international classification of diseases-11の基礎知識と核心ガイド
international classification of diseases-11とは何か
international classification of diseases-11は、一般にICD-11と呼ばれる、世界保健機関(WHO)の国際疾病分類第11回改訂版です。疾病、傷害、外因、死亡原因などを共通のルールとコードで表現し、診療記録、疾病統計、死亡統計、研究、保健医療政策、医療費支払い制度などに活用するための国際標準です。単なる病名リストではなく、医療情報を比較可能なデータへ変換するための基盤と位置付けられます。
ICD-11は2019年に世界保健総会で採択され、2022年1月1日に加盟国向けの正式な発効を迎えました。WHOは各国に導入を促していますが、実際の導入時期や制度への組み込み方は、各国の法令、診療報酬制度、統計制度、医療情報システムの状況に応じて決められます。そのため、ICD-11が国際的に発効していることと、ある国・地域・医療機関で直ちに既存コード体系が置き換わることは同義ではありません。
臨床現場では、診療録に記載された患者の状態を適切に表すことが出発点です。コーディングは記載内容を分類体系に対応付ける工程であり、コードを先に決めて診療記録を合わせる作業ではありません。病態、原因、部位、重症度、経過、関連状態などが診療録で明確になっているほど、ICD-11の構造を利用した精度の高い表現と二次利用が可能になります。
“>WHO:International Classification of Diseases(ICD)
ICD-10から変わる構造と表現方法
ICD-11の大きな特徴は、紙媒体中心の分類から、デジタル環境で利用・更新・連携する分類へ設計思想が移った点です。WHOはICD-11を、オンラインブラウザ、コーディングツール、APIなどを通じて提供しています。利用者は疾病名から候補を検索し、定義、包含・除外の考え方、関連する注記などを確認しながら、診療記録に合致する分類概念を選択できます。
また、ICD-11では幹コード(stem code)に拡張コード(extension code)を組み合わせ、より詳細な臨床情報を表す「ポストコーディネーション」が重要な概念です。例えば、疾患そのもののコードに、解剖学的部位、重症度、時間的経過、損傷の性質などを表す追加情報を組み合わせることで、単一コードだけでは表しにくい臨床像を、体系的に記録できます。ただし、すべての病態で自由にコードを組み合わせてよいわけではなく、WHOが定めるルール、コーディングツールの案内、用途別のローカルルールを確認する必要があります。
| 項目 | 基準・内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 基本的な役割 | 疾病、傷害、死因等を共通の分類概念とコードで表現する | 統計、診療情報、研究、政策などで利用される |
| 利用環境 | オンラインブラウザ、コーディングツール、APIを中心に提供される | 電子カルテや病院情報システムとの連携を想定する |
| コード表現 | 幹コードを基本とし、必要に応じて拡張コードを組み合わせる | ポストコーディネーションの適用可否を確認する |
| ICD-10との関係 | 対応表・マッピングを活用して比較や移行を支援する | 単純な一対一変換が常に成立するとは限らない |
| 更新への対応 | デジタル提供により内容更新と参照がしやすい | 運用時は採用するリリース版を明確に管理する |
ICD-10とICD-11の間には、分類の粒度、概念の整理、章構成、コード設計に差があります。したがって、過去データとの時系列比較、診療報酬への適用、レジストリ運用、品質指標の分母・分子定義を考える場合は、旧コードから新コードへの機械的な置換だけで結論を出してはいけません。マッピングは移行と比較を助ける手段ですが、臨床的・統計学的な意味の同一性を自動的に保証するものではありません。
WHO ICD-11 Browser・Coding Tool
医療従事者が押さえるコーディング実務
医師、看護師、診療情報管理士、医事担当者、情報システム担当者では、ICD-11との関わり方が異なります。しかし共通して重要なのは、臨床記録の質と、記録からコードへ至る判断過程の再現性です。診断名のみでは病態が確定しない場合、疑い病名と確定診断の扱い、主病態と併存症の区別、治療対象となった状態、症状と原因疾患の関係などを、施設のルールと利用目的に沿って明確化する必要があります。
WHOのCoding Toolは、診断用語から該当する概念を検索し、コーディングを支援するための公式ツールです。検索語と候補を確認するだけでなく、候補概念の説明、包含語、除外語、関連する注記を読み、診療録に記載された臨床事実と一致するかを判断します。略語、慣用名、同義語に依存した検索では意図しない候補が出る可能性があるため、最終判断時には表示された概念の内容を必ず確認します。
- 診療録には、確定診断、部位、病因、急性・慢性、重症度、合併症などを、可能な範囲で具体的に記載する
- 検索結果の語感だけで決定せず、定義、包含・除外注記、コーディング上の指示を確認する
- 主病態、併存症、既往歴、偶発的所見を、診療目的およびデータ利用目的に応じて区別する
- ポストコーディネーションを使う場合は、幹コードと拡張コードの組み合わせルールを確認する
- がん登録、死亡統計、請求、臨床研究など、用途固有のガイドラインがある場合は併せて適用する
- 判断に迷う事例は個人の経験だけで処理せず、診療情報管理部門や院内のコーディング相談体制へ共有する
コーディング精度を高める取り組みは、現場の負担を増やすことだけが目的ではありません。診療の内容が適切にデータ化されることで、症例構成の把握、医療資源の分析、アウトカム評価、感染症や慢性疾患のサーベイランス、研究データの標準化などにつながります。反対に、曖昧な記載や不統一な選択が蓄積すると、統計の解釈、品質評価、施設間比較に偏りが生じるおそれがあります。
電子カルテ連携と導入プロジェクトの進め方
ICD-11の導入は、コード表をシステムに登録するだけで完了するプロジェクトではありません。WHOは、ガバナンス整備、関係者教育、情報基盤の準備、データの継続性確保を段階的な導入の柱として示しています。病院内では、診療部門、診療情報管理部門、医事部門、情報システム部門、経営企画部門、研究部門などが利用目的を共有し、意思決定の責任範囲を明確にすることが必要です。
まず、現在利用している疾病分類、病名マスター、診療報酬関連のコード、レジストリ、DWH、帳票、外部提出データを棚卸しします。次に、ICD-11へ直接移行する対象、ICD-10等を併存させる対象、マッピングで比較可能性を担保する対象を分けます。特に、過去年度との症例数比較や疾患別指標の推移を扱う場面では、分類変更による差と実際の診療実態の変化を混同しない設計が重要です。
実務上は、限定領域でのパイロット、症例を用いた二重コーディング、医師記載とコーディング結果の監査、コード選択の不一致分析を経て、対象範囲を広げる方法が有効です。二重コーディングでは、同一の診療記録を既存体系とICD-11の双方で分類し、件数変動、分類不能例、詳細度の変化、追加記載が必要となる診療録項目を確認します。単に一致率を見るのではなく、不一致が臨床記載、分類ルール、システム候補表示、教育不足のどこに起因するかを分析します。
システム開発では、WHOが提供するICD-APIを利用し、分類内容を参照する仕組みや検索支援を組み込む選択肢があります。ただし、診療記録の保存、個人情報保護、ログ管理、障害時の参照方法、採用リリース版の固定と更新手順、ローカル病名マスターとの対応関係は、各組織が責任を持って設計しなければなりません。API連携ができることと、制度上・運用上ただちに利用できることは別問題です。
“>WHO:ICD-11 implementation
日本の医療現場で確認すべき留意点
日本の医療現場でICD-11を検討する際は、WHOの国際標準としてのICD-11と、日本国内で日常運用される疾病分類、診療報酬、DPC、死亡診断書、各種公的統計、がん登録、院内病名マスターとの関係を分けて考える必要があります。国際分類が更新されたからといって、国内の請求・統計・法定報告で使用するコード体系や運用が自動的に切り替わるわけではありません。必ず所管官庁、関係学会、保険者、ベンダー、提出先が示す最新の正式通知・仕様を確認してください。
また、ICD-11は「診断を行う基準」そのものではありません。診断の確定には、診療ガイドライン、専門学会の診断基準、検査結果、画像所見、患者の臨床経過などを用います。ICD-11は、確定した、または利用目的に沿って記録すべき臨床情報を分類・集計可能な形にするものです。疾患概念の定義や診断基準と、統計分類上のカテゴリーを混同しないことが重要です。
医療従事者個人が今から取り組むなら、まずWHOのICD-11 Browserで専門領域の代表症例を検索し、ICD-10の表現と比べながら、どの情報がコードの詳細化に関わるかを観察するとよいでしょう。その後、診療情報管理士や情報システム担当者と協力し、自施設で利用している病名マスター、データ提出、臨床指標との接点を整理します。導入の成否はコード数の暗記ではなく、正確な臨床記録、教育、システム設計、継続的な監査という運用基盤に左右されます。
WHOによると、2024年5月時点で132の国・地域がICD-11の導入の各段階にあり、翻訳、パイロット、データ収集・報告などが進められていました。WHOは分類本体に加えて、ブラウザ、Coding Tool、実装・移行ガイド、マッピング資料、APIなどを公開しています。医療機関が検討を始める際には、こうした一次情報を基準にしながら、日本で適用される制度上の要件を個別に確認する姿勢が不可欠です。