閉塞性動脈硬化症の症状と写真

閉塞性動脈硬化症の症状と画像診断

閉塞性動脈硬化症の重要ポイント
🦵

初期症状

冷感・しびれ感から始まり、間欠性跛行へ進行

📊

診断指標

ABI値0.9未満で閉塞性動脈硬化症を強く疑う

⚕️

重症化リスク

潰瘍・壊死に至ると半年で40%が下肢切断

閉塞性動脈硬化症のフォンテイン分類による症状の進行段階

閉塞性動脈硬化症は、下肢動脈の狭窄や閉塞によって血流障害が生じる疾患なんです。症状の進行度を評価するために、フォンテイン(Fontaine)分類という4段階の重症度スケールが用いられていますよ。

参考)閉塞性動脈硬化症|病気について|循環器病について知る|患者の…


フォンテインI度では、足先の冷感やしびれ感が主な症状として現れます。この段階では自覚症状が乏しく、患者さんは筋肉痛や冷え性と勘違いしてしまうことが多いんです。足の指が青白くなる色調変化も見られることがあります。

参考)閉塞性動脈硬化症の初期症状|港北区綱島の横浜綱島フォレスト内…

フォンテイン分類 主な症状 臨床的特徴
I度 冷感・しびれ感 足先が冷たく感じる、色調不良が見られる
II度 間欠性跛行 一定距離歩行後に下肢痛が出現し、休憩で改善
III度 安静時疼痛 安静時や夜間にも持続的な痛みが発生
IV度 潰瘍・壊死 皮膚潰瘍や組織壊死、感染リスクが高い

フォンテインII度になると、間欠性跛行という特徴的な症状が出現します。一定の距離を歩くとふくらはぎが締めつけられるように痛くなり、休憩すると痛みが消失して再び歩けるようになるんです。病状が進行すると歩行可能距離が短くなり、「以前は駅まで休まず歩けたのに、最近は3回休まないと到達できない」といった訴えが聞かれます。

参考)閉塞性動脈硬化症の症状


フォンテインIII度では安静時疼痛が出現し、歩かなくても痛みが持続するようになります。夜間や寒冷時に症状が増強する傾向があり、足の変色も見られるようになりますよ。

参考)閉塞性動脈硬化症(ASO) – 循環器の疾患


フォンテインIV度は最も重症な段階で、小さな傷や低温やけどをきっかけに皮膚潰瘍や壊死が発生します。この段階では細菌感染を伴うことが多く、足の組織が黒く変色する壊疽が見られるんです。放置すると半年で40%の患者さんが下肢切断に至ると報告されています。

参考)下肢閉塞性動脈硬化症にマッサージは禁忌?|しょうじ内科|桜木


国立循環器病研究センター「閉塞性動脈硬化症|病気について」では、各段階の詳細な症状と検査方法が解説されています。

閉塞性動脈硬化症の診断における画像検査とABI測定

閉塞性動脈硬化症の診断では、まず下肢動脈の拍動触知が行われます。膝窩動脈や足背動脈を触診し、拍動が微弱または触知困難な場合、動脈硬化が疑われるんです。

参考)閉塞性動脈硬化症の診断


ABI(足関節上腕血圧比)測定は、下肢虚血の程度を評価する最も広く利用されている非侵襲的検査方法なんですよ。上腕の収縮期血圧に対する足関節の収縮期血圧の比を算出し、ABI値が0.9未満の場合、閉塞性動脈硬化症を強く疑います。正常な場合は足の血圧が上腕よりも高値となるため、0.9から1.3の範囲が基準値とされています。

参考)ABI(ankle brachial index:足関節上腕…


ただし、ABI検査には限界もあるんです。血管が75%以上狭窄しないと血圧が低下しないため、ABI単独では軽度の血管病変を検出できない可能性があります。また、糖尿病透析患者では動脈の中膜石灰化により血圧が高く測定されてしまう擬似高血圧化が起こることもあるんですよ。

参考)https://www.shizuoka-med.jrc.or.jp/section/department/inspection/03/file/563/labnews25.pdf


ドプラ血流計を用いた検査では、血管上にプローブを当てることで血管内の血流音を感知します。血流音が微弱または感知できない場合、動脈硬化や閉塞の可能性が高く、おおよその閉塞部位や程度を確認できるんです。​
下肢動脈エコー検査では、パルスドプラ法により血流速波形の異常や血流速度の増大を計測し、狭窄や閉塞の有無を検出します。断層法を併用することで、動脈壁のプラークの有無、壁不整、狭窄率などの形態学的異常も評価可能なんですよ。

参考)下肢閉塞性動脈硬化症(ASO)の診断


血管造影検査は確定診断のために実施される精密検査です。カテーテルを狭窄・閉塞部位近くまで挿入し、造影剤を注入することで動脈の狭窄や閉塞の場所と程度を最も詳しく評価できます。近年ではMDCTという立体的な撮影方法も用いられているんです。​
重症虚血肢の評価には、皮膚灌流圧(SPP)や経皮酸素分圧(tcPO2)の測定が創傷治癒の指標として有用です。これらの検査により、皮膚組織レベルでの微小循環や酸素供給状態を評価できますよ。​
健康長寿ネット「閉塞性動脈硬化症の診断」では、各検査方法の詳細が丁寧に解説されています。

閉塞性動脈硬化症における間欠性跛行の臨床的特徴

間欠性跛行は閉塞性動脈硬化症の特徴的な症状で、一定距離を歩くと足やふくらはぎにだるさやしびれ、痛みを感じて歩けなくなり、しばらく休むと再び歩けるようになる状態を指します。

参考)間欠性跛行 (かんけつせいはこう)とは


間欠性跛行の原因には大きく分けて2つあるんです。動脈硬化による血管性のものと、腰部脊柱管狭窄症による神経性のものです。鑑別診断が重要で、血管性の間欠性跛行では片側性でふくらはぎより下に症状が現れることが多く、下肢の冷感を伴うことが特徴なんですよ。​
血管性の間欠性跛行では、歩行を中止して立ったまま休むだけで痛みが軽減します。これに対し、神経性の場合は前屈姿勢をとることで症状が改善する傾向があるんです。また、血管性では足背動脈の拍動を触知できないことが多いのに対し、神経性では拍動を感知できるという違いもあります。​
閉塞性動脈硬化症による間欠性跛行は、糖尿病・脂質異常症・高血圧・喫煙といった動脈硬化の危険因子を持つ患者さんに発症しやすいんです。そのため、他の血管疾患脳梗塞心筋梗塞など)を合併している可能性が高く、全身の動脈硬化を評価する必要があります。​
病状が進行すると歩行可能距離が徐々に短くなり、日常生活に大きな支障をきたすようになります。トレッドミル跛行検査では、一定条件の運動負荷後に下肢血圧が20-30%低下することで診断され、間欠性跛行出現距離や最大歩行距離を計測することで重症度判定や治療方針の決定に役立てられるんですよ。​

閉塞性動脈硬化症に対するカテーテル治療と血行再建術

閉塞性動脈硬化症の治療法は、フォンテイン分類による症状の程度によって異なるアプローチが選択されます。​
フォンテインI度の冷感やしびれ感の段階では、経過観察が基本となります。禁煙の厳守と歩行習慣が重要で、側副血行路の発達を促すことが目的なんです。​
フォンテインII度の間欠性跛行では、禁煙、生活習慣の改善、薬物療法、運動療法が行われます。血糖・血圧・コレステロールの管理も重要なんですよ。運動療法では、痛みがある程度我慢できる間は歩き続け、強い痛みが出る一歩手前で休みながら繰り返し歩くことで、細い血管(側副血行路)の血流が増加して症状が緩和されるんです。それでも症状が改善しない場合や悪化する場合には、血行再建術を検討します。​
カテーテル治療は体の負担が軽く、効果が高いため第一選択となっています。カテーテルという細い筒を動脈内に挿入し、バルーンで狭窄部を拡張したり、ステントという金属の網状の筒を留置して狭くなった動脈の内腔を内側から押し広げるんです。

参考)下肢の閉塞性動脈硬化症に対するカテーテル治療


長崎大学病院では2020年に計40例のカテーテル治療を行い、約半数が下肢潰瘍を有する高度慢性下肢虚血(CLTI)の症例でした。間欠性跛行に対して腸骨動脈にステント治療を行った症例では、ステント留置により下肢の血流が増加し、症状が改善したと報告されています。

参考)閉塞性動脈硬化症に対するカテーテル治療|長崎大学病院 循環器…


下肢潰瘍に対して膝下の血管にバルーン治療を行った症例では、バルーン拡張により足底部の血流が増加し、潰瘍の治癒が得られたんですよ。カテーテル治療は局所麻酔で施行可能で傷口が小さく、入院期間も短くて済みます。ただし、狭窄や閉塞の場所や長さによっては治療ができないこともあるんです。​
フォンテインIII度・IV度の安静時痛や潰瘍・壊死の段階では、血行再建術が必要となります。痛みを取り除き、感染を併発して全身状態の悪化を招くことを防止するためなんです。カテーテル治療が困難な場合は、血栓内膜摘除術や人工血管・静脈を用いたバイパス手術が行われます。​
兵庫県立尼崎総合医療センター「下肢の閉塞性動脈硬化症に対するカテーテル治療」では、病変の領域別の治療方針が詳しく記載されています。

閉塞性動脈硬化症の予防と生活習慣管理における実践的アプローチ

閉塞性動脈硬化症の予防には、動脈硬化の危険因子を管理することが不可欠なんです。

参考)\はじめよう予防生活/足の動脈硬化と予防ケア


禁煙は最も重要な予防策です。たばこに含まれるニコチンは血管を収縮させる作用があり、血液中の中性脂肪を増加させるとともに、高血圧や動脈硬化の原因となります。禁煙できなければ症状が悪化するうえ、血行再建術を行っても症状が再発してしまうんですよ。​
肥満の解消も重要な予防策なんです。一日三食を規則正しく、腹八分目を心がけることが大切です。同じ量を同じ時間に食べるようにし、噛む回数を増やしてゆっくり食べることで、食後の血糖値上昇を緩やかにできます。

参考)動脈硬化の原因と予防(おすすめの食事)|和泉市の田中循環器内…


食事内容では、動物性脂肪を減らし、野菜を増やすことが推奨されます。米やパン、麺などの炭水化物は、できる限り玄米やライ麦パン、蕎麦などの未精製雑穀にすることで、水溶性繊維が豊富に摂取でき、LDLコレステロールを低下させる効果があるんです。​
サバやイワシなどの青魚に含まれるEPA・DHAは、LDLコレステロールや中性脂肪を低下させる効果があります。大豆製品(納豆・豆腐など)も同様の効果を持っているため、こまめに摂取することが推奨されますよ。​
適度な運動習慣も予防に効果的なんです。歩行は特別な用具や場所を必要とせず、安全性にも優れています。既に間欠性跛行がある患者さんでも、痛みがある程度我慢できる間は歩き続けることで、側副血行路の血流が増えて症状が緩和されるんです。​
手足の保護と清潔維持も重要なポイントです。足が冷えると血管が収縮し、血液の流れがさらに悪くなるため、靴下や電気毛布を使って保温に努める必要があります。入浴も血行改善に役立つんですよ。​
爪を切る際は深爪をしないようにし、四季を通じて素足を避け、靴下を着用して足を保護することが大切です。靴も足先のきつくないものを選ぶようにしましょう。足はいつも清潔にして、水虫などの皮膚病にかからないように心がける必要があります。​
特に糖尿病のある方は四肢の感覚障害を伴っていることが多く、小さな傷や低温やけどに気づくのが遅れる場合があるため注意が必要なんです。電気あんかや湯たんぽを使用する場合は、手足に直接あたらないよう間接的な保温にすることが重要ですよ。​
JA愛知厚生連「はじめよう予防生活/足の動脈硬化と予防ケア」では、生活習慣改善の具体的な方法が紹介されています。