は分けて評価する。
  • 投与設計:毎月・隔月などの選択は、通院負担と病勢(中心窩との位置関係)で現実的に調整する。

萎縮型加齢黄斑変性 治療薬の安全性と「硝子体内注射」実務の要点

アイザベイの副作用情報として、結膜出血・結膜充血・眼痛などの眼障害が“5%以上”の頻度区分に掲載され、点状角膜炎、硝子体浮遊物、霧視、ドライアイ、高眼圧症なども頻度区分で整理されています。

また、結膜炎など感染症の記載や、角膜擦過傷、眼内注射合併症といった「処置そのものに伴う事象」も並列で掲載されており、薬剤固有のリスクと手技関連リスクを分けて説明する必要があることが分かります。

臨床の現場では、dry AMDの患者は「症状が緩やか」「治療経験が少ない」層が一定数いるため、注射後の違和感や霧視、浮遊物の訴えが強く出やすい印象があります。そこで、説明は“頻度が高いが多くは軽度で一過性になり得るもの”と、“緊急受診すべき兆候”を明確に二分します。

  • よくある訴え(説明必須):結膜出血、眼痛、霧視、硝子体浮遊物。
  • 手技関連として拾う視点:角膜擦過傷、眼内注射合併症などは薬効評価と切り分ける。
  • 院内オペレーション:投与当日〜翌日の連絡導線(電話・時間外)を先に渡すと不安が減る。

萎縮型加齢黄斑変性 治療薬の効果判定:GA面積、中心窩への拡大、視機能のズレ

添付文書レベルの情報でも、アイザベイでは「GA面積(平方根変換)」の成長速度が主要な解析として提示され、12カ月・24カ月の推定値が示されています。

同時に視力(文字数)の変化量も示され、GA進行抑制がそのまま視力改善として表れない可能性を前提にモニタリング設計を作る必要があります。

ここで実務的に効くのが、日本眼科学会の診断基準が示す「中心窩との位置関係」という概念です。

GAが中心窩を温存している段階では、面積が増えていても患者の“中心視力”が保たれやすく、逆に中心窩に迫ると小さな変化でも自覚症状が急に悪化します。

治療薬の評価では、画像上の面積と患者の主観(読書・運転・顔認識など)のズレを“想定内”として扱い、説明に組み込むことで中断や不信感を減らせます。jamanetwork+1​

  • 画像評価:GA面積(できれば同一条件で時系列比較)。
  • 構造評価:中心窩温存か、中心窩への拡大が起きているか。
  • 機能評価:視力だけでなく、霧視・暗所での見え方・コントラスト低下の聞き取りも併用する。

萎縮型加齢黄斑変性 治療薬の独自視点:薬剤情報を「診断基準の文」に戻して説明する

検索上位の一般向け記事は「新薬が出た」「注射で進行を遅らせる」といった要点整理が中心になりがちですが、医療従事者向けに一段深くするなら、薬剤説明を“診断基準の文言”へ戻して語るのが有効です。

たとえば「地図状萎縮=境界鮮明で、脈絡膜中大血管が透見できる病変が250μm以上」という基準は、患者説明では「色素上皮が抜けて下の血管が透けて見える範囲が、一定以上になった状態」と翻訳できます。

そのうえで治療薬は「失われた組織を元に戻す」ではなく、「広がる速度(成長速度)を抑える」という、資料に沿った表現に置き換えると、患者の納得感が上がりやすくなります。

この枠組みは、紹介元・紹介先、外来担当間、視能訓練士や看護師との連携でも同様に効きます。つまり、診断基準(何をもってGAと呼ぶか)→重症度(中心窩との関係)→治療薬(進行抑制)→評価(面積+中心窩+症状)という“一本道”にしておくと、説明のブレが減ります。jamanetwork+1​

  • 説明の芯:診断基準の言葉(地図状萎縮の必須所見)を起点にする。
  • 期待値調整:“進行抑制”を最初に言い、視力は短期変化が乏しい可能性も先に共有する。
  • チーム医療:看護説明は副作用(結膜出血・眼痛など)と緊急受診の線引きに集中させる。

治療薬と診断の根拠(地図状萎縮の必須所見)。

日本眼科学会「萎縮型加齢黄斑変性の診断基準」:地図状萎縮の必須所見(250μm以上、境界鮮明、脈絡膜中大血管の透見など)と重症度分類の考え方。

治療薬(補体第5成分阻害薬)の基本情報(薬効分類・副作用・臨床成績の見方)。

KEGG MEDICUS「アイザベイ硝子体内注射液」:薬効分類(C5阻害薬)、副作用の頻度区分、GA面積(平方根変換)の解析結果、視力(文字数)の変化量など。

眼科 2024年7月号 萎縮型加齢黄斑変性の現状