膝の病気:半月と半月板損傷
膝の病気:半月の半月板損傷 症状とロッキング
半月板は大腿骨と脛骨の間にある三日月型の組織で、膝関節のクッションとして働きます。ここが損傷すると、膝の曲げ伸ばしで痛みや「ひっかかり」を自覚しやすくなります。さらに悪化すると関節水腫が出たり、膝が動かせなくなるロッキング(機械的ロック)を呈することがあります。
医療者向けに整理すると、半月板損傷の訴えは「痛い」だけでなく、動作依存の質的情報が鍵です。例えば、方向転換や深屈曲での疼痛、荷重時のクリック、伸展終末域での引っかかり感など、関節内の機械的イベントを示唆する所見は問診で拾えます。ロッキングについては、患者が言う「動かしにくい(疼痛性ガード)」と、断片が介在して本当に伸展・屈曲が止まる「機械的ロック」を切り分ける必要があります。
半月板損傷はスポーツ外傷の文脈で語られがちですが、臨床では「外傷性」「変性」の二つの背景を常に意識した方が説明が通ります。スポーツ由来ならジャンプ着地・方向転換など“体重がかかった状態での捻り”が典型で、キック動作や反復運動でも損傷し得ます。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/a6080c5009d179e0bc9055bb64aba79aa637dfce
この“荷重+回旋”という条件は、問診で再現しやすい再現痛のヒントになります。
また、痛みの部位にも注意が必要です。内側半月なら内側関節裂隙痛、外側なら外側関節裂隙痛が古典ですが、実際は膝前面痛として訴えたり、膝窩部の違和感として表現されることもあります。特にスポーツ選手では、疼痛の言語化が曖昧なことも多く、疼痛部位のマッピング(指差し)と動作再現で具体化していくと診断の精度が上がります。
「水がたまる」も重要なシグナルです。半月板自体は血流が乏しい領域がある一方で、滑膜反応は起こり得ます。繰り返す水腫は、関節内の刺激源(断裂、遊離体、軟骨損傷など)を疑うきっかけになり、保存療法の説明でも「炎症を落ち着かせつつ、刺激源の評価を並行する」という構図が理解されやすくなります。
膝の病気:半月の半月板損傷 病態と断裂形態
半月板損傷の断裂形態は、縦断裂、バケツ柄状断裂、水平断裂など多様で、形態により症状の出方も変わります。
特にバケツ柄状断裂は断片が関節内に転位しやすく、臨床的にはロッキングや伸展制限の原因として疑われやすい類型です(ただし確定は画像・鏡視所見が必要です)。
「半月板は切れても痛くないことがある」という点は、患者説明でしばしば誤解が生まれます。半月板の辺縁部は血流がある一方、中央部は血流が乏しいため、治癒能力や疼痛の出方が一様ではありません。
そのため、同じ“半月板損傷”でも、症状が強い人・弱い人が混在し、画像所見だけで治療適応を決める危うさにつながります。
医療従事者向けの臨床推論としては、断裂の「部位(前角・中節・後角)」「形態(縦・水平・フラップ・バケツ柄など)」「安定性(断片の可動性)」「合併(靱帯損傷、軟骨病変)」が、症状と治療選択を規定する、と整理すると実務的です。
とくに靱帯損傷の合併は、スポーツ損傷シリーズでも“膝の安定化に重要な靱帯損傷に合併することがある”とされ、問診・診察の優先度を上げる根拠になります。
意外と抜けやすいのが、半月板損傷を「単独の局所障害」として説明しすぎることです。半月板は荷重分散の役割が大きく、損傷や切除によって関節軟骨にかかるストレス環境が変化し得ます。患者教育としても「痛みの原因=裂け目」だけではなく、「関節内の力学環境が乱れて炎症が出る」という説明を入れると、リハビリ(荷重・アライメント・筋機能)への納得が得やすくなります。
膝の病気:半月の半月板損傷 診断とMRI
半月板損傷の診断は、疼痛誘発検査と画像検査を組み合わせて行い、X線では半月板自体は描出されないためMRIが用いられます。
MRIは損傷の部位や形状を明らかにするのに有用とされ、治療方針(保存か、鏡視下で縫合か切除か)を検討する材料になります。
一方で医療者として強調したいのは、「MRIが有用」=「MRIだけで臨床診断が完結する」ではない点です。スポーツ損傷シリーズが“疼痛誘発検査と画像検査を組み合わせて”と明記しているのは、画像所見の解釈が臨床像とセットであることを示しています。
半月板の変性シグナルは無症候例でも見られ得るため、症状と一致しない“所見の一人歩き”を避けるフレーミングが必要です。
臨床現場では、徒手検査(例:回旋ストレスでの疼痛誘発)を複数組み合わせ、さらに関節裂隙圧痛、腫脹、可動域制限、荷重での症状再現などと統合して「疑いの濃度」を上げ、MRIで形態・部位・合併損傷を確認する流れが現実的です。患者説明では「検査で100%断定ではなく、いくつかの情報を合わせて判断する」ことを先に共有すると、検査結果に対する過度な期待や不信を減らせます。
なお、スポーツ損傷シリーズの参考文献には、ACLおよび半月板損傷が疑われるケースに対するMRIの診断精度を扱った系統的レビュー/メタ解析が挙げられています。
臨床上は「ACLの合併が疑われるなら、半月板の評価も(またはその逆も)一段上の注意で行う」という実務ルールに落とすと、診断の抜けを減らせます。
膝の病気:半月の半月板損傷 治療と関節鏡手術
リハビリテーションや薬で症状が改善しない場合には関節鏡手術を行い、術式は「損傷部を切り取る半月板切除術」と「糸で縫い合わせる縫合術」に大別されます。
血流のある辺縁部の損傷は縫合の対象になり得ますが、中央部には血流がないため切除が多い、というのが基本方針です。
医療従事者向けに補足すると、ここでいう血流は、半月板の微小血管分布(辺縁部優位)という生物学的制約に紐づいています。
したがって治療選択は「裂けたから縫う/切る」ではなく、「縫った場合に治癒が見込める環境か」「切った場合に症状は取れるが、荷重分散の機能低下をどの程度許容するか」という二軸で説明すると、患者の意思決定に耐える情報になります。
ここで“あまり知られていないが臨床で効く”視点として、半月板治療は「関節内の機械的障害」と「将来の関節環境(軟骨摩耗)」のトレードオフになりやすい点が挙げられます。近年の系統的レビューでは、(対象や損傷型に依存するものの)半月板温存(修復)の方が半月板切除より変形性関節症(OA)進行の観点で有利である、という方向性がまとめられています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11052089/
もちろん全例で縫合が最適という意味ではなく、損傷形態・部位・血流、患者の年齢や活動性、合併軟骨病変などを踏まえて「温存できる条件を探す」姿勢が重要、という臨床メッセージとして使えます。pmc.ncbi.nlm.nih+1
さらに、スポーツ復帰の目安として、部分切除術は2–3か月、縫合術は4–6か月程度を要する、とされています。
この差は患者の説明で強力な材料ですが、復帰を“暦”で決めると再受傷や滑膜炎の反復を招くことがあるため、疼痛、腫脹、可動域、筋力、競技特異的動作の質などの条件も併記して指導すると安全です。
膝の病気:半月の半月板損傷 リハビリとスポーツ復帰
半月板損傷では、保存療法のリハビリ(運動療法)と、術後リハビリのいずれも「膝そのもの」だけで完結しません。スポーツ損傷シリーズでも治療の柱としてリハビリテーションが示され、保存療法で改善しない場合に関節鏡手術へ進む流れが説明されています。
医療者としては、疼痛コントロールと可動域、荷重の質、股関節・足関節を含めた運動連鎖の再教育まで視野に入れると、再燃を減らしやすくなります。
術式別の復帰目安(切除2–3か月、縫合4–6か月)は患者の理解を助けますが、同じ縫合でも損傷形態(例:バケツ柄状断裂、水平断裂)や合併損傷によりプロテクションが変わり、荷重・屈曲制限の設計が変動します。
したがって現場の説明では「この期間は平均的な目安で、膝の腫れ・痛み・筋力の回復と、画像・診察所見で調整する」まで一文で添えるとトラブルが減ります。
独自視点として強調したいのは、半月板損傷の“再受傷予防”は膝の周径や大腿四頭筋だけでは不十分になりやすい点です。方向転換・減速・片脚着地では体幹の回旋制御と股関節外転外旋筋群の出力が膝外反・脛骨回旋の制御に影響し、結果的に半月板へ「荷重+捻り」の条件が再現されやすくなります(半月板損傷の典型受傷機転がまさにこれです)。
そのため、リハビリの進行で痛みが落ち着いた段階ほど、単純筋トレだけでなく、競技動作を分解したアジリティ/プライオメトリクスの前段階(減速、カッティングのフォーム再学習)に時間を割く価値があります。
患者指導で使える具体例としては、以下のように「やってよい運動/注意が必要な動作」を対比させると実行率が上がります。
・✅推奨(主治医の指示内で):直線歩行、痛みのない範囲での可動域運動、股関節周囲筋トレ、腫れが引くためのアイシング
・⚠️注意(特に初期):深いしゃがみ込み、急な方向転換、荷重下での捻り、痛みを押してのジャンプ着地反復
・🚫中止目安:運動後に腫れが増える、引っかかりが増悪する、ロッキング様の症状が出る(機械的障害の可能性)
また医療者間の連携として、復帰判定は「診察(関節裂隙痛、クリック)、腫脹、ROM、筋力、片脚スクワットやステップ動作の質、競技特異動作」のチェックリスト化が現実的です。時間だけで復帰を決めない姿勢は、患者安全だけでなく施設の説明責任の観点でも有効です。
(参考:半月板損傷の病態・診断(MRI)・治療(切除/縫合)・復帰目安がまとまっている)
日本スポーツ整形外科学会(JSOA)「スポーツ損傷シリーズ 33.半月板損傷」
(参考:半月板修復と切除のアウトカム差(OA進行など)を概観できるレビュー)
Osteoarthritis Development Following Meniscectomy vs. Meniscal Repair(review)

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