百日咳症状大人の特徴と診断治療

百日咳症状大人の特徴

大人の百日咳 主要症状と特徴
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非典型的な咳

子どもと異なり「ヒュー」という音が出にくく、2週間以上続く乾いた咳が特徴的です

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発熱の特徴

大人では87%が発熱するとされ、子どもより高頻度で発熱が見られます

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診断の困難さ

風邪と区別がつきにくく、受診が遅れやすいため感染拡大のリスクが高まります

百日咳大人の初期症状と経過

大人の百日咳は潜伏期間が7~10日で、範囲としては4日から21日までかなり幅があります。臨床経過は、カタル期、発作期(痙咳期)、回復期の3期に分けられますよ。

参考)大人の百日咳の症状や検査・治療方法について【後遺症・仕事を休…


第1段階のカタル期では、鼻水、くしゃみ、微熱といった風邪に似た軽い咳が徐々に出現します。咳は徐々に激しくなり、1~2週間後に第2段階である発作期が始まるんです。この時期が最も感染力が強く、周囲への感染リスクが高い時期となります。

参考)百日咳に注意しましょう/佐野市


大人の場合、乳幼児期のような特徴的な「ヒュー」という音を伴う咳発作が見られないことが多く、長引く咳やしつこい咳として認識されることがほとんどです。発熱に関しては、乳幼児の場合は微熱程度とされていますが、大人の場合は87%の方が発熱するともされています。

参考)【2025年最新情報】百日咳、流行しています。大人も見逃し厳…

百日咳大人の主な症状と頻度

大人の百日咳の症状を頻度で示すと次のようになります。​

症状 出現頻度
咳発作 70~99%
夜間の咳発作 61~87%
息を吸った時の喘鳴(ぜいめい) 8~82%
咳をした後に吐く 17~65%
発熱 87%
鼻炎 58%
咽頭炎 31%

第2段階の発作期では、数分間続く激しい咳の発作(5~10回の咳/発作)が起こります。これが百日咳で一番の特徴ですね。気管支からの痰の絡みがなかなか取れず、突発的に咳発作が出てくるんです。​
大人の百日咳の咳は「痰が絡むような湿った咳」ではなく、「連続する乾いた咳」が続くことが多いですよ。夜間になると咳が悪化しやすく(61~87%)、咳の後に吐いてしまったり(17~65%)することもあります。

参考)百日咳の症状と治療 href=”https://kobe-kishida-clinic.com/respiratory-system/respiratory-disease/whooping-cough-symptoms-treatment-adult/” target=”_blank”>https://kobe-kishida-clinic.com/respiratory-system/respiratory-disease/whooping-cough-symptoms-treatment-adult/amp;#8211; 大人の感染例と対策 – …

百日咳大人と子どもの症状の違い

子どもの場合、激しい咳き込みの後に「ヒュー」という笛のような呼吸音を伴うことがよく知られていますが、大人の場合はこの典型的な音が出にくいんです。乳幼児では喘鳴が69~92%の方に診られますが、大人では8~82%と乳幼児よりは喘鳴は必発ではありません。​
発熱も軽度の場合が多いため、風邪との区別が難しくなります。大人の百日咳は子どもに比べて軽症または非典型的なことが多く、単なる「長引く風邪」として認識されるケースが多いため、受診が遅れがちになりやすいんです。

参考)【的場医院-金町駅徒歩4分】百日咳について


痰についても、大人の場合は少ない、またはほとんど出ないことが特徴的です。これにより乾いた咳が持続し、2週間以上続くしつこい咳として現れます。

参考)大人もかかる「百日咳」——しつこい咳の正体かもしれません

百日咳大人の合併症とリスク

大人が百日咳を発症すると、強い咳によって肋骨を疲労骨折してしまったり、仕事や家事に支障をきたすほど長期間咳き込むことがあります。子どもは重症化しやすいというリスクがある一方、大人の場合は生活の質(QOL)の低下という観点で問題となることが多いんです。​
大人が経験しうる合併症とその頻度は以下の通りです。

参考)長引くその咳、大丈夫? 大人の百日咳と「D-Tap(トリビッ…

合併症 出現頻度
睡眠障害・不眠 約77%
体重減少 3~33%
尿失禁 3~28%
失神 2~6%
肋骨骨折 1~4%
無呼吸発作 27~86%
副鼻腔炎 13%
中耳炎 4%

睡眠障害は約77%と非常に高頻度で、夜間の激しい咳発作でぐっすり眠れなくなる方が多いですよ。咳で肋骨が痛むことも珍しくなく、咳をすると胸が痛いと感じて受診し、レントゲンで骨折が見つかるケースもあります。​
百日咳大人の診断方法と検査

成人の場合は症状が軽いことも多く診断が困難です。百日咳の確定診断としては、血液検査、培養検査、百日咳菌の遺伝子検査(百日咳菌LAMP法PCR法)を行います。

参考)百日咳の症状・検査・治療について – 東京田園調布駅前呼吸器…


血液検査では検査キットを使って、百日咳菌に対するIgM/IgA抗体を測定します。百日咳抗体IgAはワクチン接種の影響を受けにくいため、診断に有用とされていますよ。判定基準は、陽性が11.5NTU以上、判定保留が8.5~11.5NTU、陰性が8.5NTU以下となっています。

参考)百日咳検査について(百日咳抗体IgA) – 大阪グランドクリ…


国立感染症研究所の報告によると、2016年には百日咳菌のIgAとIgM抗体を測定する百日咳抗体測定キットが体外診断薬として新たに承認されました(健康保険適用)。このIgMとIgA抗体はワクチン接種の影響を受けないため、診断精度が向上しています。

参考)百日咳の検査診断 |国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供…


国立感染症研究所『百日咳の検査診断』では、年齢、発症日数、ワクチンの接種歴などの情報をもとに適切な検査を選択することの重要性が述べられています。
LAMP法やPCR法は迅速に結果が出ることが特徴ですが、結果に1週間かかることもあります。抗原検査は15分程度で結果が得られて便利ですが精度が低いため見逃しも多く、「陰性」結果には注意が必要です。

参考)百日咳の症状と対処法|長引く咳から子どもを守る完全ガイド20…


培養検査は年齢や保菌量によっては菌を特定するのが難しい場合があります。成人の百日咳例は発症後4週間以上の場合は百日咳抗体検査を行うことが推奨されています。百日咳感染後90%以上でPT抗体およびFHA抗体が検出できるとされていますよ。

参考)https://www.crc-group.co.jp/crc/q_and_a/146.html

百日咳大人の治療と抗菌薬

百日咳の治療には、抗生物質が用いられます。百日咳菌に対して効果のある抗菌薬としては、マクロライド系(エリスロマイシン、クラリスロマイシンアジスロマイシンなど)が第一選択です。

参考)百日咳


発症初期(カタル期)に服薬開始すれば、症状と感染力を軽減可能です。この時期に治療を開始すれば、咳の進行を抑えることができ、感染の拡大も防ぐことが可能なんですよ。​
ただし、カタル期に抗菌薬を飲むと菌は減るのですが、症状は良くならないと言われています。菌が減っても気管支が痛んでしまっている訳ですね。その代わり、菌が減ることにより他の人へ感染する可能性は下がります。

参考)「百日咳」は予防するのが一番!


痙咳期に入ってからでは抗菌薬の効果は限定的で、症状の自然経過をたどることになります。百日咳の基本再生産数(1人の患者から何人に感染が起こりうるか)は12~16程度というデータがあり、感染力が最強・最恐の麻疹(はしか)とほぼ同等です。​
近年ではマクロライド耐性菌の報告もあり、特に日本では2018年に初の耐性株が確認されました。2025年の流行ではこの耐性株が主流を占めていると報告されており、ST合剤(スルファメトキサゾール・トリメトプリム、バクタ他)を選択するなど今後は治療方針の見直しや耐性菌への警戒が求められます。​
日本小児感染症学会のガイドライン報告によると、マクロライド耐性百日咳菌(MRBP)検出患者では、マクロライド系薬使用後も咳嗽が悪化した例が32.3%で、マクロライド感性百日咳菌検出患者の13.3%と比べて高い割合を示しています。

参考)https://www.jspid.jp/wp-content/uploads/2025/08/guide_bp_20250820.pdf


日本小児感染症学会『マクロライド耐性百日咳菌への対応について』では、治療2週間後の除菌率がマクロライド感性菌では80.0%であったのに対し、MRBP検出患者では22.6%と大きく低下することが報告されています。
百日咳が疑われる場合は、治療が遅れることがないように、抗体検査の結果を待たずに、抗菌薬治療をおこなうことが推奨されています。咳が激しい場合は、肋骨の筋肉痛や頭痛を伴うこともあるため、痛み止めを併用することもありますよ。

参考)何だか今年やたらと流行っている「百日咳」って何?大人がかかっ…

百日咳大人の感染力と予防対策

百日咳の感染経路は、咳やくしゃみなどによる飛沫感染や接触感染です。特に感染力が強いのは発症初期(カタル期)です。この時期は、軽い風邪のような症状しかないため、周囲にうつしてしまいやすいんです。​
排菌量が多く、周囲への感染力が最も強い時期がカタル期の約2週間となります。大人は症状が軽く百日咳特有の症状があらわれにくいため、感染に気づかずに仕事に復帰すると職場に感染を広げてしまうリスクもあります。

参考)子どもが百日咳に感染したら家族は出勤停止になる?大人にもうつ…


学校保健安全法では、百日咳の診断がついた場合、「特有の咳が消失するまで」または「5日間の適切な抗菌薬治療が終了するまで」が登園・登校停止となります。大人の場合、法律的には出勤停止の決まりはありませんが、感染拡大を防ぐためには同様の期間の休養が望ましいとされています。

参考)百日咳の潜伏期間・大人もかかる?|高輪マリンこどもクリニック


感染を防ぐために、手洗い・うがいをする、マスクを着用するといったことを徹底しましょう。百日咳の予防には、生後2ヶ月から受けられる5種混合ワクチン(または4種混合ワクチン)が効果的です。厚生労働省によると、ワクチンによって百日咳の感染リスクを大幅に減らすことができるとされていますよ。

参考)百日咳はうつる?予防する方法は?


厚生労働省『百日咳』のページでは、合併症としては肺炎や脳症などもあり特に乳児では注意が必要であることが示されています。
百日咳は5類感染症の全数報告疾患です。診断された場合は、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第12条第1項の規定に基づき、7日以内に医療機関より届出をおこなう必要があります。​
家族が百日咳に感染したときは、家庭内感染が起こらないように気をつけることが重要です。百日咳は感染力が強いため、家庭内で感染が広がりやすいという特徴があります。特に生後6ヶ月未満の乳児では稀に肺炎脳症を合併して重症化することもあるため注意が必要なんですよ。​