平滑筋一覧と特徴
平滑筋の基本的分類と構造特徴
平滑筋は筋組織の一種であり、横紋筋(骨格筋・心筋)と異なり横縞模様がない特徴的な筋肉です 。平滑筋細胞は長さ50~400μm、厚さ2~10μmの小さな細胞で、単核の紡錘形をしており、筋小胞体の発達は悪いという構造的特徴を持ちます 。
参考)https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/undou-kiso/kinniku-kinou.html
平滑筋には横紋がない理由は、アクチンとミオシンのフィラメントが規則正しく配列されておらず、骨格筋や心筋のようなサルコメア構造を持たないためです 。これにより、収縮速度は遅いものの、比較的低エネルギーで長時間張力を保つことができるという機能的特徴を示します 。
参考)https://lts-seminar.jp/2025/04/05/ohtsuka-457/
平滑筋は不随意筋として分類され、自律神経によって制御されており、自分の意志で動かすことはできません 。この自律制御により、体内の恒常性維持に重要な役割を果たしています。
参考)https://www.kango-roo.com/learning/2894/
平滑筋の主要な種類と機能分類
平滑筋は機能的に大きく 内臓平滑筋(単一ユニット平滑筋)と 多ユニット平滑筋(多元平滑筋)の2種類に分類されます 。
参考)https://www.kango-roo.com/learning/2094/
内臓平滑筋は中空臓器(消化管、気管、子宮、卵管、尿管など)の壁に存在し、ギャップ結合によって相互に結合しているため機能的には合胞体として働きます 。この型の平滑筋は自発性に活動電位を発生するペースメーカ細胞を持ち、自発的に収縮する特徴があります 。
参考)https://www.judo-ch.jp/seifukusisrch/useful/glossary/00147/3333701/
多ユニット平滑筋は、大動脈のような大血管、肺の太い気道、輸精管、虹彩および括約筋にみられ、自発性活動電位を発生せず、神経支配に依存して活動します 。骨格筋と異なり、神経支配はより広範囲に広がっているという特徴があります。
平滑筋の分布と臓器別機能一覧
平滑筋は人体の広範な部位に分布しており、各臓器で特有の機能を果たしています 。
参考)https://www.teamlabbody.com/news/archives/873
消化器系では、食道、胃、小腸、大腸の壁に存在し、蠕動運動により食物の移動を担当します 。消化管の平滑筋は縦走筋と輪走筋の二層構造を持ち、これらの協調した収縮により効率的な消化管運動を実現しています 。
参考)https://knowledge.nurse-senka.jp/224570/
循環器系では、動脈と静脈の壁に血管平滑筋が分布し、血管径の調整により血圧制御と血流調整を行います 。血管平滑筋は血管の断面の円周方向に配列し、収縮により血管径を細くして抵抗を高めます 。
参考)https://www.mnc.toho-u.ac.jp/v-lab/shinkin/circulatory/circl-2-1.html
呼吸器系では、気管支の壁に気道平滑筋が存在し、気道の径を調整して呼吸を補助します 。泌尿生殖器系では、膀胱、尿管、子宮に分布し、これらの臓器の運動制御に関与しています 。
参考)https://jsth.medical-words.jp/words/word-93/
平滑筋の収縮メカニズムと調節機構
平滑筋の収縮は、カルシウム・カルモジュリン依存性機構により制御されます 。具体的には、①Ca²⁺誘発性Ca²⁺遊離(VDCC-SR)、②IP₃誘発性Ca²⁺遊離(GPCR-PLC-IP₃-IP₃受容体-SR)の両者の経路により筋小胞体からカルシウムが放出されます 。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/66/6/66_798/_pdf
このカルシウムがカルモジュリンと結合することで、カルシウム・カルモジュリン依存性タンパク質キナーゼであるMLCK(ミオシン軽鎖キナーゼ)が活性化され、MLC(ミオシン軽鎖)をリン酸化して平滑筋収縮を引き起こします 。
平滑筋の張力は、このMLCのリン酸化とMLCP(ミオシン軽鎖フォスファターゼ)による脱リン酸化のバランスで決定されるという精密な調節機構を持っています 。さらに、RhoA-Rho kinase経路による調節も重要な役割を果たしています 。
平滑筋関連疾患と臨床的意義
平滑筋は多様な疾患に関与しており、その機能異常は重大な健康問題を引き起こします 。
参考)https://medicalnote.jp/diseases/%E5%B9%B3%E6%BB%91%E7%AD%8B%E8%82%89%E8%85%AB
平滑筋腫瘍として、良性の平滑筋腫(レイオミオーマ)と悪性の平滑筋肉腫(レイオミオサルコーマ)があり、これらは体の様々な部位で発生する可能性があります 。子宮筋腫は最も一般的な平滑筋腫で、月経異常や不妊の原因となることがあります 。
参考)https://gan-medical-chiryou.com/cancer-knowledge/smooth-muscle-tumor/
血管平滑筋の異常は動脈硬化や高血圧の病態に深く関わっており、血管の恒常性維持機能の破綻が循環器疾患の発症につながります 。気道平滑筋の異常は気管支喘息の主要な病態機序であり、気道の過度な収縮により呼吸困難を引き起こします 。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsth/30/3/30_2019_JJTH_30_3_505-511/_article/-char/ja/
消化管平滑筋の機能不全は便秘や腸閉塞などの消化器症状の原因となり、特に糖尿病などの代謝性疾患では平滑筋機能の低下が問題となることがあります 。
参考)https://mdcst.jp/management/
このように平滑筋の理解は、多様な疾患の病態解明と治療戦略の構築において極めて重要な意義を持っています。