片頭痛の治し方
片頭痛の急性期治療薬選択
片頭痛の急性期治療では、症状の重症度に応じた薬剤選択が重要です。軽症から中等症の片頭痛発作には、アセトアミノフェンやイブプロフェンなどのNSAIDsが第一選択として推奨されています。しかし、中等度以上の片頭痛発作では、虚血性心疾患や血管障害の既往がなく禁忌事項がない場合、経口トリプタンの使用が強く推奨されます(推奨度A)。
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トリプタン系薬剤は片頭痛に特異的な治療薬として、セロトニン神経系を調節することで効果を発揮します。重要なポイントは、片頭痛だと確信できたら可能な限り早期に服用することです。発症1時間以内の服用では2時間後の頭痛解消率が52.8%であるのに対し、1時間以上経過してからの服用では30.2%まで低下することが報告されています。
参考)https://pharmacist.m3.com/column/treatise/6095
薬剤使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)の予防も重要な課題です。急性期治療薬の使用は月10日未満に制限する必要があり、これを超える場合は予防療法の導入を検討します。
参考)片頭痛(偏頭痛)を和らげるための対処法はありますか? |片頭…
片頭痛の予防療法薬物治療
予防療法の適応は、月2回以上の頭痛発作がある患者、急性期治療薬を月10日以上使用する患者、生活に著しい支障をきたす患者などです。従来の予防薬には抗てんかん薬(バルプロ酸)、降圧薬、抗うつ薬などがありますが、2021年以降、CGRP関連薬物が大きく治療を変化させています。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/fbca51e03dac0e3fd73e3b701f8516ec65140cdb
現在承認されているCGRP関連薬物には、エムガルティ(ガルカネズマブ)、アジョビ(フレマネズマブ)、アイモビーグ(エレヌマブ)があります。これらの注射薬は月1回(28日毎)投与で、平均的に従来の経口薬より高い予防効果を示し、約7割の患者が効果を実感できます。
エムガルティの場合、初回2本、以降月1回1本の皮下注射で、1ヵ月あたりの片頭痛日数減少、頓服薬使用日数減少、頭痛持続時間短縮などの効果が期待できます。副作用として注射部位反応(疼痛、発赤、かゆみ)が最も多く報告されていますが、多くは数日以内に軽快します。
片頭痛発作時のセルフケア対処法
片頭痛発作時の適切なセルフケアは症状軽減に有効です。最も基本的な対処法は、暗く静かな環境での安静です。光や音、においなどの刺激は片頭痛を悪化させるため、刺激の少ない落ち着いた環境で横になることが推奨されます。
参考)片頭痛の治療・応急処置・予防法|つねだクリニック|伊丹市鴻池…
こめかみ部分の冷却も効果的な対処法の一つです。冷却シートやアイスパックでこめかみを冷やすことで、拡張した血管を収縮させ、ズキズキとした拍動性の痛みを緩和できます。一方、入浴やシャワーは血管拡張を促進するため、発作時は避けるべきです。
睡眠も重要な対処法で、ひと眠りすることで痛みが楽になることがあります。軽度の片頭痛に対しては、コーヒーや緑茶に含まれるカフェインが血管収縮作用により症状を緩和する可能性がありますが、習慣的な摂取は逆効果となるため注意が必要です。
片頭痛のツボ押しと頭痛体操
片頭痛に対するツボ押しは、三叉神経支配領域への刺激により発作抑制効果が期待できます。特に効果的なツボとして、頭頂部の百会(ひゃくえ)、眉毛内端の攅竹(さんちく)、こめかみ部分の頷厭(がんえん)などがあります。
頷厭のツボ押しでは、食べ物を咀嚼すると動く部分を左右の親指で同時に押さえ、息を吐きながら10秒ほどかけてゆっくり圧迫し、その後徐々に指を離します。この動作を数回繰り返すことで痛みの軽減が期待できます。
片頭痛予防のための頭痛体操として、コマ体操が有効です。正面を向いて足を肩幅に開き、頭は動かさずに両肩を大きくコマのように回転させます。頸椎を軸として肩を左右に90度まで回転させ、リズミカルに最大2分間続けることで、首周りの筋肉疲労蓄積による片頭痛を予防できます。ただし、片頭痛発作中は運動により症状が悪化するため、体操は控える必要があります。
参考)一人で悩まずに「治す」「防ぐ」頭痛体操のすすめ!|頭痛オンラ…
片頭痛の閃輝暗点対処と特殊な治療アプローチ
閃輝暗点は片頭痛の前兆症状として現れる視覚障害で、視野内にギザギザ・キラキラした光の波が出現し、20分程度で消失した後に片頭痛が始まります。脳の視覚野血管の収縮による一時的な血流変化が原因とされ、ストレス解放時、チョコレート摂取後、ワイン飲用後などに起こりやすいです。
参考)閃輝暗点を予防することで片頭痛も防げる!予防が期待できる食べ…
閃輝暗点自体に特効薬はありませんが、静かな暗室での安静が基本対処法です。頭痛を伴う場合は片頭痛の前触れであるため、早期の片頭痛治療薬服用が重要です。閃輝暗点の予防には、マグネシウム(大豆製品、海藻、玄米)やビタミンB2の摂取が効果的とされています。
参考)閃輝暗点
頭痛がない閃輝暗点の場合、脳梗塞や脳循環障害の可能性があるため、頻繁に起こる場合はMRI検査による精査が必要です。また、漢方薬による体質改善アプローチとして、冷え性やストレスによる片頭痛には呉茱萸湯(ごしゅゆとう)が効果的な場合があります。