評価療養と選定療養の違いと差額ベッド代

評価療養と選定療養の違い

評価療養と選定療養の違い:現場説明の要点
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結論は「目的」が違う

評価療養は将来の保険収載に向けて医学的価値を評価する枠組み、選定療養は快適性・利便性など患者の選択による追加サービスの枠組みです。

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請求は「混合診療の例外」

通常は保険診療+保険外診療の併用で全額自己負担になり得ますが、評価療養・選定療養などは保険外併用療養費として“保険部分”が保険給付扱いになります。

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トラブルは「同意・掲示」

差額ベッド代は同意書・掲示・説明が揃わないと徴収できない場面があり、現場運用(同意取得の手順・記録)が重要になります。

評価療養:保険外併用療養費での位置づけ

評価療養は、保険外併用療養費制度の中でも「将来、保険給付の対象とすべきかどうかを評価する必要がある療養」として、厚生労働大臣が定める枠組みです。

現場感で言い換えると、患者が“新しい医療技術を受ける”こと自体は保険外要素を含みますが、だからといって診察・検査・入院料などの通常部分まで全て自費に落とさないための制度設計です。

ここが重要で、評価療養は「患者のわがままに近い追加サース」ではなく、「医学的価値が定まりきっていない(あるいは評価途上の)医療技術を、ルールの下で提供しつつ評価する」性格が強い点が、選定療養との根本的な違いになります。

実務では、評価療養に該当する代表例として“先進医療”がしばしば挙げられます。

参考)先進医療の概要について|厚生労働省

先進医療の整理ページは、患者説明のパンフレット化・院内掲示物の根拠として参照されやすく、説明文を作る際の用語統一にも役立ちます。

参考リンク(先進医療の位置づけ・制度の概要の根拠として有用)

厚生労働省:先進医療の概要について

選定療養:差額ベッド代と「患者の選択」

選定療養は、特別の病室の提供など「患者の快適性・利便性」や「選択」に関わる追加的サービスとして、厚生労働大臣が定める療養です。

代表例として差額ベッド代(特別療養環境室)があり、これは保険診療の対象外なので、原則として患者に請求できます。

ただし“患者が選んだ”ことが実質的に担保されないと請求できないケースがあるのが、選定療養の現場難易度です。

愛知県の整理(厚労省通知に基づく説明)では、特別療養環境室の要件として「4床以下」「1人当たり6.4㎡以上」「プライバシー確保設備」などが明示されています。

参考)特別療養環境室に係る費用(いわゆる差額ベッド代)について -…

また、提供時に医療機関側が行うべき事項として、ベッド数・場所・料金の分かりやすい掲示、明確で丁寧な説明、料金等を明示した文書への署名(同意確認)が求められます。

さらに、同意書で確認していない場合や、治療上の必要で入室した場合、病棟管理上の都合で実質的に選べない場合などは、差額ベッド代の負担を求めてはならないとされています。

参考リンク(差額ベッド代の要件・同意・掲示・請求できないケースがまとまっていて現場運用の根拠に使える)

愛知県:特別療養環境室に係る費用(いわゆる差額ベッド代)について

評価療養と選定療養の違い:患者負担の考え方

評価療養と選定療養はいずれも「保険外併用療養費」の枠の中で、保険診療と併用しても“保険が効く部分”を残せる点が共通しています。

一方で、評価療養は「保険収載すべきかを評価する医療技術」という政策的・医学的な目的が中心で、選定療養は「患者の選択に委ねられる追加サービス」という利用者側の選好が中心です。

この目的差が、説明時の言葉選びにも直結し、評価療養は“研究”“実績蓄積”“適応の整理”に近い文脈、選定療養は“同意”“説明”“選択”“料金掲示”に近い文脈がトラブル予防になります。

医療従事者向けに、患者質問へ短く答える形で整理すると次の通りです。

  • 「評価療養はなぜ保険と一緒にできる?」→ 将来の保険給付対象として妥当か評価する制度だから。
  • 「選定療養はなぜ自己負担?」→ 快適性・利便性など追加サービスを患者が選ぶ性格だから。
  • 「差額ッド代は必ず払う?」→ 同意や選択性が担保されない状況では請求できない場合がある。

また、医療機関内で誤解が起きやすい点として「評価療養=高額=全部自費」と短絡しがちですが、制度上は“併用”を前提に整理されている点が重要です。

参考)保険外併用療養費(特別な治療(保険外の療養)を受けるとき)|…

患者に伝えるときは、費用の話を単発でせず「どこまでが保険部分か」「どこからが自己負担部分か」を診療フローに沿って区切って説明すると納得感が上がります。

評価療養:先進医療の説明で起きる誤解

先進医療は評価療養の一つとして位置づけられる、と説明されることが多いです。

このとき現場で起きやすい誤解は、「先進医療=特別な治療=入院費も検査も全部自費」というイメージの混在で、実際には保険外併用療養費の考え方では“保険診療と共通する部分は保険給付の対象になり得る”と整理されます。

そのため、患者説明では「技術料(先進医療部分)は自己負担になりやすいが、共通部分は保険扱いで自己負担割合に応じた負担になる」という“費用の二層構造”を最初に提示すると、後のクレームが減ります。

説明文の作り方のコツとして、院内の同意書・掲示・見積り(概算)の文言を、制度用語(評価療養・保険外併用療養費)と患者の平易語(保険が効く部分/効かない部分)で二段書きにすると、監査対応と患者理解を両立しやすいです。

参考)評価療養、患者申出療養又は選定療養を受けたとき

さらに、医師側の「医学的な説明」と、受付・相談員側の「費用・手続き説明」を分離し、説明責任の境界(誰がどこまで話すか)を院内で決めておくと、説明のブレが減ります。

評価療養:独自視点の現場運用(同意と掲示)

検索上位の解説は定義説明で終わりがちですが、実際のトラブルは「言葉の定義」より「同意と掲示の運用」で起きます。

差額ベッド代では、掲示(ベッド数・場所・料金)や丁寧な説明、文書での同意(署名)が求められ、さらにホームページを持つ医療機関ではウェブ掲載も求められる、と整理されています。

ここから逆算すると、院内のチェックリスト化が“意外に効く”ポイントで、同意書の署名欄だけでなく「説明した職員名」「説明日時」「患者が選択した理由(希望/面会対応/感染対策希望など)」まで記録の型を作ると、後から“実質的に選べなかった”と主張された場合のリスクを下げられます。

また、評価療養側でも「患者が何を自己負担し、何が保険扱いか」を書面で残す運用があると、会計窓口の混乱(患者の想定額と請求額の乖離)を減らせます。

医療従事者向けには、患者の不満が最も出やすいのは“医療の妥当性”より“費用の予測可能性”であることを前提に、説明の順番(①制度の枠組み→②費用の内訳→③同意の範囲)を固定するのが実務的です。

参考リンク(保険外診療と保険診療を併用した場合の基本的な扱い、例外としての評価療養・選定療養がまとまっている)

健康保険組合連合会 関東連合会:評価療養、患者申出療養又は選定療養を受けたとき