イセパマイシン何系か系統と特徴を解説

イセパマイシン何系か系統と特徴

アミノグリコシド系は単剤投与がダメ

💊 この記事の3ポイント
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イセパマイシンの系統分類

アミノグリコシド系抗生物質製剤(薬効分類番号6123)に分類され、細菌の30Sリボソームに作用して殺菌的に抗菌作用を示します

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不活化酵素への耐性

多くの不活化酵素に対して安定であり、ゲンタマイシンやアミカシン耐性菌にも抗菌力を発揮する特徴があります

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投与方法と副作用管理

1日1回投与法が推奨され、TDM(治療薬物モニタリング)による血中濃度管理で腎毒性・聴器毒性リスクを低減できます

イセパマイシンの系統分類とアミノグリコシド系の位置づけ

 

イセパマイシンはアミノグリコシド系抗生物質製剤に分類される注射用抗菌薬です。商品名はエクサシン注射液、イセパシン注射液として流通しており、薬効分類番号は6123に該当します。アミノグリコシド系抗生物質は、アミノ糖を構成成分とする抗生物質の総称で、グラム陽性菌グラム陰性菌、結核菌などに対して有効な殺菌的作用を持つのが特徴です。

この系統にはストレプトマイシンカナマイシンゲンタマイシントブラマイシン、ジベカシン、アミカシンなどが含まれます。イセパマイシンは1988年に開発された比較的新しい薬剤で、ゲンタマイシンBの1位のアミノ基に3-アミノ-2-ハイドロキシプロパノイル基を導入した化学構造を持っています。つまり二世代、第三世代のアミノグリコシド系薬剤に分類されるということですね。

アミノグリコシド系の中でイセパマイシンが特に注目される理由は、従来のアミノグリコシド系薬が抱えていた問題点を改善しているからです。具体的には、不活化酵素に対する安定性が高く、腎毒性や聴器毒性といった副作用プロファイルが改善されているという臨床的メリットがあります。これにより、他のアミノグリコシド系薬で治療困難だった耐性菌感染症に対しても治療選択肢として検討できるわけです。

医療用医薬品データベース(KEGG MEDICUS)のイセパマイシン添付文書情報では、薬効分類名として「アミノグリコシド系抗生物質製剤」と明記されており、薬剤の基本情報を確認する際に参考になります。

イセパマイシンに感性を示す菌種としては、大腸菌、シトロバクター属、クレブシエラ属、エンテロバクター属、セラチア属、プロテウス属、モルガネラ・モルガニー、プロビデンシア属、緑膿菌が主な対象です。敗血症、外傷・熱傷および手術創などの二次感染、肺炎、慢性呼吸器病変の二次感染、膀胱炎、腎盂腎炎、腹膜炎などの重症感染症で使用されます。

重症感染症に限定して使用するのが基本です。

イセパマイシンの作用機序と不活化酵素への安定性

イセパマイシンの作用機序は、細菌のリボソーム30Sサブユニットに結合してタンパク質合成を阻害することです。細菌の生命維持や増殖にはタンパク質合成が不可欠であり、このプロセスを遮断することで殺菌的に抗菌作用を発揮します。アミノグリコシド系薬は濃度依存性の殺菌作用を示すため、高い血中濃度を短時間で達成することが治療効果を高めるポイントになります。

イセパマイシンの最大の特徴は、アミノグリコシド系抗生物質を不活化する種々の酵素に対して安定であることです。従来のアミノグリコシド系薬は、耐性菌が産生する修飾酵素(不活化酵素)によって抗菌力を失うという問題がありました。この不活化酵素には複数の種類があり、例えばアセチル転移酵素AAC、アデニル転移酵素ANT、リン酸転移酵素APHなどが知られています。

しかしイセパマイシンは、これらの不活化酵素のうちANT(4′)とAAC(6′)-Iによってのみ不活化されるという特性を持ちます。多くの不活化酵素に対して安定であるため、ゲンタマイシンやアミカシンなど他のアミノグリコシド系薬に耐性を示す菌株に対しても抗菌力を維持できるわけです。臨床分離株を用いた研究では、ゲンタマイシン耐性菌やアミカシン耐性菌に対してもイセパマイシンは優れた抗菌力を示したという報告があります。

抗菌薬インターネットブックのイセパマイシン解説ページでは、不活化酵素に対する安定性と耐性菌が少ないことが特長として挙げられており、他剤耐性菌にも有効である点が強調されています。

この不活化酵素への安定性により、同系薬剤との交叉耐性が少ないというメリットも生まれます。例えば、ゲンタマイシンで治療効果が得られなかった症例でも、イセパマイシンに変更することで感染症をコントロールできる可能性があるということです。ただし、すべての耐性機構に有効というわけではなく、リボソーム標的部位の変異や外膜透過性の低下による耐性には効果が期待できない点には注意が必要です。

イセパマイシンの投与方法とTDMの重要性

イセパマイシンの標準的な投与方法は、成人で1日400mg(力価)を1〜2回に分けて筋肉内注射または点滴静注します。点滴静注の場合、1日1回投与では1時間かけて点滴し、1日2回投与では30分以上かけて点滴するのが原則です。アミノグリコシド系薬はPK-PD理論に基づくと、1日投与量を分割せずに1日1回投与(once a day、OD)とすることで最高血中濃度Cmaxが上昇し、臨床効果が高まることが知られています。

1日1回投与法が推奨される理由は、濃度依存性の殺菌作用とPAE(post-antibiotic effect)という特性にあります。PAEとは、抗菌薬が有効濃度以下に低下した後も一定時間菌の増殖が抑制される現象で、アミノグリコシド系はこの効果を持つため、投与間隔を延ばしても効果が維持されるわけです。加えて、副作用である腎毒性や聴器毒性は最高血中濃度よりもトラフ値(最低血中濃度)が長時間高値を持続することで発現しやすいため、1日1回投与の方が安全性も高まります。

ただし、イセパマイシンの添付文書では1日1〜2回の分割投与が記載されており、国内では1日2回投与も広く行われています。重症例や腎機能が保たれている症例では1日1回投与、腎機能低下例や心内膜炎など特定の病態では分割投与を選択するという使い分けが実際の臨床では行われているということですね。

TDM(治療薬物モニタリング)はアミノグリコシド系薬使用時に必須の管理手法です。血中濃度を測定し、有効治療域内に維持しながら副作用リスクを最小化することが目的です。イセパマイシンの場合、ピーク値(点滴終了1〜2時間後)は組織分布が完了した時点の濃度を反映し、トラフ値(次回投与直前)は蓄積性を評価する指標となります。副作用発現を予防する目標血中濃度は明確に定められていませんが、トラフ値を可能な限り低く保つことが腎毒性・聴器毒性のリスク低減につながります。

TDM実施のタイミングとしては、投与開始後3〜5日目に定常状態での血中濃度を測定するのが一般的です。腎機能障害のある患者や高齢者、長期投与が必要な症例では、より頻回にモニタリングを行い投与量を調整します。血中濃度測定結果に基づいて、薬剤師が担当医に推奨投与法を助言する体制を整えている施設も増えています。

イセパマイシンの副作用リスクと併用療法の考え方

イセパマイシンを含むアミノグリコシド系薬の主要な副作用は、腎毒性、聴器毒性(難聴、耳鳴、めまい)、神経筋遮断作用です。腎毒性は近位尿細管細胞への蓄積によって生じ、可逆的な腎機能低下として現れることが多いですが、重症化すると急性腎障害に至ることもあります。聴器毒性は内耳有毛細胞への障害によって引き起こされ、特に高周波音域から障害が始まるため、8kHzでの聴力検査が早期発見に有用とされます。

イセパマイシンは従来のアミノグリコシド系薬と比較して腎毒性・聴器毒性が軽減されているとされますが、リスクがゼロではありません。高齢者、腎機能障害者、本人またはその血族にアミノグリコシド系薬による難聴の既往がある患者では特に慎重投与が必要です。原則禁忌の患者としては、本人または血族にアミノグリコシド系抗生物質による難聴またはその他の難聴がある場合、重症筋無力症などの神経筋疾患がある場合が挙げられます。

併用薬との相互作用にも注意が必要です。ループ利尿剤(フロセミド、エタクリン酸など)との併用は腎障害および聴器障害が発現・悪化するおそれがあるため避けることが望ましいとされています。両薬剤ともに腎毒性・聴器毒性を有するため、相加的に副作用リスクが高まる可能性があるということです。また、麻酔剤や筋弛緩剤との併用では呼吸抑制が増強されるリスクがあり、クエン酸で抗凝固処理した血液を大量輸血された患者では神経筋遮断症状が出現しやすくなります。

アミノグリコシド系薬の併用療法については、基本的に他の抗菌薬との併用が推奨されています。特にβラクタム系薬との併用は相乗効果が期待でき、緑膿菌感染症や重症グラム陰性桿菌感染症では標準的なアプローチとなります。ただし、単独使用が絶対禁忌というわけではなく、感受性が確認された菌による単純性尿路感染症などでは単剤投与も選択肢となります。

重要なのは、アミノグリコシド系薬単剤での長期使用は耐性獲得リスクが高まるため避けるべきという点です。エンピリック治療では必ず併用療法で開始し、起炎菌が同定され感受性が確認された後も、重症例や免疫不全患者では併用継続を検討するのが安全です。腸球菌による心内膜炎では、βラクタム系薬とアミノグリコシド系薬の併用が標準治療とされており、この場合は1日1回投与ではなく分割投与が推奨されるという例外もあります。

イセパマイシンと他のアミノグリコシド系薬の使い分け

アミノグリコシド系薬にはイセパマイシン以外にも、ゲンタマイシン(GM)、トブラマイシン(TOB)、アミカシン(AMK)、ジベカシン(DKB)、アルベカシン(ABK)などがあり、それぞれ特徴と使い分けのポイントがあります。イセパマイシンの位置づけを理解するには、これらの薬剤との比較が有用です。

ゲンタマイシンは最も汎用されるアミノグリコシド系薬で、グラム陰性桿菌に広く使用されますが、耐性菌の増加が問題となっています。トブラマイシンは緑膿菌に対して特に強い抗菌力を持ち、嚢胞性線維症患者の緑膿菌感染症などで選択されます。アミカシンは不活化酵素に対する安定性が高く、ゲンタマイシン耐性菌にも有効であるため、第二選択薬として重要な位置を占めます。

イセパマイシンの特徴は、アミカシンと同様に不活化酵素への安定性が高く、かつ腎毒性・聴器毒性のプロファイルがより改善されている点にあります。アミカシンとゲンタマイシンの両方に耐性を示す臨床分離株に対してもイセパマイシンは優れた抗菌力を示したという報告があり、多剤耐性グラム陰性桿菌感染症での選択肢となります。標準的な投与量は1日400mgですが、重篤な場合は増量も検討されます。

アルベカシンは抗MRSA活性を持つ唯一のアミノグリコシド系薬で、MRSA感染症に対してバンコマイシンやテイコプラニンと併用または代替薬として使用されます。このようにアミノグリコシド系薬内でも対象菌種や耐性パターンによって使い分けが行われているわけです。

実際の臨床では、初期治療としてゲンタマイシンやトブラマイシンを選択し、効果不十分な場合や耐性が判明した場合にアミカシンやイセパマイシンへ変更するというステップアップのアプローチが一般的です。イセパマイシンは他剤耐性菌に対する切り札的な位置づけとして温存し、安易な使用を避けることで耐性菌発生を抑制するという考え方が重要になります。

感染対策オンラインの解説記事では、アミノグリコシド系抗菌薬は併用するのが基本であることが強調されており、第二群(緑膿菌を含むグラム陰性桿菌が対象)にGM、TOB、AMK、DKB、ISPが分類されています。

医療機関によってはアミノグリコシド系薬の採用品目が限られており、イセパマイシンが常備されていない施設もあります。そのような場合、アミカシンが代替薬として選択されることが多いですが、耐性パターンや副作用プロファイルの違いを理解した上で使用することが求められます。イセパマイシンの特性を活かすには、感受性試験結果を確認し、他剤で効果不十分な症例や多剤耐性菌感染症に限定して使用するという戦略的な抗菌薬使用が重要ということですね。


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