石綿障害予防規則パンフレットの活用法と事業者義務

石綿障害予防規則パンフレット活用と事業者責任

石綿障害予防規則パンフレットの要点
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事前調査の実施義務

建築物等の解体・改修工事前に石綿含有の有無を調査し、結果を報告

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作業主任者の選任

石綿作業主任者技能講習修了者から選任し、労働者の安全管理を実施

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特別教育の実施

石綿取扱い作業従事者への法定教育プログラムを4.5時間以上実施

石綿障害予防規則パンフレットの基本構成と重要性

厚生労働省が作成する石綿障害予防規則パンフレットは、平成17年7月1日から施行された石綿障害予防規則の内容を事業者や労働者に分かりやすく説明した重要な資料です 。このパンフレットには建築作業者向けと建物所有者向けの2種類が用意されており、それぞれ異なる立場での石綿対策について詳細に解説されています 。石綿は肺がんや中皮腫などの深刻な健康被害を引き起こす可能性があるため、建築物の解体工事では特に慎重な対応が必要とされています 。
参考)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/sekimen/other/pamph/index.html
パンフレットには石綿の有害性から具体的な防護措置まで、実務に即した情報が網羅的に記載されており、現場での教育資料として活用されています 。令和2年の改正により事前調査結果の報告制度が導入され、令和4年4月1日からは一定規模以上の工事について石綿の有無調査結果を労働基準監督署等へ報告することが義務化されました 。これらの新しい規制についても、最新のパンフレットには詳細な手順が記載されています。
参考)https://archives.asbestos-center.jp/yoboukisoku2005/

石綿障害予防規則における事前調査義務と調査者資格

石綿障害予防規則では、建築物、工作物、船舶の解体・改修作業を行う際に、工事の規模や請負金額に関わらず石綿等の有無を調査する事前調査が原則として全ての工事で義務付けられています 。この事前調査は設計図書などの文書と目視による調査を基本とし、調査結果は3年間保存することが求められています 。令和5年10月1日からは、建築物の解体等作業を行う場合の事前調査について、「建築物石綿含有建材調査者」または令和5年9月30日までに日本アスベスト調査診断協会に登録された有資格者が実施することが義務化されました 。
参考)https://www.kuraemon.com/special/ishiwata/
建築物石綿含有建材調査者には3つの種類があり、一般建築物石綿含有建材調査者は全ての建築物の調査が可能、一戸建て等石綿含有建材調査者は一戸建て住宅と共同住宅の内部に限定、特定建築物石綿含有建材調査者は実地研修や口述試験を追加した最上位資格となっています 。工作物については令和8年1月1日から同様の資格要件が適用される予定です 。
参考)https://www.pref.aichi.jp/uploaded/life/575019_2643356_misc.pdf
事前調査結果は電子システムを通じて報告することができ、建築物の解体工事では解体作業対象の床面積が80㎡以上、改修工事では請負金額が税込み100万円以上の場合に報告が必要です 。この報告制度により、石綿飛散防止対策の実効性向上が図られています。
参考)https://www.env.go.jp/press/110648.html

石綿障害予防規則に基づく作業主任者選任と職務内容

石綿障害予防規則第19条では、石綿等を取り扱う作業については石綿作業主任者技能講習を修了した者のうちから作業主任者を選任することが義務付けられています 。石綿作業主任者は労働安全衛生法第14条に基づく作業主任者の一種であり、危険性や有害性の高い作業において高度な知識と豊富な経験を持つ管理者として現場に常駐し、作業者を指揮する重要な役割を担います 。
参考)https://asnavi.cersi.jp/1063/
石綿作業主任者の具体的な職務は石綿障害予防規則第20条により定められており、主要な職務として以下の3つが挙げられます :

  • 作業に従事する労働者が石綿等の粉じんにより汚染され、またはこれらを吸入しないように、作業の方法を決定し、労働者を指揮すること
  • 局所排気装置、プッシュプル型換気装置、除じん装置その他の予防装置を1月を超えない期間ごとに点検すること
  • 保護具の使用状況を監視すること

作業主任者の選任は、元請事業者だけでなく下請事業者も含めて各事業者が行う必要があり、石綿含有建材の除去等作業開始から完了までの期間中は常駐させることが求められています 。また、作業主任者には現場での適切な判断と対応により石綿作業者の安全を守ることが強く求められており、法令知識に加えて石綿作業の専門的な知識や技術の習得が必要です 。
参考)https://www.cic-ct.co.jp/column/ginoishiwata-column/ginoishiwata-column-column02/

石綿障害予防規則における特別教育実施要件と内容

石綿障害予防規則第27条では、石綿が使用されている建築物または工作物の解体等の作業に係る業務に労働者を就かせる際、事業者は当該労働者に対して石綿取扱い作業従事者特別教育を行うことが義務付けられています 。この特別教育は労働安全衛生法第59条第3項および労働安全衛生規則第36条第37号により「危険又は有害な業務」に指定された作業について実施される法定教育です 。
参考)https://www.tokubetu.or.jp/faq/faq03.html
特別教育の具体的内容は「石綿使用建築物等解体等業務特別教育規程」により定められており、学科教育により以下の5科目について合計4.5時間以上の教育を実施します :
参考)https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-16/hor1-16-17-1-0.htm

  • 石綿の有害性(0.5時間):石綿の性状、石綿による疾病の病理及び症状、喫煙の影響
  • 石綿等の使用状況(1時間):石綿を含有する製品の種類及び用途、事前調査の方法
  • 石綿等の粉じんの発散を抑制するための措置(1時間):解体等作業の方法、湿潤化の方法、作業場所の隔離の方法等
  • 保護具の使用方法(1時間):保護具の種類、性能、使用方法及び管理
  • その他石綿等のばく露の防止に関し必要な事項(1時間):関係法令、健康障害防止のため必要な事項

この特別教育は石綿作業に従事する全ての労働者が受講する必要があり、建災防やその他の登録教習機関で実施されています 。教育の実施により、労働者が石綿の危険性を正しく理解し、適切な防護措置を講じることができるようになります。

石綿障害予防規則に基づく健康診断制度と医学的管理

石綿障害予防規則第40条に基づき、石綿ばく露作業者に対する健康診断の実施が義務付けられています 。この健康診断は雇入時、当該業務への配置替え時、定期に6か月以内ごとに1回の頻度で実施する必要があります 。対象者は石綿等の取り扱いもしくは試験研究のための製造に伴い石綿の粉じんを発散する場所における業務に常時従事する労働者、および石綿等の製造もしくは取扱いに伴い石綿の粉じんを発散する場所における業務に従事する労働者です 。
参考)https://www.kenkou-nagano.or.jp/med_check.php?n=39amp;bc=30
健康診断は一次健康診断と二次健康診断に分けられており、一次健康診断では以下の項目を実施します :
参考)https://www.seirei.or.jp/hoken/health-diagnosis/special/asbestos/

  • 業務の経歴の調査
  • 石綿によるせき、たん、息切れ、胸痛等の他覚症状又は自覚症状の既往歴の有無の検査
  • せき、たん、息切れ、胸痛等の他覚症状又は自覚症状の有無の検査
  • 胸部のエックス線直接撮影による検査

二次健康診断では作業条件の調査に加えて、胸部エックス線検査で異常な陰影がある場合に医師が必要と認めるときは、特殊なエックス線撮影による検査(胸部らせんCT検査)、喀痰の細胞診または気管支鏡検査を実施します 。石綿はじん肺健康診断の対象でもあるため、石綿障害防止規則に基づいた6か月ごとの健康診断と合わせて実施することで、労働者の健康状態を継続的に管理することができます 。