光療法の効果とメカニズムや適応疾患

光療法の効果

光療法の主な効果
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体内時計のリセット

高照度光が目の網膜に届くことで、視交叉上核に刺激が伝わり、体内時計を24時間周期に調整します

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睡眠ホルモンの分泌促進

光刺激によりセロトニン分泌が増加し、夜間のメラトニン産生を促進することで睡眠の質が改善されます

免疫反応の調整

特定波長の紫外線が過剰な免疫反応を抑制し、皮膚疾患や炎症症状を改善します

光療法による季節性感情障害への効果

光療法は季節性感情障害(冬季うつ病)に対して高い有効性を示しています。メタ解析では、双極性障害の治療反応率に対する光療法の有意な効果が確認され、リスク比1.78(95%CI:1.24~2.56、p=0.002)という結果が報告されています。治療開始後1週間で症状が改善し始め、約6~7割の患者に効果が見られることが明らかになっています。

参考)双極性うつ病に対する補助的ブライトライト光療法~メタ解析|医…


光療法の効果は早期に現れることも特徴的です。研究では、わずか1時間の高照度光療法でも抑うつ気分の有意な軽減が認められています。10,000ルクスの白色蛍光灯を用いた治療では、20分、40分、60分の各時点で抑うつスコアの改善が確認されており、短時間の曝露でも効果が期待できます。季節性感情障害は冬場の日照不足が原因と考えられており、光療法はこのシンプルな発想から生まれた治療法として確立されています。

参考)光だけではダメ 「バナナ」で冬季うつを治療 – 日本経済新聞

光療法による睡眠障害と体内時計への効果

光療法は睡眠リズム障害、特に概日リズム睡眠障害の治療に効果的です。体内時計を調節する作用があり、昼夜逆転や睡眠相後退型の睡眠リズム障害を改善します。メラトニンは本来25時間周期ですが、朝の光刺激によって網膜に光が入ると分泌が抑制され、1時間の誤差が修正されます。

参考)光療法はどんな睡眠障害に効果がありますか


高照度光療法では2,500~10,000ルクスの光を照射することで、脳内の神経伝達物質セロトニンの分泌を促進します。このセロトニンが睡眠ホルモンであるメラトニンの原料となり、夜間に松果体でメラトニンが産生されることで自然な眠気が誘発されます。パーキンソン病患者の睡眠障害においても、高照度光療法は概日リズムの回復を通じて有望な改善効果を示しています。

参考)起立性調節障害で活用される「光療法」効果ある?効果ない? -…


認知症患者に対する研究では、光療法が睡眠の質を改善し、覚醒回数を有意に減少させる効果が確認されています(n=4; 95% CI = −.56, −.05)。毎朝30分から1時間の光照射により、メラトニン分泌が高まり、セロトニンの産生増加によって気分も改善すると考えられています。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10578524/

光療法による認知機能への効果

光療法は認知症患者の認知機能改善に効果を示すことが、複数の研究で報告されています。システマティックレビューとメタ解析では、光療法が認知症患者のミニメンタルステート試験(MMSE)スコアと認知機能を大幅に改善したことが確認されています。ただし、行動・心理症状(BPSD)と睡眠のスコアには大きな変化は見られなかったとも報告されています。

参考)https://onlinelibrary.wiley.com/doi/pdfdirect/10.1002/brb3.2952


アルツハイマー型認知症患者を対象とした研究では、高照度光療法によってADAS認知機能スコアが有意に改善することが示されています。光療法が認知機能に効果を発揮するメカニズムとして、体内時計の調整能力が関連していると考えられています。体内時計は日中の覚醒と夜間の睡眠を制御しており、光療法によって正常化されることで認知機能が改善する可能性があります。

参考)認知症の治療には光療法が効果的?やり方や副作用などについて解…


さらに、光療法は睡眠の質を改善し、結果として認知機能を高める可能性があります。睡眠は脳の回復とメンテナンスに重要であり、良好な睡眠は記憶、注意力、学習などの認知能力の向上につながるとされています。加えて、光療法は脳内の特定の神経伝達物質のレベルを調整し、それが認知機能と気分に影響を与える可能性も示唆されています。​

光療法による皮膚疾患への効果

光療法、特に308nm~313nmの波長を持つナローバンドUVB(紫外線B波)は、アトピー性皮膚炎乾癬などの慢性炎症性皮膚疾患に対して有効な治療法です。紫外線が過剰な免疫反応を抑制することで皮膚症状が改善されることが研究で明らかになっています。ナローバンドUVBとUVA1は、アトピー性皮膚炎に対して最も頻繁に適用される治療法であり、実証された有効性を持っています。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3246755/


光療法の効果メカニズムとして、炎症細胞への作用、サイトカイン産生の変化、アトピー性皮膚における抗菌効果が確認されています。慢性掻痒症(かゆみ)に対しても、UV照射によって掻痒が軽減または完全に消失することが報告されており、光療法による皮膚改善の初期兆候として掻痒の軽減が見られることもあります。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6287194/


保険適応となる疾患には、アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、尋常性白斑、掌蹠膿疱症、類乾癬、円形脱毛症などが含まれます。エキシマライト治療では、波長308nmの紫外線を用いて、1箇所につき1秒~10秒程度と短時間で約5cm四方の限定された部位に照射し、健康な部分への照射を極力避けることができます。一般的には週に1~3回程度の照射を継続することで、症状の改善が期待できます。

参考)皮膚科光線療法(紫外線治療)

光療法の副作用と安全性

光療法は一般的に安全な治療法ですが、いくつかの副作用と注意点があります。短期的な副作用として、照射部位に赤みや日焼け、ほてり、乾燥、かゆみが現れることがあります。ただし、治療に使用される308nm~313nmの波長を持つ紫外線については、皮膚の発がんとの関連はないとされています。

参考)アトピーの光線療法|墨田区 曳舟泌尿器・皮ふ科クリニック


光療法を実施できない方には、光線過敏症の患者や、光によって症状が悪化する疾患を持つ方が含まれます。具体的には、膠原病、慢性光線性皮膚炎、色素性乾皮症、ポルフィリン症などの患者は安全上の理由から光線療法を受けられない場合があります。その他、過度に日焼けしている場合、自己免疫不全症、妊娠中の方、異常出血がある方、感染症や白斑がある方、感光薬を服用している場合も治療が制限されます。

参考)光治療(IPL)について|横浜市 東神奈川の神奈川はた皮膚科…


光療法の効果を最大限に引き出すためには、専門医の指導のもと適切な照射時間と頻度を守ることが重要です。長期的なリスクとして、UV放射に関連する発がんリスクは完全には除外されていないため、特に小児に対しては慎重に実施する必要があります。また、治療にはコスト、利用可能性、患者のコンプライアンスに関する制約もあります。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4599569/


適切な医療機関で実施される光療法は、アトピー性皮膚炎などの第二選択治療として最適であり、単独療法または全身性コルチコステロイドなどの全身薬との併用も可能です。治療を開始する前には、必ず医師に相談し、個々の患者の特徴と全体的な状態を考慮した上で実施することが推奨されます。​