インダカテロール 投与方法と禁忌、副作用の重要性と注意点

インダカテロール 投与方法と禁忌、副作用

インダカテロールの基本情報
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薬剤分類

長時間作用型β2刺激薬(LABA)

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主な適応症

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の気道閉塞性障害に基づく諸症状の緩解

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使用上の注意

吸入専用、内服不可、正しい吸入方法の習得が重要

インダカテロールマレイン酸塩(商品名:オンブレス)は、慢性閉塞性肺疾患(COPDnochiryouyakyuunyuukusurijouhou/”>COPD)の治療に用いられる長時間作用型β2刺激薬(LABA)です。この薬剤は気管支を拡張させる効果があり、COPDの症状緩和に効果を発揮します。本記事では、インダカテロールの投与方法、禁忌事項、副作用について詳細に解説します。医療従事者として知っておくべき情報を網羅的にまとめましたので、患者指導や治療計画の立案にお役立てください。

インダカテロールの正しい投与方法と用法用量

インダカテロールマレイン酸塩(オンブレス)の標準的な用法・用量は、成人に対して1回1カプセル(インダカテロールとして150μg)を1日1回、専用の吸入用器具(ブリーズヘラー)を用いて吸入します。患者さんには毎日一定の時間帯に吸入するよう指導することが重要です。

吸入方法において特に注意すべき点は以下の通りです:

  • カプセルは決して内服せず、必ず専用の吸入器を用いて吸入すること
  • 吸入直前にアルミシート(ブリスター)からカプセルを取り出すこと
  • 一定の時間帯に吸入できなかった場合は、翌日の通常時間に1回分を吸入し、2回分を一度に吸入しないこと
  • 過量投与を避けること

医療従事者は患者に正しい使用方法を十分に説明する必要があります。また、呼吸状態の改善が認められない場合には、患者が本剤を吸入せずに内服していないか確認することも重要です。

臨床試験では、インダカテロール150μgの1日1回投与が有効性と安全性のバランスが最も優れていることが示されています。用法・用量どおり正しく使用しても効果が認められない場合には、本剤が適当ではないと考えられるため、漫然と投与を継続せず中止することが推奨されています。

インダカテロールの禁忌と併用注意薬

インダカテロールの主な禁忌事項は、本剤の成分に対して過敏症の既往歴がある患者です。このような患者に投与すると、重篤なアレルギー反応を引き起こす可能性があります。

また、以下の薬剤との併用には注意が必要です:

  1. 他のβ2刺激薬との併用

    インダカテロールは長時間作用型β2刺激薬(LABA)に分類される薬剤であり、他のLABAやβ2刺激薬との併用は避けるべきです。併用により過度の気管支拡張作用や心血管系への影響が増強される恐れがあります。

β2刺激薬の種類 併用時のリスク
短時間作用型 頻脈・動悸
長時間作用型 QT延長・不整脈
  1. MAO阻害薬との相互作用

    モノアミン酸化酵素(MAO)阻害薬とオンブレスの併用には注意が必要です。MAO阻害薬はカテコールアミンの代謝を阻害するため、β2刺激薬の作用を増強する危険性があります。併用を検討する場合は以下の薬剤に注意が必要です:

  • セレギリン
  • ラサギリン
  • モクロベミド
  1. CYP3A4を阻害する薬剤(エリスロマイシン等)

    インダカテロールは主に代謝酵素チトクロームP4503A4(CYP3A4)で代謝されるため、CYP3A4阻害薬との併用によりインダカテロールの血中濃度が上昇するおそれがあります。エリスロマイシンとの併用投与によりインダカテロールのCmax及びAUCが1.2倍及び1.4~1.6倍に上昇したとの報告があります。

  2. P糖蛋白を阻害する薬剤(ベラパミル等)

    インダカテロールはP糖蛋白(Pgp)の基質であるため、P糖蛋白阻害薬との併用によりインダカテロールの血中濃度が上昇するおそれがあります。ベラパミルとの併用投与によりインダカテロールのCmax及びAUCが1.5倍及び1.4~2.0倍に上昇したとの報告があります。

  3. ステロイド剤、利尿剤(サイアザイド系利尿剤、サイアザイド系類似利尿剤、ループ利尿剤)

    これらの薬剤との併用により低カリウム血症による心血管事象(不整脈など)を起こすおそれがあるため、血清カリウム値に注意する必要があります。ステロイド剤及びこれらの利尿剤は尿細管でのカリウム排泄促進作用があるため、血清カリウム値の低下が増強する可能性があります。

  4. β遮断剤(点眼剤を含む)

    β遮断剤との併用により、インダカテロールの作用が拮抗される可能性があります。やむを得ず併用する場合には、心選択性β遮断剤が望ましいですが、注意が必要です。

インダカテロールの主な副作用と発現頻度

インダカテロールマレイン酸塩(オンブレス)の使用に伴う副作用は、多くの場合軽度で一時的なものが多いとされていますが、患者の状態によっては重篤な症状に発展する可能性もあります。主な副作用とその発現頻度は以下の通りです:

  1. 一般的な副作用
  • 咳嗽(発現頻度:10-20%)
  • 頭痛(発現頻度:5-10%)
  • 上気道感染(発現頻度:5-15%)
  • じんましん
  • 筋痙縮

これらの症状の多くは時間とともに軽減しますが、持続する場合は医師への相談が重要です。

  1. 心血管系への影響

    β2刺激薬であるオンブレスは心血管系に影響を与える可能性があります。特に以下の症状に注意が必要です:

  • 動悸
  • 不整脈
  • 血圧上昇

本剤の交感神経刺激作用により脈拍増加、血圧上昇等の心血管系症状があらわれるおそれがあるので、異常が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うことが推奨されています。また、過度に使用を続けた場合、不整脈、場合により心停止を起こすおそれがあるため、使用が過度にならないよう注意が必要です。

  1. 特に注意すべき副作用

    まれに以下のような症状があらわれ、重篤な副作用の初期症状である可能性があります:

  • 脱力感
  • 筋力の低下
  • 手足のまひ

これらは血清カリウム値の低下を示唆する症状であり、このような場合には使用をやめて、すぐに医師の診療を受けるよう患者に指導することが重要です。

  1. 吸入直後の咳嗽

    臨床試験において、本剤吸入直後の散発的な咳嗽(多くは15秒以内に発現し、持続時間は10秒程度)が平均11.3%~23.1%観察されています。これらの咳嗽と気管支痙攣の発現や慢性閉塞性肺疾患の増悪、本剤の有効性低下との関連性は認められなかったと報告されていますが、患者に事前に説明しておくことで不安を軽減できます。

インダカテロールの特殊な患者集団への投与時の注意点

特定の患者集団に対してインダカテロールを投与する際には、特別な注意が必要です。以下に主な患者集団ごとの注意点を示します:

  1. 腎機能障害患者

    重度腎機能障害のある患者(eGFR30mL/min/1.73㎡未満の患者)または透析を必要とする末期腎不全の患者に対しては、治療上の有益性と危険性を勘案して慎重に投与し、副作用の発現に注意する必要があります。特にグリコピロニウムとの配合剤(ウルティブロ)を使用する場合は、グリコピロニウムの血中濃度が上昇し、副作用が増強されるおそれがあります。

  2. 妊婦・授乳婦

    妊婦または妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すべきです。インダカテロールの動物実験(ウサギ)では骨格変異の発生率増加を伴う生殖発生毒性が報告されており、また胎盤通過性も報告されています。

授乳婦に対しては、治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続または中止を検討する必要があります。動物実験(ラット)ではインダカテロールが乳汁中に移行することが報告されています。

  1. 高齢者

    高齢患者、特に75歳以上の患者では尿路感染などの副作用発現率が高くなる傾向が認められています。臨床試験では、尿路感染の発現率はプラセボ群に比べてインダカテロール投与群で高く、年齢とともに発現率が高くなる傾向が示されています:

  • 65歳未満:プラセボ群0%、本剤群1.1%
  • 65歳以上75歳未満:プラセボ群0.7%、本剤群2.1%
  • 75歳以上:プラセボ群2.8%、本剤群3.5%
  1. 心血管疾患を有する患者

    虚血性心疾患、不整脈、高血圧などの心血管疾患を有する患者では、β2刺激薬の交感神経刺激作用により症状が悪化する可能性があるため、慎重な投与と定期的なモニタリングが必要です。

  2. 低酸素血症の患者

    低酸素血症の患者では、血清カリウム値をモニターすることが望ましいとされています。これは低酸素血症により血清カリウム値の低下の心リズムに及ぼす影響が増強されることがあるためです。

インダカテロールの薬理作用と臨床効果の特徴

インダカテロールは、長時間作用性のβ受容体刺激薬であり、β1及びβ3受容体と比較してβ2受容体に対して高い親和性を示します。この選択的な作用機序により、気管支拡張効果を持続的に発揮しながら、心血管系への影響を最小限に抑えることが期待されています。

インダカテロールの薬理学的特性として、以下の点が挙げられます:

  1. 気管支拡張作用

    インダカテロールは、覚醒下モルモットにおけるセロトニン及び麻酔下アカゲザルにおけるメサコリンによる気管支収縮に対して抑制作用を示します。この作用により、COPDの主症状である気道閉塞を改善し、呼吸機能を向上させます。

  2. 作用持続時間

    インダカテロールの気管支拡張作用は、他のβ2刺激薬と比較して明らかに長く持続します。覚醒下モルモットにおけるセロトニン及び麻酔下アカゲザルにおけるメサコリンによる気管支収縮に対する抑制作用を等効果用量で比較したところ、サルブタモール、ホルモテロール及びサルメテロールより明らかに長く、持続的であることが確認されています。この特性により、1日1回の投与で24時間にわたる効果が期待できます。

  3. 臨床効果

    日本人慢性閉塞性肺疾患患者を含む臨床試験において、インダカテロール150μg投与群はプラセボ群と比較して有意なトラフFEV1(1秒量)の改善を示しました。投与12週後のトラフFEV1は以下の通りでした:

解析対象集団 治療群 症例数 トラフFEV1(L) プラセボ群との差(L)
全体集団 インダカテロール150μg 109 1.34±0.024 0.17±0.020 (p<0.001)
インダカテロール300μg※ 110 1.37±0.023 0.20±0.020 (p<0.001)
プラセボ 104 1.17±0.025 /
日本人部分集団 インダカテロール150μg 49 1.38±0.020 0.20±0.027 (p<0.001)
インダカテロール300μg※ 48