イノツズマブオゾガマイシン添付文書の投与と副作用管理

イノツズマブオゾガマイシン添付文書の用法用量と副作用

移植予定なら3サイクル超えで肝障害リスクが倍増します

📋 この記事の3ポイント要約
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用法用量の基本

1日目0.8mg/m²、8・15日目0.5mg/m²を1時間以上かけて点滴投与。造血幹細胞移植予定により投与サイクル数を調整する必要がある

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重大な副作用VOD/SOS

移植施行後の発現率22.8%、投与サイクル数増加で発現頻度上昇。定期的な肝機能検査と早期発見が生命予後に直結

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投与管理のポイント

副作用による休薬は7日未満なら同一サイクル内で延期、7日以上なら次回投与中止。減量後の再増量は不可

イノツズマブオゾガマイシンの基本情報と効能効果

イノツズマブオゾガマイシン(商品名:ベスポンサ点滴静注用1mg)は、再発又は難治性のCD22陽性急性リンパ性白血病(ALL)を適応とする抗体薬物複合体です。ヒト化抗CD22モノクローナル抗体にカリケアマイシン誘導体を結合させた構造を持ち、CD22発現腫瘍細胞に選択的に結合します。

結合後は細胞内に取り込まれ、リンカーの加水分解により遊離したカリケアマイシン誘導体が2本鎖DNAを切断することで細胞死を引き起こす作用機序です。抗悪性腫瘍剤として分類され、薬効分類番号は4239に該当します。

この薬剤は2017年に国内承認を取得し、2024年3月には小児の再発又は難治性CD22陽性急性リンパ性白血病にも適応が拡大されました。CD22陽性細胞への高い選択性により、殺腫瘍細胞効果と毒性の低減が期待される治療選択肢となっています。

国際共同Ⅲ相試験(1022試験)では、標準化学療法と比較して血液学的完全寛解率を有意に改善しました。

完全寛解率は80.7%に達しています。

微小残存病変(MRD)陰性達成率も78.4%と高い有効性を示しました。

KEGGデータベースの医薬品情報ページでは、イノツズマブオゾガマイシンの薬効分類や化学構造などの基礎的な情報を確認できます。

イノツズマブオゾガマイシンの用法用量と投与スケジュール

通常、イノツズマブオゾガマイシン(遺伝子組換え)として1日目は0.8mg/m²(体表面積)、8及び15日目は0.5mg/m²(体表面積)を1日1回、1時間以上かけて点滴静脈内投与します。

その後は休薬期間を設けるサイクル投与です。

成人では1サイクル目は原則21日間ですが、寛解(血球数の回復の有無を問わない)が得られた場合は28日間まで延長できます。2サイクル目以降は各28日間を1サイクルとして投与を繰り返します。小児では1サイクル目は21~42日間、2サイクル目以降は28~42日間です。

投与サイクル数は造血幹細胞移植(HSCT)の施行予定を考慮して決定することが重要です。移植を予定している場合、投与サイクル数の増加に応じてHSCT施行後の静脈閉塞性肝疾患(VOD)/類洞閉塞症候群(SOS)の発現リスクが高まります。

そのため、本剤の効果が得られる最小限のサイクル数とし、治療上やむを得ないと判断される場合を除き3サイクル終了までに投与を中止します。逆にHSCTの施行を予定していない場合は6サイクルまで投与可能ですが、3サイクル終了までに効果が得られない場合は投与を中止します。

臨床試験では7サイクル以上投与した際の有効性及び安全性は確立されていません。

つまり6サイクルが上限です。

各投与日は前後2日間までを許容範囲としていますが、投与間隔の厳守が治療効果と安全性の両面で重要になります。

イノツズマブオゾガマイシンの重大な副作用VOD/SOS

静脈閉塞性肝疾患(VOD)/類洞閉塞症候群(SOS)を含む肝障害は、イノツズマブオゾガマイシンの最も重要で重篤な副作用です。死亡に至った例も報告されており、添付文書の警告欄に記載されています。

国際共同第Ⅲ相試験では、本剤群164例中23例(14.0%)にVOD/SOSの発現が認められました。このうち本試験期間中又は本剤投与終了後からHSCT施行前までの発現は5例(3.0%)でした。一方、HSCT施行後にVOD/SOSを発現した患者は79例中18例(22.8%)と高頻度でした。

投与サイクル数ごとのHSCT施行後VOD/SOS発現頻度を見ると、1サイクルで7.7%、2サイクルで18.5%、3サイクルで23.1%、4サイクルで50.0%、5サイクルで60.0%と明確に増加傾向を示しています。

これがサイクル数制限の根拠となっています。

定期的な肝機能検査の実施が必須です。総ビリルビン値、AST(GOT)/ALT(GPT)、ALP、GGTなどを投与前および投与中に測定し、VOD/SOSの徴候や症状の発現に注意します。黄疸、肝腫大、腹水、体重増加などの臨床症状が出現した場合は直ちに対処が必要です。

VOD/SOSのリスク因子には、移植前の肝炎既往、肝障害の存在、放射線照射を含む前処置レジメンの使用、本剤投与後の早期の移植施行などがあります。投与に際してはこれらのリスク因子を評価し、特に造血幹細胞移植の施行を予定している患者に対する投与は慎重に判断します。

PMDAの適正使用ガイド(PDF)には、VOD/SOSの診断基準、発現時期、対処法などの詳細情報が記載されており、投与前に必ず確認すべき資料です。

イノツズマブオゾガマイシンの投与量調節と休薬基準

副作用により本剤を休薬、減量、中止する場合には、添付文書に記載された基準を考慮する必要があります。減量を行った場合は再度増量しないことが原則です。これは安全性確保のための重要な制限になります。

休薬期間が7日未満の場合、同一サイクル内で次回の投与を延期します。ただし投与間隔は6日間以上あけることが条件です。休薬期間が7日以上の場合は、同一サイクル内で次回の投与を行いません。

休薬期間が14日以上になった場合、初回発現であれば次サイクルの各投与量を25%減量します。1サイクルの各投与量を25%減量した後の発現の場合は、次の1サイクルあたりの投与回数を2回(1日目、8日目のみ)に変更します。投与回数を2回に変更後の休薬期間が14日以上の場合は投与を中止します。

血液毒性による休薬では、2サイクル目以降のサイクル開始時に血小板数や好中球数の基準値を満たさない場合、基準値以上に回復するまで休薬します。非血液毒性では、肝機能検査値の異常(総ビリルビン値が施設基準値上限の1.5倍超、AST/ALTが施設基準値上限の2.5倍超など)が回復するまで休薬が必要です。

投与量調節を適切に行うことで、重篤な副作用の発現を最小限に抑えながら治療を継続できます。主治医は患者の状態を綿密に観察し、タイムリーな判断が求められます。治療効果とリスクのバランスを常に評価する姿勢が重要です。

イノツズマブオゾガマイシンのinfusion reactionと前投薬

Infusion reaction(インフュージョンリアクション)は、本剤投与時に発現する可能性がある重要な副作用です。国際共同第Ⅲ相試験では、本剤群164例中37例(22.6%)に発現が認められました。

特に初回投与時に注意が必要です。

症状としては、発熱、悪寒、発疹、呼吸困難などが典型的です。重篤な場合はアナフィラキシー反応を呈することもあり、投与中および投与後の観察が欠かせません。発現時期は投与開始30分~2時間後が好発時期とされています。

Infusion reactionを軽減させるために、副腎皮質ステロイド、解熱鎮痛剤アセトアミノフェンなど)又は抗ヒスタミン剤の前投与を考慮します。多くの施設では、本剤投与の30分~1時間前にアセトアミノフェン500mg程度の投与を標準的な前処置としています。

また、本剤による治療前に末梢血芽球数を10,000/μL以下にすることが望ましいとされています。そのため、ヒドロキシカルバミド、副腎皮質ステロイド、ビンクリスチン等を投与して芽球数を減らす前処置が推奨されます。腫瘍量が多い場合には腫瘍崩壊症候群のリスクも高まります。

Infusion reaction発現時は、投与速度を遅くする、投与を一時中断する、又は投与を中止するなどの対応を検討します。Grade2以上の重篤なinfusion reactionが発現した場合は、本剤の投与中止を考慮する必要があります。

患者の安全を最優先した判断が求められます。

緊急時に十分対応できる医療施設において、造血器悪性腫瘍の治療に対して十分な知識・経験を持つ医師のもとで投与することが警告に記載されています。

この条件を満たす体制整備が不可欠です。