乾癬の症状と種類
乾癬は、免疫系の異常により皮膚細胞が過剰に増殖することで発症する慢性炎症性疾患です。正常な皮膚では28日程度かかる細胞の生まれ変わりが、乾癬では3〜4日と大幅に短縮されています。この急速な細胞増殖により、特徴的な皮膚症状が引き起こされます。
乾癬の症状は患者さんによって異なり、軽度から重度まで幅広く存在します。また、症状は良くなったり悪化したりを繰り返すことが特徴です。ここでは、乾癬の主な症状と種類について詳しく解説していきます。
乾癬の皮膚症状における紅斑と肥厚の特徴
乾癬の最も特徴的な症状の一つが「紅斑」です。紅斑とは、皮膚が赤くなる症状を指します。乾癬では炎症により毛細血管が拡張し、皮膚が赤みを帯びた状態になります。この紅斑は初期段階では小さな赤い斑点として現れ、次第に大きくなっていきます。
もう一つの特徴的な症状が「肥厚」です。肥厚とは皮膚が厚くなって盛り上がる状態を指します。乾癬では皮膚細胞が過剰に増殖するため、正常な皮膚に比べて厚みが増します。この肥厚した部分は触ると硬く感じることがあります。
紅斑と肥厚は多くの場合、同じ部位に同時に現れることが多く、境界がはっきりとした赤い盛り上がりとして観察されます。これらの症状は特に肘や膝などの関節部分や、衣服との摩擦が生じやすい部位に現れやすい傾向があります。
症状の重症度は患者さんによって大きく異なり、小さな斑点が数か所にわずかに見られる程度の軽症例から、体表面積の大部分が覆われる重症例まで様々です。
乾癬の鱗屑と落屑が引き起こす日常生活への影響
乾癬のもう一つの特徴的な症状が「鱗屑」です。鱗屑とは、皮膚表面に形成される銀白色のかさぶたのような層を指します。これは過剰に生産された皮膚細胞が積み重なったものです。
鱗屑は時間が経つと「落屑」と呼ばれる現象を起こします。落屑とは、鱗屑がポロポロとはがれ落ちる状態を指し、フケのように見えることもあります。この落屑は日常生活において様々な問題を引き起こします。
例えば、衣服や寝具に鱗屑が付着することで不快感を覚えたり、周囲の人に誤解を与えたりすることがあります。特に黒い服を着用した際に白い鱗屑が目立つことで、社会的な不安を感じる患者さんも少なくありません。
また、鱗屑を無理に剥がそうとすると出血することがあるため注意が必要です。この現象は「アウスピッツ現象」と呼ばれ、乾癬の特徴的な所見の一つとされています。
さらに、乾癬患者さんの約50%がかゆみを感じるとされており、このかゆみによって鱗屑を掻き壊してしまうことがあります。掻くことでケブネル現象(皮膚への刺激により新たな乾癬病変が生じる現象)を引き起こし、症状が悪化する悪循環に陥ることもあります。
乾癬の発症しやすい部位と皮膚刺激の関係性
乾癬は全身のどの部位にも発症する可能性がありますが、特に皮膚が摩擦や刺激を受けやすい部位に好発する傾向があります。具体的には以下の部位に症状が現れやすいとされています:
- 肘と膝: 最も一般的に症状が現れる部位で、関節の伸展面に好発します。これらの部位は日常的に衣服との摩擦が生じやすく、また物に当たりやすい部位でもあります。
- 頭皮: 乾癬患者さんの約50%が頭皮に症状を呈するとされています。髪の毛が伸びる際に毛が頭皮をこすることが原因と考えられています。頭皮の乾癬は脂漏性皮膚炎やフケと間違われることもあります。
- 腰回り: ベルトなどによる摩擦が生じやすい部位であり、症状が出やすい傾向があります。
- 臀部: 座ることによる圧力や摩擦が影響し、症状が現れることがあります。
- 爪: 乾癬患者さんの約20〜40%に爪の症状が見られます。特に乾癬性関節炎の患者さんでは約70%に爪症状が認められます。
乾癬では「ケブネル現象」と呼ばれる特徴的な反応があります。これは、症状のない健常な皮膚に物理的な刺激(引っ掻き、圧迫、摩擦など)が加わることで、その部位に新たな乾癬の病変が生じる現象です。このため、乾癬患者さんは皮膚への過度な刺激を避けることが推奨されています。
乾癬の種類別にみる特徴的な症状の違い
乾癬にはいくつかの種類があり、それぞれ特徴的な症状を示します。主な種類とその症状の違いについて解説します。
1. 尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)
乾癬患者さん全体の約70〜80%を占める最も一般的なタイプです。紅斑、肥厚、鱗屑の三徴が特徴的で、肘、膝、頭皮などに好発します。かゆみは患者さんによって異なり、約50%の方がかゆみを感じるとされています。
2. 乾癬性関節炎(かんせんせいかんせつえん)
乾癬患者さんの約15%に合併するとされる関節症状を伴うタイプです。手や足の指の関節に痛みや腫れ、こわばりが生じることが多く、爪の症状を伴うことも特徴的です。関節症状は朝に強いこわばりを感じ、動くと軽減されることが多いです。放置すると関節の変形が進行し、不可逆的な障害を残すことがあるため、早期発見・早期治療が重要です。
3. 滴状乾癬(てきじょうかんせん)
直径0.5〜2cm程度の小さな水滴状の発疹が全身に散在するタイプで、乾癬患者さんの約4%に見られます。若年者に多く、扁桃腺炎などの上気道感染症がきっかけで発症することが特徴的です。多くの場合は感染症の治療により改善しますが、尋常性乾癬に移行することもあります。
4. 乾癬性紅皮症(かんせんせいこうひしょう)
全身の90%以上の皮膚が赤みを帯び、細かい鱗屑がはがれ落ちる重症型です。発熱、倦怠感、脱水、むくみなどの全身症状を伴い、入院治療が必要になることもあります。乾癬患者さん全体の約1%に発症するとされています。
5. 膿疱性乾癬(のうほうせいかんせん)
発熱や皮膚の発赤とともに、無菌性の膿疱(膿の入った小さな水疱)が多数現れるタイプです。手掌や足底に限局するタイプと全身に広がる汎発型があり、特に汎発型は重症で入院治療が必要になります。汎発性膿疱性乾癬は厚生労働省の指定難病に認定されています。
乾癬による爪と関節の症状と早期発見の重要性
乾癬は皮膚だけでなく、爪や関節にも症状を引き起こすことがあります。これらの症状は見落とされがちですが、患者さんのQOL(生活の質)に大きな影響を与えるため、早期発見と適切な治療が重要です。
爪の症状
乾癬患者さんの約20〜40%に爪の症状が見られ、乾癬性関節炎の患者さんでは約70%に爪症状が認められます。主な爪の症状には以下のようなものがあります:
- 爪表面のポツポツとした点状陥凹(ピッティング)
- 爪の肥厚や変形
- 爪の表面がはがれる(オニコリシス)
- 爪の色が濁り透明感がなくなる
- 爪床の油滴様変化(サーモンパッチ)
爪の症状は見た目の問題だけでなく、日常生活での不便さや痛みを引き起こすことがあります。また、爪の症状がある患者さんは乾癬性関節炎を発症するリスクが高いことが知られています。
関節の症状(乾癬性関節炎)
乾癬性関節炎は乾癬患者さんの約15%に見られる合併症で、以下のような症状が特徴的です:
- 手や足の指の関節の痛みや腫れ
- 朝のこわばり感(特に腰や背中)
- アキレス腱や足の裏の痛み
- 指全体がソーセージのように腫れる(ソーセージ指)
- 爪の変形
乾癬性関節炎の約75%は皮膚症状が先行して発症しますが、約5%は関節症状が先に現れ、約20%は同時に発症するとされています。重要なのは、乾癬性関節炎は放置すると急速に進行し、関節の不可逆的な変形や機能障害を引き起こす可能性があることです。
早期発見のためには、乾癬患者さんは定期的に関節の状態をチェックし、少しでも違和感があれば医師に相談することが大切です。現在では、PASE(Psoriatic Arthritis Screening and Evaluation)などの質問票を用いて乾癬性関節炎のスクリーニングが行われています。
乾癬性関節炎の早期発見と治療に関する詳細情報(西日本皮膚科学会誌)
乾癬の爪症状や関節症状は見落とされがちですが、適切な治療により症状の進行を抑えることが可能です。早期発見・早期治療が患者さんのQOL向上に大きく貢献します。
乾癬のケブネル現象と日常生活での注意点
乾癬の特徴的な現象の一つに「ケブネル現象」があります。これは、症状のない健常な皮膚に物理的な刺激(引っ掻き、圧迫、摩擦など)が加わることで、その部位に新たな乾癬の病変が生じる現象です。この現象は1872年にドイツの皮膚科医ハインリッヒ・ケブネルによって初めて報告されました。
ケブネル現象は乾癬患者さんの約25〜50%に見られるとされており、刺激を受けてから約7〜14日後に新たな病変が出現します。日常生活の中で以下のような刺激がケブネル現象を引き起こす可能性があります:
- 引っ掻くことによる刺激
- きつい衣服やベルトによる摩擦や圧迫
- 日焼けなどの紫外線による刺激
- 虫刺されや軽度の外傷
- 手術や注射などの医療行為による刺激
ケブネル現象を予防するために、乾癬患者さんは日常生活で以下のような点に注意することが推奨されます:
- 適切な衣服の選択:
- 肌に優しい素材(綿など)の衣服を選ぶ
- きつすぎない、ゆったりとしたサイズの衣服を着用する
- 摩擦が生じやすい部位(襟元、袖口、ウエスト部分など)に注意する
- 皮膚の保護:
- 皮膚を引っ掻かないよう意識する(かゆみ対策が重要)
- 保湿剤を使用して皮膚の乾燥を防ぐ
- 日焼け止めを使用し、過度な紫外線暴露を避ける
- 生活習慣の工夫:
- 入浴時はぬるめのお湯を使用し、ゴシゴシと強くこすらない
- 皮膚を清潔に保ち、感染を予防する
- ストレスを軽減する方法を見つける(ストレスは乾癬の悪化因子)
ケブネル現象は乾癬の診断にも役立つことがあります。医師が意図的に皮膚に軽い刺激を与え、その部位に乾癬の病変が出現するかを観察することで診断の補助とすることもあります。
また、ケブネル現象は乾癬以外にも扁平苔癬や掌蹠膿疱症などの皮膚疾患でも見られることがあるため、正確