星状角膜炎 樹枝状角膜炎 地図状角膜炎 病型と治療

星状角膜炎 樹枝状角膜炎 地図状角膜炎の診かた

星状角膜炎の全体像
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臨床所見と病型分類

星状角膜炎・樹枝状角膜炎・地図状角膜炎の形態的特徴と、上皮型角膜ヘルペスの中での位置づけを整理します。

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病因と鑑別のポイント

単純ヘルペスウイルス(HSV)や眼部帯状疱疹、Thygeson点状表層角膜炎などとの鑑別に焦点を当てます。

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治療戦略とステロイド管理

抗ウイルス薬・ステロイド点眼の使い分けと、ステロイド緑内障・白内障などのリスクマネジメントを解説します。

星状角膜炎 上皮型角膜ヘルペスの病型分類と臨床像

 

星状角膜炎は、単純ヘルペスウイルスによる上皮型角膜ヘルペスのごく小さな病変として生じる星芒状病変を指し、病変が増大すると樹枝状角膜炎、さらに広がると地図状角膜炎と連続的に移行する病型と理解されています。

角膜上皮の欠損はフルオレセインで星型に染色され、周囲上皮は比較的保たれ実質や内皮には異常を認めない点が典型像とされます。

星状角膜炎では自覚症状として異物感、流涙羞明が前景に立つ一方、病変サイズが小さいため視力低下は軽度にとどまることも多く、問診で再発性の経過を確認することが診断のうえで重要です。

参考)角膜ヘルペス (かくまくへるぺす)とは

同じ上皮型でも樹枝状角膜炎は「木の枝状」の連続する潰瘍として拡大しやすく、放置されると病変が癒合して地図状角膜炎に至り視力予後に大きく影響するため、早期の病型把握が求められます。

参考)角膜ヘルペス|医療法人 藤田眼科

星芒状病変は、教科書的には稀少な印象を受けますが、日本眼科学会の感染性角膜炎ガイドラインでは樹枝状角膜炎の一亜型として明示されており、実臨床では「ごく小さな樹枝状角膜炎」と捉えると診断がスムーズになります。

参考)https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/resources/member/guideline/kansen2.pdf

特に初発例では軽度の点状病変として見逃されやすく、細隙灯顕微鏡での高倍率観察と、フルオレセイン染色パターンの慎重な評価が診断の精度を大きく左右します。

参考)https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/resources/member/guideline/kansen2-3.pdf

星状角膜炎・樹枝状角膜炎・地図状角膜炎の病型を通じて、病変は上皮層にとどまるものの、適切な治療が行われない場合には実質型や内皮炎へ進展しうるため、「小さい病変だから軽症」とは決めつけない姿勢が重要です。

参考)角膜実質炎 – 20. 眼の病気 – MSDマニュアル家庭版

また、星状角膜炎の段階で自覚症状と臨床所見のギャップを意識し、患者への説明とフォローアップ計画を丁寧に立てることで、治療中断や自己判断でのステロイド使用といったリスクを減らすことができます。

参考)https://www.hinohp.com/files/10307.pdf

星状角膜炎 樹枝状角膜炎 地図状角膜炎の鑑別診断とThygeson点状表層角膜炎

星状角膜炎の鑑別として最も重要なのが、眼部帯状疱疹に伴う星芒状角膜炎と、Thygeson点状表層角膜炎であり、日本眼科学会ガイドラインでもこれらが代表的な鑑別疾患として挙げられています。

眼部帯状疱疹では前駆する皮疹や強い疼痛、角膜知覚低下が特徴的で、星芒状病変が見られても皮膚所見や眼瞼・結膜の炎症所見を併せて評価することで、単純ヘルペスによる星状角膜炎との区別が可能です。

Thygeson点状表層角膜炎は両眼性・再発性に星形ないし斑状の表層角膜混濁を認め、上皮欠損ではなく上皮混濁が主体である点が星状角膜炎と異なり、フルオレセイン染色での染色性の違いが重要な鑑別ポイントです。

また、Thygeson角膜炎では疼痛よりも異物感と軽度の視力障害が中心で、長期に再発を繰り返すにもかかわらず角膜瘢痕は乏しく、ステロイド点眼への反応性が高いという臨床的特徴があります。

参考)ちょっとまれな病気シリーズ|特集|石峰会いしづち眼科−愛媛県…

樹枝状角膜炎とアカントアメーバ角膜炎に伴う偽樹枝状病変の鑑別も重要で、後者ではしばしばコンタクトレンズ装用歴と高度の疼痛、実質浸潤を伴うことが多く、単純ヘルペスの病型である星状角膜炎とは病態も治療も大きく異なります。

参考)http://doi.med.wanfangdata.com.cn/10.3760/cma.j.issn.2095-0160.2014.04.013

さらに、重症のアレルギー性結膜炎に伴うシールド潰瘍では、上皮欠損が楕円形で辺縁が平滑な潰瘍としてみられ、星芒状病変とは形態・背景ともに異なるため、結膜所見とアトピー歴の聴取が鑑別の鍵となります。

参考)https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/resources/member/guideline/ACD3rd_chap2-3.pdf

星状角膜炎を樹枝状角膜炎・地図状角膜炎と合わせて病型スペクトラムとして理解することで、「小さな星芒状病変」に遭遇した際も、治療方針とフォローの頻度を適切に設定しやすくなります。

参考)https://www.jmedj.co.jp/blogs/product/product_22904

一見すると些細な上皮病変でも、再発性や反復する角膜ヘルペスの既往がある場合には、Thygeson角膜炎などの非感染性疾患との鑑別を意識しつつ、抗ウイルス薬治療の適応を慎重に検討することが求められます。

星状角膜炎 ステロイド点眼のリスクとステロイド緑内障・白内障

星状角膜炎を含む上皮型角膜ヘルペスでは、ステロイド単独投与が病変増悪や地図状角膜炎への進展を招くことが古くから知られており、ガイドラインでも上皮型に対するステロイド単剤使用は禁忌とされています。

一方で、実質型やディスク状角膜炎など免疫反応主体の病型では、抗ウイルス薬とステロイド点眼の併用が視力予後の改善に寄与するため、病変が上皮主体か実質主体かを正確に評価したうえでステロイド使用の是非を判断する必要があります。

ステロイド点眼による眼圧上昇は、正常眼でも1か月の連続使用で約5%に20〜30mmHgまでの上昇がみられ、長期高用量ではほぼ全例で眼圧上昇が起こりうると報告されており、いわゆるステロイド緑内障のリスクとして問題となります。

また、高用量・長期使用例では水晶体後嚢下に皿状混濁を生じるステロイド白内障の頻度も増加し、早期から視力障害が目立つ症例では通常の白内障手術が必要となることもあるため、短期処方でも累積曝露量には意識を向けるべきです。

ステロイド使用中は、角膜感染症の誘発や増悪にも注意が必要であり、眼部帯状疱疹やヘルペス性角膜炎などの眼感染症が誘発されることがあるため、星状角膜炎のような小病変であっても眼圧測定と感染症徴候のチェックを定期的に行うことが推奨されます。

特にアトピー性皮膚炎や慢性アレルギー性結膜炎でステロイド点眼が長期漫然と継続されている症例では、星状角膜炎や樹枝状角膜炎の発症を契機にステロイド全体の見直しが必要となることが少なくありません。

ステロイド点眼のリスクは遺伝素因だけでなく投与量と投与期間に依存するため、星状角膜炎の段階であっても「短期間だから安全」とは言い切れず、個々の患者の既往と併用薬を踏まえながら最小限の用量・期間を心がけることが重要です。

同時に、ステロイドによる中心性漿液性網脈絡膜症など網膜疾患の発症リスクも指摘されており、視界のゆがみや中心暗点などの訴えがあれば角膜病変とは別に後極部の評価も意識したいところです。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6707196/

星状角膜炎 感染性角膜炎全体の中での位置づけと予後

感染性角膜炎は世界的にみて角膜失明の主要原因であり、人口10万当たり2.5〜799と地域差の大きい発症率が報告されている中で、ウイルス性角膜炎は頻度こそ細菌・真菌性より少ないものの、失明原因としては無視できない位置を占めています。

その中で星状角膜炎は上皮型角膜ヘルペスの初期病変として位置づけられ、適切な抗ウイルス治療により瘢痕を残さず治癒することも多い一方、再発を繰り返すことで実質型や内皮型へと病像がシフトし、視機能に不可逆的な影響を及ぼすリスクを抱えています。

角膜ヘルペスは「再発性」という特徴があり、ストレスや発熱、紫外線曝露などを契機に再燃するため、星状角膜炎のエピソードを単発のイベントとして扱わず、長期的な再発予防と患者教育を含めたマネジメントが重要となります。

特に、若年から繰り返す角膜ヘルペスでは累積的な角膜混濁や感覚低下、二次的なドライアイが視機能低下の一因となるため、早期の病診連携や角膜専門医への紹介も検討すべき戦略の一つです。

予後に関しては、星状角膜炎の段階で適切な抗ウイルス治療が行われた場合、視力は良好に保たれることが多いものの、高齢者や免疫抑制状態にある患者では実質浸潤や潰瘍形成へ進行しやすく、入院加療や全身抗ウイルス薬投与が必要となる場合もあります。

一方、誤ったステロイド使用による病変の拡大や二次感染の併発、角膜穿孔などの重篤な合併症も報告されており、初期病像の軽さに油断せず、慎重なモニタリングと早期対応が予後改善の鍵といえます。

感染性角膜炎全体の治療トレンドとしては、抗菌薬耐性や治療失敗例を背景に、薬物動態や持続放出型製剤の開発が進んでおり、角膜ヘルペスにおいても今後はドラッグデリバリーシステムの進歩が再発抑制やアドヒアランス改善に寄与する可能性があります。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11885436/

星状角膜炎を単なる局所病変とみなさず、将来の視機能と生活の質に影響しうる「感染性角膜炎の入り口」と捉えることで、医療者側の意識も治療計画も一段階引き上げることができるでしょう。

星状角膜炎 デジタルデバイス時代の実臨床での見逃しとチーム医療(独自視点)

近年、デジタルデバイスの使用時間増加に伴い、ドライアイや眼精疲労を訴える患者が増加しており、その中に星状角膜炎をはじめとする上皮型角膜ヘルペスが紛れ込んでいるケースが少なくないと指摘されています。

「画面を見すぎたせい」と自己判断した患者が市販のドライアイ点眼薬のみで経過をみてしまい、星芒状病変が樹枝状角膜炎へ進展してから受診する例もあり、問診でデジタルデバイス使用状況と発症タイミングを丁寧に聴取する意義は高まっています。

一次医療の現場では、診療時間の制約から軽度の異物感や羞明に対して「結膜炎」や「ドライアイ」と仮診断されることが少なくなく、フルオレセイン染色を省略すると星状角膜炎のような小病変は容易に見逃されます。

その一方で、日本眼科学会ガイドラインは、樹枝状・地図状といった典型像だけでなく星芒状病変も含めた上皮病変の評価を推奨しており、簡便な検査ほどルーチン化することで見逃しを減らせることを示唆しています。

チーム医療の観点では、視能訓練士や看護師による初期スクリーニングでフルオレセイン染色と細隙灯前眼部写真をルーチン化し、医師が後から詳細に所見を確認できるワークフローを構築することで、星状角膜炎の早期発見が期待できます。

また、電子カルテ上で「角膜ヘルペス既往」や「眼部帯状疱疹既往」をアラートとして表示する工夫により、再診時に小さな星芒状病変を見逃さず、ステロイド処方時の注意喚起にもつなげることができます。

患者教育の面では、スマートフォンやタブレットを通じて角膜ヘルペスに関する信頼性の高い情報へのアクセスを案内し、再発時に早期受診を促す仕組みづくりが有用であり、医療機関の公式サイトに星状角膜炎を含む上皮型角膜ヘルペスの情報を掲載することも一助となります。

さらに、在宅療養の高齢者や免疫抑制状態の患者では、訪問看護師やかかりつけ薬剤師が眼症状の変化に気づき、星状角膜炎を含む角膜ヘルペス再燃の可能性を主治医に共有することで、視機能低下の予防に寄与できるでしょう。

星状角膜炎や樹枝状角膜炎の病型や治療全般を日本語で整理したガイドラインの原典です(病型分類・鑑別診断・治療方針の参考として)。

日本眼科学会 感染性角膜炎ガイドライン PDF

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