瘢痕性眼瞼内反症と症状と診断と手術

瘢痕性眼瞼内反症と診断と手術

瘢痕性眼瞼内反症:臨床での要点
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まず「角膜接触」を確認

まつげ・皮膚が角膜/結膜に当たるか、フルオレセイン染色で上皮障害を拾い、放置リスク(角膜炎・潰瘍)を見落とさない。

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原因は「後葉の瘢痕拘縮」

加齢性と違い、結膜側の瘢痕化・拘縮が主因になりやすく、術式選択が変わる。

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軽症は対症、進行は手術

保存療法で角膜保護をしつつ、再燃を繰り返す場合は粘膜移植や皮膚移植など「組織補填」を含む治療を検討する。

瘢痕性眼瞼内反症の原因と瘢痕とトラコーマ

瘢痕性眼瞼内反症は、炎症や外傷などの後に生じる「瘢痕(きずあと)」が、眼瞼を眼球側へ牽引して内反を起こすタイプとして整理されます。例えばトラコーマでは、結膜の慢性炎症が続いたのち瘢痕化(結膜瘢痕)に移行し、その収縮が眼瞼内反や睫毛の角膜接触を招く流れが説明されています。

原因の幅は広く、外傷・熱傷・化学外傷・術後瘢痕・慢性炎症性疾患などが背景になり得ます。瘢痕性では「眼瞼結膜側(後葉)の拘縮」が主たる病態として扱われ、退行性(加齢性)内反と鑑別しないと、同じ術式で再発しやすい点が重要です。

臨床的には「逆さまつげ」として受診しても、実態は(1)眼瞼内反(まぶた自体が内反)、(2)睫毛乱生(まつげの生え方異常)、(3)睫毛内反(皮膚のかぶさりでまつげが押される)などが混在します。瘢痕性眼瞼内反症では、炎症後の組織変形が絡むため、単純な抜毛や短期的な対症で済ませると角膜障害が積み上がることがあります。

参考)まぶたの病気について|足立区五反野 足立慶友眼科

トラコーマ由来のケースを想定する場面(海外渡航歴、居住歴、支援医療の経験がある患者、あるいは高齢で過去の感染が疑われる等)では、睫毛乱生を含む進行例に対し「眼瞼手術」が推奨されることが明記されています。トラコーマは感染症としての側面(抗菌薬)と、瘢痕化後の構造異常(手術)の二段階で考えると整理しやすいです。

参考)トラコーマ – 17. 眼疾患 – MSDマニュアル プロフ…

参考:トラコーマの病期(瘢痕化→眼瞼内反)と治療(抗菌薬/手術)の考え方

MSDマニュアル プロフェッショナル版:トラコーマ

参考:トラコーマでの結膜瘢痕→眼瞼内反の説明(臨床所見の言語化に使える)

高田眼科:トラコーマ

瘢痕性眼瞼内反症の症状と角膜と結膜炎

眼瞼内反症全体としては、まつげや皮膚が角膜・結膜に接触し、異物感、痛み、流涙、充血、目やに、羞明などを生じ得ます。症状が持続すると角膜上皮障害から角膜炎、さらに重症例では角膜潰瘍のような合併症に至り得る点が解説されています。

医療従事者向けに押さえたいのは、患者が訴える「ゴロゴロ」「チクチク」はドライアイだけでなく、接触性角膜障害のサインになり得ることです。慢性的刺激による充血や反復する結膜炎が前景に出ると、抗菌薬/抗アレルギー薬の処方が続いても根本原因が残り、病悩期間が延びます。

所見の取り方としては、瞬目時・下方視・上方視など眼位で接触部位が変わるため、診察室の正面視だけで「当たっていない」と早合点しない工夫が必要です。フルオレセイン染色は微細な上皮欠損を拾いやすい検査として一般外来でも導入されており、角膜障害の客観化に役立ちます。

参考)逆さまつ毛|眼の病気について|やまざき眼科クリニック|浜松市…

また、瘢痕性では「睫毛乱生」や「瞼球癒着(symblepharon)」など、眼表面の瘢痕性変化が併存することがあります。特にスティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)/TENの慢性期では、睫毛乱生や瞼球癒着などの瘢痕性変化が症状に加わることが記載されており、単純な内反として扱うと対応が破綻しやすい領域です。

参考)特徴的な眼所見│【医療従事者専用】SJS/TEN情報サイト …

瘢痕性眼瞼内反症の診断と鑑別と評価

診断の基本は「まぶた・まつげが内向きで角膜に当たっているか」を確認することですが、瘢痕性を疑う場合は「なぜ内反しているか」を構造として捉える必要があります。眼瞼内反症は原因が多彩で、瘢痕性では結膜側の拘縮が主因となるため、原因診断が手術方針に直結する点が専門誌でも強調されています。

鑑別として頻度が高いのは、(1)退行性(加齢性)眼瞼内反、(2)痙攣性(眼輪筋の収縮が関与)、(3)瘢痕性(炎症・外傷後)で、瘢痕性にはトラコーマや外傷・熱傷などが挙げられています。

外来での評価項目は、最低限でも次の3点を「所見としてカルテに残せる形」で押さえると、紹介や術前相談がスムーズです。

  • 角膜接触の有無(どの睫毛列が、どの眼位で接触するか)。​
  • 角膜上皮障害の有無(フルオレセインでの染色パターン)。​
  • 瘢痕の位置(結膜側の瘢痕、瞼縁の変形、瞼球癒着の有無など)。​

あまり知られていない実務的な落とし穴として、「患者が自己抜毛を繰り返して受診時に睫毛が短く、接触が目立たない」ケースがあります。こうした場合でも上皮障害や瞼縁形態、瘢痕の存在が手がかりになるため、症状と所見が合わないときほど染色や詳細観察が効きます。

瘢痕性眼瞼内反症の治療と手術と粘膜移植

治療は大きく、(1)角膜保護の対症療法、(2)原因構造の是正(手術)に分けて考えると整理できます。眼瞼内反症一般では手術により「まつげが当たらない状態」を作り、角膜障害の進行を防ぐことが目的として説明されています。

ただし瘢痕性眼瞼内反症では、単純な皮膚側の矯正だけでは足りず、症例により結膜移植・粘膜移植・皮膚移植など「不足組織の補填」を組み合わせる可能性が示されています。

臨床での説明に使えるポイントは、瘢痕性の手術が「曲がったまぶたを戻す」だけでなく、「瘢痕で短くなった(縮んだ)組織を延長する」発想を含むことです。眼形成領域では、切開法や延長、皮弁形成、粘膜移植などを症例に応じて組み合わせること、場合によっては複数回手術が必要になり得ることが述べられています。

参考)睫毛内反/眼瞼内反|文京区の東京眼科形成外科クリニック

患者説明では、期待できる改善(異物感・流涙の軽減、角膜障害の進行予防)と、再発や追加治療の可能性を同時に提示するのが現実的です。実際に、瘢痕性の場合に結膜移植や皮膚移植を併用することがある、という形で一般向けにも説明されており、医療者側も「移植が必要になる病態」を先に想定しておくとミスマッチが減ります。

参考:眼瞼の再建(後葉再建も含む)の考え方がまとまった公的PDF(手術コンセプトの言語化に便利)

厚労科研関連PDF:眼瞼の再建

瘢痕性眼瞼内反症の独自視点:紹介判断と慢性炎症とSJS

検索上位の一般解説では「逆さまつげ=手術」の単線で語られがちですが、瘢痕性眼瞼内反症は背景疾患のマネジメント次で経過が大きく変わります。SJS/TENの慢性期では、睫毛乱生や瞼球癒着、ドライアイなどが複合して長期管理が必要になることが記載されており、「まつげだけ直す」発想では症状が取り切れないことがあります。

このため紹介判断は、単に内反の程度だけでなく「眼表面の慢性炎症が続いているか」「瘢痕性変化が進行していそうか」をセットで評価するのが安全です。特に、角膜上皮障害を繰り返す、角膜潰瘍のリスク所見がある、瞼球癒着が疑われる、化学外傷や重症薬疹の既往がある、といった場合は、眼形成/角結膜専門の連携が望ましい領域になります。

現場で役立つ“意外な”観点として、トラコーマは日本国内では稀でも、国際保健・渡航歴・移住歴が絡むと遭遇し得ます。公的ファクトシートでは、トラコーマは感染を繰り返して年単位で結膜瘢痕が進み、睫毛乱生を経て角膜混濁へ至る流れ、そしてSAFE戦略(手術・抗菌薬・衛生・環境改善)の枠組みが示されており、問診項目の設計(生活背景を含めた確認)に転用できます。

参考)FORTH|最新ニュース|2017年|トラコーマについて (…

最後に、患者のQOLに直結する説明のコツとして、症状を「異物感」だけで終わらせず、「角膜に常に擦過が入ると、結膜炎の反復や角膜障害の蓄積につながる」ことを短い言葉で共有すると受療行動が改善しやすいです。眼瞼内反症が角膜に接触して症状を起こすという基本の病態説明は、一般向け疾患解説にも明確に書かれており、医療者側の説明文作成にも流用できます。

参考)下眼瞼内反症