胃静脈瘤 治療 ガイドライン
胃静脈瘤 治療 ガイドラインと肝硬変
胃静脈瘤は、門脈圧亢進症を背景に生じる合併症の一部であり、治療を「胃だけ」で閉じないのが医療従事者向けの要点です。肝硬変診療ガイドラインでは、門脈圧亢進症の項として「食道・胃静脈瘤の出血予防」「出血時の血管作動性薬」「BRTOの有用性」「胃穹窿部静脈瘤に対するcyanoacrylate系薬剤注入」などがCQとして整理され、介入判断の土台になります。
臨床で迷いが生じやすいのは、「胃静脈瘤=とにかく内視鏡で固める」では整理しきれない点です。胃静脈瘤は、食道静脈瘤に比べて短絡路(例:胃腎シャント)を伴いやすく、IVR(BRTOなど)が治療戦略の中心に入り得るのが特徴です(後述)。肝硬変の重症度(Child-Pugh、既往出血、併存する腹水・脳症など)は、侵襲度と再出血リスクのバランスを決めるため、最初に並べて評価します。
参考)肝硬変|ガイドライン一覧|日本消化器病学会ガイドライン
また「ガイドライン」は“固定の手順書”というより、診療の論点を漏れなく点検するチェックリストに近い使い方が有効です。たとえば、急性出血では止血法の選択に加え、血管作動性薬の併用、感染予防、循環動態の最適化を並走させないと、再出血・死亡のイベントが続きやすいという文脈でCQが構造化されています。
■実務での最初の確認(抜けやすい順)
- 「胃静脈瘤の部位(穹窿部か、噴門部か)」:止血・予防の第一選択が変わります。
参考)https://www.jmedj.co.jp/blogs/product/product_24344
- 「短絡路の有無(胃腎シャントなど)」:BRTO適応の検討を早めます。
- 「肝予備能(Child-Pugh、黄疸、腹水、脳症)」:選べる介入の強さが変わります。
- 「食道静脈瘤の併存」:BRTO後に悪化し得るため、同時に設計します。
胃静脈瘤 治療 ガイドラインの内視鏡とEIS
内視鏡治療は、出血の制御と再出血予防のいずれでも重要ですが、胃静脈瘤では「硬化療法(EIS)」の薬剤選択と注入の考え方が食道静脈瘤より難しくなります。実臨床では、胃静脈瘤出血に対して組織接着剤(cyanoacrylate:ヒストアクリル等)局注が止血術として位置づけられ、予防例でもEISを軸に戦略が組まれることが多いです。
胃静脈瘤の止血では、内視鏡像の“派手さ”より、血行動態が成否を左右します。たとえば供血路が太く流入が強い場合、局注で一時止血は得られても、流入側が残れば再出血に傾きます。このため、内視鏡単独で完結させるより、IVR(BRTO等)につなぐ設計(いつ、どの条件で、誰に相談するか)をチームで共有しておくと安全です。
一方、食道静脈瘤で用いられるEVL/EISの考え方は、胃静脈瘤の理解にも役立ちます。EISとEVLを組み合わせたEISLのように、目的(血栓化・根治・再発抑制)を分解して手技を組み合わせる発想は、胃静脈瘤でも「局注→追加治療→再発監視」という流れを設計するうえで参考になります。
■内視鏡治療の現場Tips(あまり語られにくい実務論点)
- 「止血成功」の定義を統一:その場の出血停止だけか、24–48時間の再出血なしまで含むかで次手が変わります。
- IVRにつなぐタイミング:止血後の“落ち着いた時間”に造影CT等で短絡路評価を行い、BRTO適応を詰める流れが現実的です。
- 肝予備能が悪い場合の方針:侵襲を下げた内視鏡単独/分割治療など、施設方針の事前合意が重要です。
胃静脈瘤 治療 ガイドラインのBRTO
BRTO(バルーン下逆行性経静脈的静脈瘤塞栓術)は、胃静脈瘤の治療として日本の臨床で重要な地位を占め、肝硬変ガイドラインでも「胃静脈瘤や脳症に対してBRTOは有用か?」がCQとして扱われています。
BRTOを理解する鍵は、「静脈瘤そのもの」ではなく「排血路(多くは胃腎シャント)」を塞栓して、静脈瘤を血栓化させる発想です。つまり、短絡路がはっきりしている胃静脈瘤では、内視鏡局注よりも“血行動態に適合した根治”に近づける可能性があります。ただし、短絡路を塞ぐ=門脈圧が上がり得るため、食道静脈瘤の増悪や腹水増悪など、別の合併症が前面化するリスクも同時に増えます。
この「治したら別の問題が増えるかもしれない」という逆説は、医療従事者が患者説明でつまずきやすいポイントです。BRTOの説明は「胃静脈瘤の再出血を抑えるために、逃げ道の血管を塞ぐ」→「その代わり門脈圧が上がり、食道静脈瘤など別の管理が必要になる」という順で整理すると、納得感が上がります。
■BRTOを検討する実務の視点
- 造影CTで短絡路の評価:治療計画(BRTO可否、他手技の必要性)に直結します。
- 治療後の監視項目:食道静脈瘤の再評価、腹水、脳症の変化をセットで追います。
- 内視鏡との役割分担:急性期止血(内視鏡)→根治(BRTO)という“二段構え”が現実的な場面があります。
胃静脈瘤 治療 ガイドラインの薬物
薬物療法は、胃静脈瘤に対して単独で“局所を消す”治療ではありませんが、出血イベント全体を減らすための土台になります。肝硬変ガイドラインでは「食道・胃静脈瘤出血予防に有用な薬物療法」「出血時に血管作動性薬の投与は有用か?」などがCQとして示され、出血の予防・急性期管理の双方で薬物が論点化されています。
臨床現場での薬物の使いどころは、大きく2つに分けると整理しやすいです。ひとつは「長期の門脈圧低下を狙う薬(非選択的β遮断薬など)」、もうひとつは「急性期に門脈流入を下げる血管作動性薬」です。特に急性出血では“内視鏡の手技”が注目されがちですが、ガイドラインがCQとして薬物を並列に扱っているのは、止血率・再出血・予後が局所処置だけで決まり切らないことを示唆します。
加えて、肝硬変患者では感染が出血予後を悪化させうるため、出血イベントを「消化管の問題」ではなく「全身イベント」として見立てるのが実務的です。ガイドライン目次の構造(門脈圧亢進症だけでなく、腹水、腎障害、脳症、感染などが並ぶ)は、この全身管理の必要性を反映しています。
■薬物療法の落とし穴(“意外と”効くのは運用)
- 服薬アドヒアランスと血圧・脈拍の目標:投与しているだけで安心しない設計が必要です。
- 併存疾患(腎機能、低Na、低血圧):門脈圧を下げたい気持ちと安全域のバランスが難所です。
- 出血後の継続戦略:止血後に薬物・内視鏡・IVRの役割を再整理して“次の出血を起こさない”計画に更新します。
胃静脈瘤 治療 ガイドラインの血行動態
検索上位の記事は「内視鏡治療」「BRTO」「薬物」と手段別に整理されがちですが、独自視点として強調したいのは、胃静脈瘤を“血行動態の病気”としてカンファレンスで共有する運用です。胃静脈瘤は、同じ「出血」でも供血路・排血路・短絡路の組み合わせで最適解が変わり、内視鏡医・IVR医・肝臓内科・麻酔/ICUが同じ地図を持つほど転帰が安定します。
具体的には、症例ごとに「どこから来て、どこへ抜けているか」を言語化し、治療目的を3層に分けます。第1層:今の出血を止める(内視鏡局注など)。第2層:再出血を減らす(BRTOや追加内視鏡、薬物)。第3層:肝不全イベント全体を減らす(栄養、感染、腎・脳症管理、移植評価を含む)。この3層は肝硬変ガイドラインの章立てとも整合し、静脈瘤だけが“浮いた管理”になりにくいです。
意外に効果が大きいのは、「BRTO後に食道静脈瘤が悪化し得る」ことを見越した“先回りの内視鏡計画”です。BRTOの適応検討の時点で、食道静脈瘤の重症度(RC signなど)を再点検し、必要なら予防的内視鏡治療の計画も同時に立てると、治療後のトラブルシューティングが減ります。
■血行動態共有のためのテンプレ(そのままカンファで使える形)
- 診断:胃静脈瘤(部位)、食道静脈瘤併存の有無、出血/非出血。
- 画像:造影CTで短絡路(胃腎シャント等)の評価、門脈系の全体像。
- 方針:急性期(内視鏡+全身管理)、待期(BRTO/追加内視鏡)、長期(薬物+サーベイランス)。
- 予測される次の問題:BRTO後の門脈圧上昇による食道静脈瘤悪化、腹水など。
参考:肝硬変ガイドラインの目次(門脈圧亢進症関連CQが一覧で把握でき、BRTOやcyanoacrylate注入の位置づけが確認できる)
