胃びまん性大細胞型b細胞リンパ腫 治療
胃びまん性大細胞型b細胞リンパ腫治療の病期と検査(Lugano分類・IPI)
胃のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)は、治療方針を決めるうえで「組織診断」と「臨床病期診断」が土台になります。
胃リンパ腫の病期は、Ann Arbor分類を消化管向けに整理したLugano分類が実臨床で頻用され、胃に限局するI期、胃所属リンパ節までのII1期、より遠隔の腹腔内リンパ節まで及ぶII2期…といった整理が治療の分岐に直結します。
病期診断に必要な検査として、上部・下部内視鏡、頸部〜胸部〜全腹部CT、PET、骨髄検査、血算・生化学(LDHなど)、sIL-2Rなどが挙げられ、胃リンパ腫では胃超音波内視鏡(EUS)やH. pylori検索も追加されます。
またDLBCLでは、予後予測因子であるIPIで層別化し、年齢・病期・血清LDH・Performance Status(PS)・節外病変数を正確に把握することが重要とされています。
参考)ホーム|造血器腫瘍診療ガイドライン 第3.1版(2024年版…
胃原発でも「節外病変数」の取り扱いが曖昧になりがちで、胃以外(骨髄・肝脾・皮膚など)の病変があるかを画像と骨髄で丁寧に見切ることが、結果的に“治療強度の過不足”を減らします。
意外と見落としやすい点として、MALTリンパ腫成分を含むDLBCLや、EBウイルス関与が疑われる症例など、背景が単一でないケースがあり、病理・免疫染色の解釈が治療戦略の前提になります。
- 診断の要点:生検による組織診断(免疫染色でCD20などを確認)+病期(Lugano)+リスク(IPI)。
- 検査の落とし穴:画像で「胃局所」と見えても骨髄や遠隔リンパ節で病期が変わることがあるため、全身評価を省略しない。
胃びまん性大細胞型b細胞リンパ腫治療の限局期(R-CHOP・放射線・胃温存)
限局期(Lugano分類で概ねII1期まで)の胃DLBCLは、現在では「胃を温存する」方向での治療が主流で、穿孔や止血困難な出血などの例外を除き、手術は限定的な位置づけです。
手術と比べて、化学療法+放射線(化学放射線療法)で胃を温存しても全生存が変わらないとする報告が背景にあり、標準治療の中心が局所療法から全身療法へ移っています。
具体的には、予後不良因子や巨大腫瘤がない限局期では、CHOP 3コース後に放射線治療を追加した群がCHOP 8コース単独群より、無増悪生存率・全生存率で良好だったデータが示され、限局期の標準治療の根拠になっています。
一方で、放射線治療の位置づけは“完全に不要”と結論づけられておらず、対象集団やフォロー期間の違いで解釈が揺れる領域です。
そのため現場では、R-CHOP(抗CD20抗体リツキシマブ+CHOP)を基盤に、放射線を足すか、コース数を増やすかを、病期・腫瘤の大きさ・リスク因子で判断する考え方が採られています。
参考としてNCCNでは巨大腫瘤(10cm以上)ではR-CHOP 6〜8コース後に放射線治療を推奨する、といった目安が紹介されていますが、胃における腫瘤径の明確な合意基準があるわけではない点が実務上の難所です。
- 基本の骨格:限局期はR-CHOPを軸に、条件により局所放射線を組み合わせる方針が多い。
- 胃温存の利点:胃切除を避け、栄養状態やQOLを維持しつつ治癒を狙う発想が前提。
胃びまん性大細胞型b細胞リンパ腫治療の進行期(R-CHOP 6〜8コース・予後因子)
進行期(Lugano分類でII2期以上)では、胃原発であっても全身性DLBCLとして扱い、手術や放射線など局所療法“単独”は行わないのが原則です。
標準治療は、抗CD20抗体リツキシマブ併用CHOP(R-CHOP)療法を6〜8コース行うことが基本とされています。
さらにIPIで予後不良因子(61歳以上、病期III以上、PS2以上、LDH高値、節外病変2個以上)のうち3個以上を満たす場合は予後不良とされ、臨床試験として自家造血幹細胞移植併用の大量化学療法や新規薬剤などが検討され得る、という整理が示されています。
臨床の視点では、進行期の“胃病変”は症状(出血・狭窄・疼痛)を通じて治療継続性に影響しやすく、治療開始前にリスクを見立てて支持療法(消化性潰瘍の管理、栄養、感染予防)を厚くするほど、結果的にR-CHOP完遂率が上がりやすい構造があります。
また、胃DLBCLの症状として腹痛、嘔吐などの狭窄症状、下血などの出血症状があり得るため、内視鏡・画像だけでなく“症状の推移”を治療効果判定の補助として丁寧に拾うことが実務的に有用です。
- 進行期の原則:全身療法(R-CHOP 6〜8コース)が中心。
- 予後の見立て:IPI因子を揃え、ハイリスクでは治療の選択肢を早めに整理する。
胃びまん性大細胞型b細胞リンパ腫治療の合併症(出血・穿孔)と手術の位置づけ
胃DLBCLでは、治療の中心は非外科的治療ですが、穿孔や止血困難な出血などの合併症がある場合には、手術が適応になり得るとされています。
加えて、化学療法による腫瘍壊死で穿孔や出血が起こり得るため、治療開始時に「潰瘍が深い」「出血リスクが高い」などの所見を把握しておくことは、単なる注意喚起ではなく“治療戦略”に直結します。
ただし、壊死や穿孔のリスクが高い症例を明確に示唆する指標は十分に確立していない、という点がガイド上も課題として残っています。
合併症が起きた場合、骨髄抑制下で緊急手術となり手術リスクが高くなる一方、同様の治療を継続するなら原因となった胃病変を残すことは賢明でない、という現実的な判断も記載されています。
この「局所制御のための手術」と「全身病としてのDLBCL」のバランスが、胃DLBCLのマネジメントで最も神経を使う場面の一つです。
日本における非外科的治療の第2相試験では、Stage I〜II1症例で高い奏効が得られ、salvage surgeryは不応例の一部に限られ、穿孔や大量出血が認められなかったと報告されており、“原則は胃温存”の流れを補強します。
- 手術が前面に出る状況:穿孔、止血困難な出血、不応例のsalvageなど。
- 意外なポイント:穿孔リスクの高い症例を事前に断定できる指標は確立していない。
胃びまん性大細胞型b細胞リンパ腫治療の独自視点:病理と臨床の“すれ違い”を減らす運用
胃DLBCLは、内視鏡所見が潰瘍、進行癌様、皺襞肥厚など多彩で、症状も腹痛・狭窄・出血と幅があるため、消化器内科・病理・血液内科で「同じ病変を違う言葉で見ている」状態が起こりやすい疾患です。
この“すれ違い”は、治療選択(放射線併用の要否、出血リスクの見積もり、手術コンサルトのタイミング)や治療継続性(減量・延期の判断)に影響し得るため、運用で吸収する価値があります。
具体的には、①病理でCD20等の免疫染色結果と「MALT成分の有無」を早期に共有し、②病期(Lugano)とIPI因子(LDH、PS、節外病変数など)を“初回カンファ”で一覧化し、③深い潰瘍や出血兆候があれば化学療法開始後の観察計画(便潜血・Hb推移・緊急内視鏡導線)まで先に決める、といった段取りが実務上のミスを減らします。
ここで意外に効いてくるのが、「DLBCLはH. pyloriとの明確な関連が認められない一方、病変内にMALT成分を有する例がある」という事実で、除菌=治療の中心になりやすい胃MALTリンパ腫の“成功体験”を、そのまま胃DLBCLに持ち込まない注意点になります。
つまり、同じ“胃リンパ腫”でも、病理学的背景と標準治療の設計思想が違うため、施設内で言語化しておくほど安全です。
- 運用の工夫:初回カンファでLugano病期とIPI因子を一覧化して共有する。
- 独自の観点:MALTの成功パターン(除菌中心)をDLBCLに誤適用しないよう、病理背景を先に揃える。
限局期〜進行期の治療方針、放射線や手術の位置づけの根拠(胃DLCBLの診療の手引き・治療パート)。
診断(病理・免疫染色・病期診断・IPI、PETの位置づけ)の要点(胃悪性リンパ腫の診断パート)。
Lugano分類の具体的な区分(II1/II2など)を日本語で確認できる解説。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tenrikiyo/24/1/24_49/_html/-char/ja