ホフマン反射とトレムナー反射の検査方法と診断意義

ホフマン反射とトレムナー反射

ホフマン反射とトレムナー反射の基本情報
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病的反射の概要

正常では出現しない反射で、錐体路障害の診断に重要

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検査の目的

中枢神経系の機能評価と病変の局在診断

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臨床的価値

神経学的診断における客観的指標として活用

ホフマン反射の検査方法と診断基準

ホフマン反射(Hoffmann’s reflex)は、上肢の病的反射の代表的な検査です 。検査手順として、患者の手関節を軽く背屈させ、手指をやや屈曲させた状態で中指中節部を検者が挟みます 。検者の母指で中指の爪の部分を鋭く手掌側に向かって弾くことで反射を誘発します。

参考)反射の評価 – 07. 神経疾患 – MSDマニュアル プロ…

陽性判定の基準は、刺激によって母指の内転および屈曲が起こることです 。この反射は健常者でも出現することがありますが、一側のみ陽性の場合は特に病的意義があります 。反射中枢はC8〜T1レベルに存在し、錐体路障害時に亢進することが知られています 。

参考)指を弾けばアラ不思議!! Hoffmann反射・Trömne…

ホフマン反射の解剖学的機序

ホフマン反射の神経解剖学的基盤は、手指屈筋の単シナプス性反射弓に基づいています。C6からT1レベル、特にC8が主要な反射中枢として機能し、上位運動ニューロンからの抑制が失われた場合に病的に亢進します 。この反射は、大脳皮質の運動野から脊髄前角細胞に至る錐体路の機能的統合性を評価する重要な指標となります。
正常状態では、上位運動ニューロンからの下行性抑制により、この反射は通常観察されません。しかし、錐体路に病変が生じると、この抑制機能が失われ、反射が顕著に現れるようになります 。特に頸髄レベルでの障害では、腱反射の亢進を伴わない場合でも病的反射が陽性となることがあり、診断上重要な所見となります。

参考)日常診療で使える整形知識(3)href=”http://www.hhk.jp/gakujyutsu-kenkyu/ika/180204-102000.php” target=”_blank” rel=”noopener”>http://www.hhk.jp/gakujyutsu-kenkyu/ika/180204-102000.phplt;br/href=”http://www.hhk.jp/gakujyutsu-kenkyu/ika/180204-102000.php” target=”_blank” rel=”noopener”>http://www.hhk.jp/gakujyutsu-kenkyu/ika/180204-102000.phpgt; 2.手のしびれの診…

トレムナー反射の検査技術と評価

トレムナー反射(Trömner’s reflex)は、ホフマン反射と類似した病的反射ですが、刺激方法に違いがあります 。検査では、手関節を軽く背屈させ、手指をやや屈曲させた状態で、検者が左手で被験者の中指中節部を支えます 。検者の右示指または中指で、被験者の中指先端の手掌面を下から上に向かって強く弾くことで反射を誘発します。

参考)トレムナー反射とは何か:交通事故との関係

陽性時の反応は、刺激により母指の内転と屈曲が起こることです 。この反射もホフマン反射と同様に、一側のみ陽性の場合に錐体路障害を疑う重要な所見となります 。反射中枢はC6からT1レベルに存在し、特に上肢腱反射が亢進した状態で観察されやすくなります 。

参考)病的反射の検査方法や注意点 – ホフマン反射・トレムナー反射…

トレムナー反射の臨床的特徴

トレムナー反射は、日本神経学会の神経学的検査チャート作成の手引きにおいて、「患者の第3指の手掌側先端を強くはじく」検査として定義されています 。健常者でも出現することがあるため、左右差の有無が診断上重要な判定基準となります。
この反射は、錐体路障害の初期段階でも検出可能であり、腱反射の変化よりも早期に現れることがあります。神経変性疾患や脊髄疾患の診断において、微細な錐体路機能の変化を検出する貴重な検査手段として活用されています 。また、経時的変化を追跡することで、病態の進行や治療効果の評価にも用いられます。

参考)神経学的検査(腱反射、病的反射、知覚、徒手筋力テスト等)の基…

ホフマン反射とトレムナー反射の臨床応用

両反射は、神経学的診察における錐体路障害の評価に欠かせない検査です 。特に頸椎症性脊髄症、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症などの上位運動ニューロン障害の診断において重要な役割を果たします。交通事故によるむち打ち損傷の後遺障害評価でも、これらの反射検査が実施されることがあります 。

参考)【むち打ち・頚椎捻挫】トレムナー(Tromner)反射とは、…

検査の信頼性を向上させるため、必ず両側を比較検査し、複数回実施することが推奨されます。また、患者の緊張状態や検査環境によって結果が影響されることがあるため、適切な環境下での検査実施が重要です 。

参考)「神経学的検査チャート作成の手引き」|お知らせ|日本神経学会

両反射の鑑別診断における意義

ホフマン反射とトレムナー反射は、末梢神経障害と中枢神経障害の鑑別に特に有用です。むち打ち損傷では主に末梢神経障害が問題となるため、これらの病的反射が陽性の場合は脊髄障害を疑う必要があります 。一方で、健常者でも陽性となることがあるため、単独での診断価値は限定的で、他の神経学的所見と総合的に評価することが必要です。
臨床現場では、これらの反射検査を腱反射検査、感覚検査、筋力検査と併せて実施し、神経学的障害の全体像を把握することが重要です。特に脊髄の圧迫性病変や炎症性病変の早期発見において、これらの病的反射は貴重な診断手がかりを提供します 。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11983121/

ホフマン反射とトレムナー反射の最新研究動向

近年の研究では、これらの反射検査の精度向上と客観化が進められています。2024年の研究では、頸髄圧迫症の診断におけるこれらの反射の正確性と信頼性について詳細な検討が行われ、従来考えられていた以上に診断価値が高いことが示されています 。
また、電気生理学的検査との組み合わせにより、反射の定量的評価が可能になってきています 。H反射(Hoffman反射の電気刺激版)の研究により、反射経路の詳細な機能評価が可能となり、より精密な診断が期待されています 。これらの進歩により、従来の視診による主観的評価から、より客観的で再現性の高い検査手法への発展が図られています。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6123946/

人工知能を活用した画像解析技術の導入により、反射の微細な変化も検出可能になり、早期診断や経過観察における有用性がさらに向上することが期待されています。

MSDマニュアル 神経学的診察における反射評価の詳細と標準的検査手順について専門的に解説
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