胃管固定具と経鼻チューブ固定テープ皮膚障害予防

胃管固定具と固定

胃管固定具の要点
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固定=抜去予防+皮膚保護

強く貼るほど安全、ではなく「外力を逃がす設計」と「皮膚刺激を減らす選択」の両立がコツ。

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エレファントノース型固定

鼻翼への接触を避け、潰瘍・発赤リスクを下げる固定の代表手技。チューブの向きが重要。

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観察頻度で事故が減る

装着部の観察は最低2回/日が基本。湿潤・ずれ・圧迫の兆候を早期に拾う。

胃管固定具の固定方法と経鼻チューブ固定テープ

 

胃管固定具を含む固定の目的は大きく2つで、①自己抜去や事故抜去を減らすこと、②固定材による皮膚障害を減らすことです。

ここで重要なのは「強粘着でガチガチに固める」よりも、「引っ張られても抜けにくい余裕(たるみ)を作り、牽引が皮膚へ直撃しないように力を逃がす」設計にする点です。

たとえば経鼻胃管では、鼻孔出口付近で少したるませ、頬・こめかみ・耳の後ろなど複数点で固定して牽引方向を分散させる工夫が紹介されています。

固定テープは「固定力」と「皮膚刺激」のトレードオフになりやすいため、患者の皮膚状態・発汗や湿潤・安静度・せん妄や不穏などの抜去リスクをセットで評価して選びます。

参考)経鼻チューブ|固定テープの貼り方・切り方・剥がし方

しっかり固定したいときは伸縮性がない強粘着テープを、皮膚刺激を抑えたいときは伸縮性があり粘着性が低いテープやフィルムドレッシング材を用いる考え方が整理されています。

また、貼付時にテープを引っ張りながら貼ったり、強く押しつけたりすると不快感や皮膚刺激につながるため、貼り方そのものが「固定の質」を左右します。

現場の“意外な落とし穴”として、固定が強いほど患者が気にして触り、結果として自己抜去のトリガーになることがあります。

固定具を見直すときは、固定力だけでなく「視界に入りにくい誘導」「手が届きにくいルート設計(耳の後ろでの固定など)」といった行動面の工夫もセットで検討すると、抑制一辺倒になりにくいです。

参考)https://aruaru.online/2503_07-9-11-7-10-3/

さらに、交換のたびに同じ場所へ貼り続けると局所的なダメージが蓄積しやすいので、固定位置の微調整(毎回数mm~1cm単位で逃がす)も、皮膚保護の観点で価値があります。

参考)イレウス管挿入患者のスキントラブルにどう対応する?|テープで…

胃管固定具と皮膚障害・MDRPUの観察ポイント

胃管固定具に関連する皮膚障害は、テープ刺激による発赤・びらん、汗や蒸れによるかぶれ、チューブ圧迫による潰瘍形成などが典型です。

この領域は近年「MDRPU(医療関連機器圧迫創傷)」として整理され、経鼻胃チューブのような経鼻経管法用チューブも、原因機器の例として挙げられています。

MDRPUの予防・管理の基本として、装着部と周囲皮膚の観察は最低2回/日を行うことが示されており、固定具のチェックは“作業”ではなく“予防介入”そのものです。

観察で特に拾いたいのは、①圧迫の集中(鼻翼・鼻柱・頬骨付近)、②湿潤(発汗・呼気・分泌物でふやける)、③ずれ(固定点が動いて局所圧が増える)、④痛み・違和感(訴えがあれば最優先)です。

湿潤は皮膚の耐久性を下げ、同じ圧でも損傷が進みやすくなる個体要因として位置づけられています。

また、低栄養や循環不全、皮膚の菲薄化などがあると、軽微な外力でも損傷が起こりやすいため、「固定を強める」発想だけでは事故が減らないことがあります。

少し意外ですが、固定部位の皮膚を守ろうとしてクッション材や保護材を“厚く入れすぎる”と、今度は固定が不安定になって微小なずれが増え、摩擦・ずれ力が増幅することがあります。

そのため「保護材は必要最小限」「固定は位置ズレしにくい設計」「観察で早期修正」をセットにし、静的な“貼りっぱなし”運用を避けます。

MDRPUは医療の高度化に伴い多様な医療機器で起こりうるとされ、医療の質保証・改善において対策が必須とされています。

参考:MDRPUの定義、経鼻胃チューブの位置づけ、予防・管理フローチャート(観察は最低2回/日など)

日本褥瘡学会「医療関連機器圧迫創傷の予防と管理(ベストプラクティス)」

胃管固定具とエレファントノース型固定・オメガ固定

経鼻胃管の固定では、鼻翼への接触を避けて潰瘍を作らない工夫として「エレファントノース型固定」が知られています。

要点は、分割したテープでチューブを巻き付けつつ、チューブの向きを下方に誘導して鼻翼に当てないことです。

同じ「鼻の固定」でも、鼻翼・鼻柱を圧迫する位置で固めてしまうと、圧迫起点の皮膚損傷が起こりやすくなるため、固定位置と向きは手技の核になります。

加えて、固定テープ自体が外力(ずれ・圧迫)を周囲皮膚に加える可能性がある点が、MDRPUの文脈でも注意点として触れられています。

つまり、胃管固定具は「チューブを動かさない道具」であると同時に、「皮膚に外力を発生させる装置」でもあります。

この二面性を踏まえると、固定が外れそうなときに“貼り増し”だけで対応するのではなく、いったん剥がして皮膚状態を確認し、固定設計(ルート、固定点、材質)を組み直す方が安全な場面が多いです。

オメガ固定(Ω固定)は、テープが剥がれにくく固定が安定し、管による圧迫も避けられる工夫として紹介されています。

ただし、どの固定法でも万能ではなく、体動が多い・発汗が強い・皮膚が脆弱・せん妄があるなど、条件が重なると破綻しやすいので、固定法の“形”よりも「破綻パターンを先に想定する」ことが現場的です。

たとえば、寝返りが多い患者では頬固定が引っ張られやすい一方、耳後ろ固定は牽引方向を変えられるため、生活動作に合わせた固定点設計が効いてきます。

胃管固定具と剥離剤・皮膜材・透明フィルムの使い分け

皮膚障害を減らすうえで、固定テープの「貼り方」だけでなく「剥がし方」「剥がす頻度」「皮膚の前処置」が同じくらい重要です。

長期留置で皮膚負担が大きい場合、剥離剤の使用や皮膜材の塗布が推奨の選択肢として挙げられています。

また、テープ交換時にぬるま湯で絞ったガーゼで鼻や頬を拭き、粘着剤や皮脂汚れを落としてから貼ると良い、という実務的な工夫も示されています。

皮膚が脆弱な患者では、テープを直接皮膚に貼らず、透明フィルムを介して固定する方法が提案されています。

この「一枚かませる」発想は単なる保護ではなく、貼り替え時の角質剥離を減らし、同一部位への反復刺激を軽くする目的で使えます。

さらに、固定用テープによるスキン-テア(皮膚剥離)リスクが高い場合や発赤がある場合に、ハイドロコロイドドレッシングなどを貼付したうえで固定を行う、という考え方も示されています。

意外と見落とされやすいのは、「剥がす行為」そのものが外力であり、固定を丁寧に作っても剥がし方が荒いと翌日以降の固定が成立しなくなる点です。

剥がすときはリムーバー(剥離剤)をテープと皮膚の隙間に浸透させながら端からゆっくり剥がす、といった具体策が紹介されています。

結果として、固定の上手さは“貼る技術”だけでなく“剥がす技術”を含む、という視点で標準化すると、チーム内のばらつきが減ります。

参考:固定テープの貼り方・切り方・剥がし方、皮膚刺激を減らす材質選択(フィルムドレッシング材、剥離剤・皮膜材)

看護roo!「経鼻チューブ|固定テープの貼り方・切り方・剥がし方」

胃管固定具と事故抜去を減らす独自視点:固定の「再現性」を上げるチェック項目

検索上位の記事は「固定法」や「皮膚保護材」の説明が中心になりがちですが、現場で差が出るのは“再現性”です。

同じ固定法のはずでも、貼る人によってテンション、貼付位置、皮膚前処置の手順、観察のタイミングがブレると、自己抜去・皮膚障害・固定の外れが連鎖します。

そこで、胃管固定具を運用する際は、手技の美しさより「誰がやっても最低ラインを担保する」観点でチェック項目を持つと強いです。

以下は、胃管固定具の運用を“事故が起きにくい形”にするための、簡易チェック例です(病棟ルールに合わせて調整)。

  • 🧾挿入・再固定の直後:固定点が1点ではなく複数点か(牽引方向を分散できるか)。​
  • 👃鼻翼・鼻柱:チューブが当たっていないか(エレファントノース型固定の意図が成立しているか)。

    参考)経管栄養とは?種類別のメリット・デメリット・実施手順・注意点…

  • 💧湿潤:発汗・分泌物でふやけていないか(湿潤は損傷リスクを上げる)。
  • 🩹剥がし方:剥離剤や皮膜材・透明フィルムなど、皮膚負担を減らす工夫が必要か。
  • 🔁観察頻度:少なくとも2回/日、装着部と周囲皮膚を見ているか(赤み・ずれ・圧迫兆候)。

さらに一歩踏み込むと、「固定の失敗」を“起きたあとに反省する事象”ではなく“予測して潰す事象”に変えられます。

たとえば、貼付後に患者が指先で探りやすい位置にテープ端(つまみ)があると、それ自体が抜去行動のきっかけになるため、端処理(つまみを作りすぎない、視界に入りにくい位置へ誘導する等)をルール化するのは有効です。

また、抑制に頼りすぎると皮膚観察が遅れがちになるため、「固定具の安定化→観察→微修正」のサイクルを回すほうが、MDRPU対策の考え方にも沿った安全設計になります。


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